さあどうする




貴様という奴


それはいきなりの事だったらしい。


ある日突然、刹那がミレイナと00を整備中に倒れた事が全ての始まりだった。なんせミレイナの前で
景気良く直立不動状態で前にデーンと倒れたので、ミレイナの動揺っぷりが凄かった。まだこれが普通
の倒れ方(というのも良く分からんが)をしていれば、ここまでミレイナが魂ぶっ飛ばす事にもならな
かっただろう。ミレイナからの連絡でわらわらとトレミーメンバーが医務室にやって来てみれば、当の
本人はのほほんとカプセル内で熟睡しているようにも見えた。
「どうしよう、セイエイさんに何かあったら・・・・」
と涙ぐむミレイナにフェルトが
「大丈夫だよ、刹那は60階建てのビルから落ちても死なないから」
と慰めていた。が、1つ言っておく。

それはヒイロ・ユイだ。

幼馴染と言っても良いはずの刹那に、人間外の扱いをするステキなフェルトさんだった。いくら刹那で
も60階建てのビルから落ちたら死ぬか生きるかのどちらかだろう(当たり前だ)
ぴぴ
突然電子音が響き、驚いたクルーが見たものは顔を歪ませながら起き上がる刹那の姿だった。
「セイエイさん!大丈夫ですか!?」
横にいた父親をふっ飛ばしミレイナは刹那に近づいてそう問いかけるが、刹那は答えない。それどころ
か怪しげに胡乱な目つきでミレイナを見る。
「セイエイさん?」
「誰だ、お前は」
「忘れたですか!?グレイスさんと組んでオペレーターやってるミレイナですよ」
ミレイナがそう言うと刹那は爆発宣言をした(爆弾の一歩先に行ってしまったらしい)
「何を言っている?フェルトと組んでオペレーターをやっているのは、クリスティナのはずだ」
「ええー!?」
かぎかっこは1つだけだが、トレミークルー全員の悲鳴が此処で響き渡った。だが流石と言うべきか、
刹那は動じない。困ったような表情でまずアレルヤに目を留めた。
「なんだアレルヤは鬼太郎のコスプレ辞めたのか」
「えっ!?僕、鬼太郎のコスプレイヤーだったの!?」
「違うのか?ヘアースタイルがそっくりだっただろう。いつちゃんちゃんこと下駄を履くのか、楽しみ
 にしていたんだが」
「・・・・・・いや別に鬼太郎に憧れてあのヘアースタイルにしたわけじゃないんだけど・・・」
アレルヤのぼやきを耳にしたまま刹那の視線はマリーを通り越し、ティエリアに留まった。
「・・・・・・・・・」
しかし変化が無かったからかあっさりと視線を外し、ティエリアのこめかみに怒りマークが浮かんだ。
そして刹那が最大の驚きを示したのだ。
「どうしたんだ、ロックオン。お前が分裂する生き物だとは聞いていないぞ!?」
「そーそーミカヅキモみたいに俺達分裂して」
「んなわけないだろう!!」
思わずボケたニールにライルが怒鳴りつける。その後ライルに説教を食らうニールを背に、スメラギが
刹那の顔を覗きこむ。
「スメラギ・・・・・・か」
「そうよ、刹那。貴方、いま何歳なのか答えなさい」
「?質問の意味が分からない」
「良いから!」
スメラギに強く言われて刹那はぶすっとしたまま、口を開いた。
「16歳だ。それがなんだ?」
つまり、刹那は記憶が後退してしまったという事らしい。これは困った事になった、とトレミークルー
は溜息をついた。

それから自機がガンダムという名を冠していない事に、膝をついてしまうほどショックを受ける刹那の
姿があった。
「なんという事だ・・・・俺の乗機がガンダムじゃないだなんて・・・」
そういえば刹那はガンダム馬鹿だった、と懐かしく思い出すクルー達(一部除く)そんな刹那に
「お前の乗機はガンダムを超えたガンダムなんだから、ガンダムじゃ!」
と必死で励ます健気なおやっさんの姿があったと言う。

困ったのはコンビネーションだ。刹那が実質リーダーになっている為に、彼を中心に展開している事が
多いのが現状だ。それが中心が鉄砲玉になってしまったのである。死活問題だと自信を持って言えた。
「兄さん、ケルディムに乗ったら?」
「アホ抜かせ、お前の癖が染みついてやりにくいって言っただろう。・・・・・つか弟よ、お前刹那の
 面倒を又俺に見させようと画策しているだろう?」
「流石!良く分かったね、ニール!」
「お前もそう思っとったんかい、アレルヤ!」
「僕もそれが良いとか思ったんだが」
「裏切り者だな、ティエリア・・・」
正に四面楚歌、16歳刹那の面倒を押し付ける気満々の血も涙も無いマイスターのコメントにニールは
最大のピンチを迎えていた。なんせ愛想が致命的に無い、謎の電波を強力に発する、など16歳刹那は
問題を一杯抱えていたのである。世話係を押し付けられたニールは当時、心労でやせ細っていたという。
「ライル、お前がやれば?」
なんせ恋人同士だ、少しは気にするだろうと思って一応振ってはみたのだが。
「新人がリーダーっておかしいだろ?俺、面倒くさそうだからやりたくない」
「おまい、恋人相手に面倒くさいって!!」
薄情な弟のコメントに思わず叫んだが、状況は変わらない。すったもんだの末、後方にいるライルとテ
ィエリアが状況を見ながら展開していくという事になった。なんとかニールは刹那の戦闘中のお守から
逃げられたが、それ以外はなんだか要領よく押し付けられた格好となった。とは言っても別に刹那にひ
っつき虫になっているわけではない。何かあった時のストッパーとしての役割を期待されているわけだ。
同じ双子でありながら、要領良く逃げてしまったライルが羨ましいと思うニールだった。

ニールにとって頭が痛いのは、なにも刹那のお守だけではない。自分をすっかり忘れてしまった、とい
う事でライルがへそを曲げているのもそうだ。恋人(しかも刹那からのプッシュプッシュ小錦だった)
だけは覚えていても良いはずなのに、思いっきり胡散臭そうに見られれば頭に来るのはニールとて分か
っている。ライルにしても記憶を喪失したのではなく後退してしまったのだから、二期から本格的に登
場した自分の事は未知の存在であることは理解している。だが頭だけで理解しても、感情が追いついて
いっていないのである。だから刹那に近づきもしない。

だが

ニールは有る事に気が付いていた。そしてスメラギにも同じ事を言われたのだ。
「知ってる?刹那ってなんのかんの言って、貴方とライルを間違えた事ないのよね」
刹那はニールの事を「ロックオン」と呼び、ライルの事は「ロックオン?」と呼んでいる。「?」が付
いているのがライルには気に入らないらしいが、刹那がキチンと分別しているのは分かる。当のライル
は頭に血が上っているらしく、気が付いていないようだが。そんな事を思いながらドックで整備の手伝
いをしていると
「お前を呼んだのに、何故ハロを高速速球で投げて来る!?」
「うっせ、『ロックオン』はあっちだよ」
「だから俺が用事があるのは・・!!」
ケルディムがある辺りで、こんな言い合いが聞こえて来た。
ガシャーン
なにかの効果音がしたが、痴話げんかに巻き込まれたくなくて無視を決め込むニールだった。


★というわけでアホアホのお話になります。でもギャグって単発芸なら良いのだけれど、長編を書こう  と思うとなかなかに難しい。え?私だけ? 戻る