酔っ払い達






 
メリー・クリスマス!


「かんぱ〜い!」
そんな音頭の後、掲げられたのは宇宙で飲み物を入れる為のボトルだった。宇宙空間にいるとグラスで
飲み物を飲む、という行為さえ贅沢なものに変わる。とはいえ、トレミークルー達にとってはどうでも
良い事だったりして。皆浮かれているから。
切っ掛けはミレイナだった。
「皆とクリスマスパーティーがしたいですぅ」
と言いだしたのだ。イノベイト達との決戦が終わった事で時期も重なり、なんらかのパーティをしたか
ったらしい。その言葉に真っ先に飛びついたのがスメラギだった。一息という事もあり自重していた酒
を飲むには良い理由だったからだ。それからクリーム付のケーキは危険という事で、ミレイナの母であ
るリンダがドライフルーツがふんだんに入った特製のパウンドケーキを焼いてくれた。あとはなけなし
の食料を料理に変えて、ささやかなパーティは始まったのであった。


刹那は1人壁にもたれかかってメンバー達を見ていた。あの5年前の激戦と同じくらいの激戦をよくも
トレミークルーの犠牲なしで終われたと思う。しみじみしているとフェルトがやってきた。
「刹那、楽しんでる?」
「ああ。1人か?ミレイナはどうした」
「ミレイナはあそこ」
フェルトの目線の先にいるのは、仲睦まじいヴァスティ一家。楽しく談笑する彼らはフェルトにも刹那
にも、自分の手が届かない故に眩しく見える。
「邪魔しちゃ悪いから・・・・」
フェルトは寂しそうに呟いた。そして話題を変えて、刹那はフェルトと久々に長く話をする。お互いに
忙しくて、ゆっくり話す暇もなかったからだ。決戦前にフェルトから貰ったあの黄色い花は無くしてし
まった。その事をフェルトに謝った刹那だが、フェルトは「良いの、刹那が無事・・・一応無事だった
から」と快く許してくれた。彼女も最初は自分と同じ、表情の貧しい少女だった。が、それを変えたの
はフェルトを妹のように可愛がり、そして守って散ってしまったクリスティナだろう。今のフェルトに
は彼女の面影がある。髪型だけではない、内面が変わった。そしてフェルトを変えたもう1人は・・・
スメラギにとっ捕まっていた。瀕死の重傷から奇跡の復活を遂げた初代ロックオン・ストラトスことニ
ール・ディランディは、砲撃手としてラッセが0ガンダムで出撃した後、トレミーを守った。とっ捕ま
っているニールを見ながら5年前とこれは変わらないな、と刹那は思う。あの頃はニール以外のマイス
ターは未成年でスメラギに捕まる事はなかったが、ニールは成年で酒に強いばかりに良くスメラギの酒
の相手をさせられていた。が、いかに強くてもアル中には敵わない。結局ニールがつぶされていたもの
だ。これは自分達からのみ世界をぶん殴っていた頃なので、今よりももっと緊張感が無く、それぞれが
好きに動いていたからだ。


フェルトと話しこんでいてどのくらい経ったのか、いきなりライルが酒瓶をを持って刹那の首に手をま
わしてきた。
「よ〜う、せつなぁ。飲んでるか?」
その質問に黙って自分の飲んでいたボトルを差し出す。同時にフェルトには離れるように指示。ライル
がフェルトを害するとは思えないが、彼は完全に酔っ払いになっている。不安要素は取り除くべきだ。
ライルは刹那の飲んでいたボトルのストローを口にくわえ、ずずーっと啜る。そしてあははと笑いだし
た。
「おいおいこんな時までミルクかよ?どっかの豆の錬金術師とは正反対だなー」
「どこの誰だ、それは。俺は酒を飲まないのだから、好きなものを飲んでいてもいいだろう」
さっと刹那はミルクの入ったストローを口にくわえる。表情は変わらないが、ライルとの間接ちっすに
刹那の機嫌は良かった。しかしその機嫌の良さも吹っ飛ぶ事になる。
「酒の良さを理解しないなんて、人生損するぞ。よーし、俺が教えてやる!」
そう言って刹那に酒瓶押し付けてくるので、さあ大変。ライルはニールと同じように酒に強い。それが
スメラギの相手もしていないのに、これだけ酔っ払っているのは珍しい。刹那が攻防戦を繰り広げなが
らスメラギの方を見ると、そこにニールはおらずラッセが捕まっていた。
(?ニールはどうした?)
更に会場となったブリーフィングルームを見回すと、フェルトと話し込む前にライルがいた場所にニー
ルが行き倒れていた。どうも潰れたらしい。ティエリアとフェルトがそんなニールに水の入ったボトル
を差し出している。ニールは限界を感じてから実際に潰れるまでの短い間、非常にテンションが高くな
り性質の悪い酔っ払いになる。あそこに倒れているという事は、酒瓶持ってティエリアと話をしていた
ライルを強襲したのは想像に容易い。そして今の自分の立場がライル、そしてライルの立場がニールだ
ったわけだ。如何に酒に強くてもいきなりらっぱ飲みさせられれば、酔うか死ぬかのどっちかだろうと
刹那は思った。と、その時にどうもガードが甘くなったらしい。
「そ〜れ!」
その掛け声と共に、刹那の口に酒瓶が突っ込まれた。不幸にも刹那は噎せる事もせず、酒は喉を通り胃
に流れていく。喉が胃が熱くなっていく。頭もすぐにぐらぐらしてきた。

ココハドコダ
オレハダレダ

ココハドコダ
此処はトレミーの中
オレハダレダ
俺は・・・・・俺は・・・・・・
「俺はガンダムだ!」
そう叫んだのを最後に、刹那の記憶はぷっつんと途切れた。


「俺はガンダムだ!」
そう叫んだ酔っ払いを、横にいた酔っ払いが呑気に手を叩いて笑っている。
「おお〜俺、この発言初めて聞いたよ!本当に言ってたんだなぁ〜」
「そうだ、ガンダムに不可能はない」
いや、あると思うよ。
「だからライル!俺のガンダムを産んでくれ!」
支離滅裂な刹那の発言に吹いたのは、常識人のイアン・ヴァスティだった。娘から
「パパ、汚いですぅ」
と非難されてしまったが。普段だったら「あほ言うな」と逃げるライルではあったが、残念な事に彼は
前後不覚までに酔っ払っていた。
「良いぞ〜。でもどうやって産むんだ?」
産めるかっというイアンの心の叫びを聞いた者はいない。
「簡単だ。俺と契ればいい。というわけで、早速契るぞ」
ライルの手を握り締め、刹那は情熱的に言った。生身で契ってガンダムが産まれるならば、技術屋がど
れほどまでに楽が出来ると思っているんだ。新しい機体を生み出すのには労力が半端なくいる。それと
同時に予算も。今、CBは支援者の監視員は全滅し後ろ盾の王家の援助も当主の行方不明と合わせて、
ぴーぴー状態。許されれば「ガンダム饅頭」でも売って資金の足しにしたいぐらいだ。
「オーライ。俺、刹那と契ってガンダム産むぞ〜」
そんなイアンの心の葛藤をなぎ倒し、ライルの致命的な言葉が響く。
「・・・・・リンダ、わし達はこの場を御暇するぞ」
「わかったわ」
「え〜、セイエイさんとストラトスさんが何するのか見てみたいですぅ」
「駄目だ!まだ早い!リンダ、頼んだぞ」
「は〜い」
ぶーたれたミレイナを引き連れて、リンダはにこやかに退場。その間にイアンはスメラギに捕まって、
潰れる寸前のラッセを救出した。後はニール、フェルトだ。ティエリアは元々立体映像で来ているので
やばくなったら自分の判断でヴェーダの中に帰るだけだ。が、ニールのような大男をフェルトに運べと
いうのも残酷な話だ。こういう場合、素面の人間が貧乏くじを引くのである。
「フェルト、やばそうだからお前も自室に帰ってくれ。ケーキはまた後で皆で食べよう」
「え・・・・ええ」
しかしフェルトは仰向けにしたニールにボトルから水を飲ませていたのだが、その視線は刹ライに釘付
けになっていた。いかん、これは大人としてフェルトが変な方向へ流れないようにしなければ。ともう
1人の娘の様に思っているイアンはフェルトを少し強引に追いだした。その頃既にライルは床に押し倒
されて、刹那に乗っかられて上機嫌で笑っている。
「あははは、刹那舐めるなって。くすぐったい」
という世も末な言葉が聞こえたその時、奇跡が起こった。
「ライルっ!」
今まで死人のような顔をして水を啜っていたニールに、いきなり生の炎が宿ったのである。そして唖然
とするイアンをよそに、ず〜りず〜りと匍匐前進で刹ライの方へ近寄って行く。
「刹那、俺も混ぜろ」
最早心の突っ込みも間に合わない。
「あ〜兄さんだぁ。あははは」
酔っ払いは貞操の危機だというのに、はしゃいでいた。上機嫌な弟の表情に兄の顔がだらしなくにやけ
る。フェルトを追い出して正解だった。ちなみにティエリアはさっさと逃げ出し、アレルヤは地上でま
だ山登りをしている。
「ライルぅ、兄ちゃんも混ぜて」
「良いよ〜、でも刹那は〜?」
「・・・・・・・・・良いだろう。だが最初は俺が貰う。どうだ」
「分かった、その条件を飲もう」
というわけで、商談(え?)が成立した為、ニールも混ざって凄まじい世界が展開されようとしていた。
これ以上は自分の大切ななにかを守る為に見ない方が良い、そう判断したイアンは最後にスメラギに声
をかけた。
「一緒に撤退するか?」
「いいえ、面白いから見てるわ〜。ね、ハロ」
「ミテル、ミテル」
結局は誰もスメラギには敵わない、という事だ。


大変な残念賞

・大賞
   ライル・ディランディさん(起きたら頭どころか身体全体、あまつさえ考えたくない場所まで痛
                んで沈没。後で真実を知って更に深い場所に沈没)
・第2位
   ラッセ・アイオンさん(目が覚めたら12/26だった)

・第3位
   ニール・ディランディさん
   刹那・F・セイエイさん
              (頭が酷く痛んでいたが、なにかスッキリとしていた)

・無傷 
   スメラギ・李・ノリエガさん(野郎3人組の絡みを大体最後まで見ていながら)


メリー・クルシミマス!

だいめいが かわった!


★はい、壮絶な伴天連日の出来事でした。スメラギさん最強!がテーマです(嘘つけ)おまけがありま  すので良かったらどーぞv 「は〜い、スメラギお姉さんの相談室よぉvえ、何歳かですって?やーね、女性に年齢訊くのは失礼よ  (ギロリ)じゃあ最初のおたより。SFSさんからね。  『つい先日好きな人と契ったのだが、酔っ払っていてまったく覚えていない。なんとかその状況を見   たいのだが、どうしたらいいんだろうか』  ですってvま〜、お盛んねvこれと同じ内容のおたよりがN・Dさんからも来てるわvじゃ、答える  わね。   『ハロはなんでも知っている』よ」 「さて次のおたよりはL・Dさんから  『つい先日、そら恐ろしい未踏の世界に足を踏み入れてしまったらしい。どうしたらいいんだろう』  あらら、大変ねvじゃ、さくさくっと答えましょう!  『気にするな』よ」 「さてさて最後のおたよりはL・Aさんからね。  『目が覚めたら12/26だった。俺の12/25はドコ行った』  うふふじゃあ、お答えしましょう!    『諦めろ』よ」 「じゃあこの辺で。せっかく良い教材があるから、トレミー女の子組で刹ライとニルライ本制作中でね  ちょっと忙しいのvじゃあねぇぇぇv」 「ちょっと待てーーーーっ!」 戻る