お祝いしよう




誕生日ぱーてー


「ハッピーバースディ、ライル!」
トレミー内のブリーティングルームは既にパーティ会場と化していた。皆の前に立たされているライル
はギロリ、と皆の中にしれっと混じっている1人を睨みつけた。
「どしたライルー?可愛いお顔が台無しですよ」
三十路過ぎの成人男性にこんなすっとぼけた事を言うのは、2人しかいない。ただし1人は外宇宙を旅
している途中と思われる。今頃はきっとウルトラの星にでもたどり着いているのだろう、とライルは何
故か常々そう思っているようだったが。
「うっせ、自分も誕生日だってのに何したり顔で祝う側に回ってやがりますか、兄さん」
そう抗議すればケタケタと笑う。
「だって俺がライルを祝いたいんだも〜ん。良いじゃんか」
ケロッとした顔で言う兄の横には、困惑顔のフェルトとミレイナが立っている。きっとフェルトはニー
ルを祝いたいだろうに、ご本人様が祝う側に来ているという体たらく。彼女の立場がないではないか、
とライルは切実に思った。実はライルはフェルトを応援していたりするのだ。自分が無体した償いとい
のもあるが、やっぱりフェルトの想いが余りにも真剣且つ慎重なので見ててハラハラするのである。特
に想われている兄は全くそんな可能性を考えてもいないらしく、フェルトに良い彼氏を見つけなよ?と
か言い放って、ライルからライダーキックをお見舞いされていた。ま、ライル自身もニールを祝いたい
という気持ちがずんどこあるわけだが。
「良いだろう・・・・そこのポジションから動く気がないのならば・・・・」
「ならば?」
「金輪際、俺に関するお祝いはさせないからな!」
子供か、お前は。
「な、なんだってー!!」
こうかは ばつぐんだ!!
「そ、そんな・・・・。兄ちゃんお前祝うの大好きなのに」
確かに大好きだ。祝われなかったのは、刹那とホモップルになった時ぐらいである。その時は顔面蒼白
になった挙句、卒倒するというなんともどでかい反応を示し、刹那とライルの喧嘩の元になったものだ。
ニールはきょろきょろと援護してくれる味方を探していたようだが、面倒くさい双子のアホらしい騒動
に巻き込まれるのはごめんと思ったのだろう。誰も味方はいなかった。
「ニール」
がっしと肩を掴まれてニールが振り向けば、ずんばらしい笑顔のスメラギと遭遇した。
「私と飲むウォッカはお好き?」
「張り切って祝われる側に回ります!」
ニールはオリンピックでも優勝ができるのではないかと思うくらいの素晴らしいスピードでライルの隣
に移動した。スメラギと飲むウォッカ・・・即ち死・・・など恐れ多くて絶対に遭遇したくない出来事
であった。スピリチアよりはマシかもしれないが、ロシア国民の多くを凍死させてきたのは伊達じゃな
いぞウォッカ(百姓貴族にもあったが、ロシアでは自殺者よりもウォッカ飲んで泥酔し外で寝こけて凍
死というのは多いそうだ)
「じゃあ、始めますか」
スメラギの言葉により、乾杯からパーティは始まったのだった。


「・・・・・・・」
「?どうした刹那」
周りをELSに囲まれたまま刹那がため息を漏らすのを聞いたティエリアが尋ねると、なんとも言えな
い顔をして再びため息をついた。
「今日は地球では3月3日だ」
「桃の節句か」
「いやライルとニールの誕生日だ」
「・・・・そうなのか?」
なんせココはELS世界だ、地球とは違う暦に時間である。それなのに彼らの誕生日に気が付くとは、
イノベイターというのは凄いものなんだなとティエリアは感心する。実際はライルに対する執着心であ
るのだが、知らぬは仏とはよく言ったもんだ。
「ああ・・・・ライルと会って(ピーーーー)(プーーーーーー)して(ズッギュゥゥゥゥン)したい
 ものだな」
生殖方法が違うELS達はきょとんとしたようだが
「地球の恥を晒すなぁぁぁぁ!!」
ティエリアの絶叫が辺りに響き渡ったのであった。


★はい、久々に更新したしろものですが、いかがでしたでしょうか?刹那とライルが遭遇すらしない、  なんとも色気のない話になりました。え?いつも色気は無いって?・・・・はっはっは(ギロリ) 戻る