なんて厄介な組織だ






 
5.ソレスタル・ビーイング


それはアレルヤの切羽詰まった声で始まった。
「た、大変だ、皆!ロックオンがスメラギさんに飲み相手として連行されたっ!」
格納庫で自身のガンダムを眺めていた刹那とティエリアは、走り込んでくるアレルヤの方に顔を向けた。
「なんだとっ!?ティエリア、お前、スメラギの酒の相手の危険性をあいつに伝えていなかったのか?」
珍しく刹那が顔を真っ青にして訊く。
「しまった・・・・最近、アル中の症状が出ていなかったから、油断した。というか君は同室でありな
 がら、彼に何も言っていなかったというのか?」
ティエリアが難しい顔をして反論する。
「お前と同じだ。しまったな・・・・」
「というか、早く彼を助けにいかないとっ!」
アレルヤが言う。
「そうだな、そちらの方が重要だ。待っていろ、ライル!今行くからな!」
そう言うと刹那は他の2人を置いて、さっさと走り去った。それはそれは宇宙空間とは思えないほどの
すんばらしいスピードだった。
「僕達も行こう、ティエリア」
「了解」
その後をアレルヤ・ティエリア組が追う。こちらもなかなかのスピードで走り去っていく。
「大丈夫か、ロックオンは・・・・」
イアン苦汁にまみれた顔で呟く。その隣では、なにがなんだかわからない、という顔をしたミレイナと
沙慈が突っ立っていた。


案の定、スメラギの部屋のドアにはロックがかかっていた。
「ど、どうしよう?ハロはみーんな格納庫で仕事中だし・・・」
アレルヤがおろおろとする。ティエリアがどんどんとドアを叩き出てくるように促したが、防音効果バ
ッチリの宇宙船の中だ。きっと中には届いていない。
「そこをどけ、ティエリア」
それまで静かにティエリアを見守っていた刹那が、やおらドアの前に立つ。
「どうするんだい、刹那?」
「決まっている、ドアを開ける!」
なにやらパネルに向かって操作すると、拍子抜けなほどあっさりとドアが開く。
「凄いな、刹那」
状況を忘れて感心するティエリアに、刹那はあっさりと爆弾発言を寄こした。
「愛の力だ」
「愛ぃぃぃぃぃ!?」
これ以上なく刹那に似合わない言葉に、ティエリアとアレルヤは目を白黒させた。が、次の瞬間
「そうか・・・・刹那も大人になったんだね」
と感涙するアレルヤと、彼を置いてさっさと刹那の後を追うティエリアだった。ここで優先されるべき
ものは、ライルの危機なのだから。


案の定、部屋の中から「きゃあああああ!」という絹を裂くような『ライル』の悲鳴が聞こえた。


「お、お前ら、誤解するな!別に俺は彼女に手をだそうだなんて・・・っ!!」
ライルは必死に弁解するが、涙目でベットに仰向けに横たわっており上半身はもはやアンダー1枚、そ
の腹にはどう見ても酔っ払っているスメラギがライルに背を向け馬乗りになって、ベルトに手をかけて
いる時点で、ライルがスメラギを襲っているなど、誰が考える。
「そ〜よ〜、わ・た・し・が襲っているんだから」
あはははは〜と軽いノリでスメラギは笑った。
「も〜う、可愛いんだから、弟くんはvvv」
そう言ってくるぅりと身体を反転させて体をライルに倒したから、さあ大変。
「きゃーーーーっ!!胸、胸が当たってるぞ、良いのかミス・スメラギ!!男の本能としては嬉しいか
 もしれんが、人間としては危機を感じるっ!」
ライルが焦るのもわけがある。もちろん、スメラギからもたらされるおっぱいの感触はOKなのだが、
それを刹那が見ているのである。刹那はライルの夫だと公言して憚らない。そんな男の前でこんな姿を
さらしてしまえば、どうなるか分かったものではない。実際、ライルを見つめる刹那の瞳には、胡乱な
光が射しこめていた。ここで助かっても、後で助からない。スメラギの悪の手から逃げられても、刹那
の魔王の手はからは逃れられん。助けて、シューベルト!

ちゅv

悪乗りしたスメラギはさらに、ライルの唇にかる〜く、あくまでかる〜くちゅうをしてしまう。アレル
ヤとティエリアが、げっと声を上げる。
「助けろ、早くっ!」
無駄に偉そうなライル。
「あ〜んもう、つれないんだからぁ。こ〜んな良い女無視するなんて、ライルってやっぱりホモ?」
「ぐぅっ!」
本人にその気がなくても、刹那がやる気満々(なにとは訊かないように)なので、ホモかどうかは微妙
なところではある。関係を持っているのに、しかも相手が目の前にいるのに『違います、ボクはノーマ
ルです』などと、恐ろしくって言えるわけもない。夫こと刹那が動かないので、残りの2人も動いて良
いのかどうか、悩むところだった。

ふぅ

刹那がひとつ、溜息をついた。
「せ・・・刹那!早くこのピンチを救ってくれ!」
段々事態が自分に不利に動いている事を悟ったのであろうライルが、必死に訴える。
「分かった、アレルヤ、悪いが彼女をライルから退かせてくれ」
「あ、分かったよ刹那。・・・・ほらスメラギさん、離れて」
「ん〜、嫌よぉ」
「我儘言わないで下さい。ほら!」
アレルヤはあくまでライルの上にうつ伏せに寝そべっている(笑)スメラギを軽く起こして、ベットか
ら下ろす。
「相変わらずだな、貴女は・・・・」
少し呆れたようにティエリアが言うのに、スメラギは口を尖らせた。
「ど〜せ、ティエリアみたいには変わらないわよ〜だ」
完全に駄々っ子モードである。だがスメラギはいつもトレミー全体の運命を握っているのである、この
くらいのお痛は容認しても問題はないだろう。

問題は彼の方だが・・・・・・

ティエリアがライルの方を向くと、ちょうど刹那がライルを起こしてやった処だった。
「大丈夫か、ライル」
「ああ・・・・・・。く、食われるかと思った・・・・」
思ったよりダメージが大きかったらしいライルは、真っ青な顔をして肩で息をしていた。
「すまない、彼女の酒癖の悪さを伝えるのを忘れていた。俺のミスだ」
「え、じゃあお仕置きは今回なし?」
意外そうに言うライルを、刹那はギロリと睨む。
「して欲しいのか?」
「いえ、まったく」
「なら余計な事を言うな。とにかくお前が無事で良かった」
「刹那・・・・」
あまりにもラブゥな感じに、ティエリアは馬鹿らしくなってスメラギの方を見ると、今度はアレルヤが
絡まれていた。


「あれえ、今日ロックオンは?」
アレルヤの疑問に、刹那はしれっと答えた。
「今日は休みだ」
ライルが休み・・・それはその前夜によろしくやっていた事に他ならない。
「お仕置きはしないんじゃなかったのか」
ティエリアが目を丸くして訊けば、こちらの質問にも刹那はすまして答えた。
「お仕置きじゃない。可愛がって慰めてやっただけだ」
(そうか、どっちみちこういう運命か)
きっと今頃は体が痛くて起き上がれないであろうライルに、ちょっと同情するティエリアだった。



★うちのスメラギさんはライルをからかうのが大好きです。ライルをからかうともれなく刹那の珍しい  表情とかも見れる時もあるので。ライルと年が近いし、多分ライルも酒は強いと思うので気軽に一緒  に飲める間柄。営業だったらやっぱし、お酒も強くないと大変な時もあるだろうしねぇ。 戻る