できあがちゃった






 
らいる1/2・・おまけ



「むごぅ・・・・・むぐぐ・・・・」
口をキスで塞がれたライルがむごむごやってる。ばんばんと不埒な相手の背中に拳を叩きつけてみるの
だが、悲しいぐらい相手は怯まなかった。酸欠に陥って死ぬかも・・と思った瞬間、やっと解放される。
「刹那・・・・お前此処がどこか分かってんのか?」
睨みつければいけしゃあしゃあと刹那はのたまってくれた。
「お前の大学のキャンパス」
「分かってるんなら、するなよ!誰かに見られたら大変じゃねーか!」
「俺は構わない」
「俺が構うんだよ。どう見たっていたいけな感じに見えなくもない気がするような高校生に不埒を仕掛
 けている悪い大学生の図になるじゃねーか!」
ライルが由々しき事態を想定して訴えれば、渋々という形で刹那は離れた。が、親指でライルの下唇を
なぞる。ライルがはぁ・・・と溜息をついた。
「お前、本当にキスが好きだな」
呆れたように言えば、淡々と答が返って来る。
「ああ。守れて良かったなぁ・・・と実感できるからな」
「・・・・・その節はお世話になりました」
ライルの声がトーンダウンして、刹那は苦笑を隠せなかった。


ライルは中学の時にジュースに混ぜ込まれていた薬によって、水をかぶると女になる異常体質になって
いた。双子の兄ニールの献身的なフォローによってなんとかその体質が露呈されてはいなかったが、ラ
イルはどういうわけかこのやっかいな体質になってから、水難に遭う事が多くなった。そして努力の甲
斐なく刹那にこの体質がバレたのだが、その後に恐ろしい天災というか人災が待っていた。その災いの
名はグラハム・エーカーという。彼はチッス1000人切りを目指して修行中に、偶然女ライルを見か
けて気に入ったらしい(ライルは何処で見かけられたのかさっぱり分からなかった)しかも1000人
目だと言う事で、やたら気合の入った追撃を受ける事になったのだ。
当然その動きに警戒して動いたのはニールと刹那である。特にニールは涙ぐましいフォローをしていた
のだが、色々とあった。例え女になってもニールにとってライルは「弟」なのである。なので
「あいつの唇は男になんざ、触らせねぇ!」
と叫んだ。「弟」なら兄がそう思うのは当然である。しかし、グラハムにしてみれば女ライル「エイミ
ー」しか知らない。そこの認識の違いが悲劇を生んだ。グラハムは珍しく2、3歩後ずさった。
「な・・・・なんという・・・。つまり君は妹君にレズを奨励しているというのか。なんというマニア
 ニックな・・・・・」
と呟かれてニールは自分の過ちを知った。ショックの余り倒れ込んだニールに女ライルこと「エイミー」
は慌てて駆け寄る。
「兄さん、しっかりしてくれ!グラハム、てめぇ!よりにもよってなんて事言いやがるっ!」
「ああ、エイミー。君はもう少し女性らしい言葉を使わないと、相手ができないぞ?」
「うるせい!そんなもの、その言葉づかいで良いんだ、と言ってくれる相手を探しゃ良いだけだ!」
ライルの叫んだこの言葉を聞いて、刹那が目を輝かせたりした。
グラハムは常識が通用しない相手であった。当然、常識人のニールやライルに予測もつかない処からひ
ょっこりと登場してくるのだからたまらない。こんな時、頼もしかったのが刹那の常識無しである。そ
れでもやはり虚を突かれて慌てる事も多々あった。なんせ1日の凄い回数の出現率を誇っていたので、
ニールや刹那、ライル本人も持っているぬるま湯がきれてしまう事も。

そんな恐怖の日々はある日あっけないほどの幕切れを見せた。いつものように女になってしまったライ
ルの前に現れたグラハム・エーカー。しかしその時
「皆!グラハムを捕まえて!」
という聞いた事の無い声が聞こえて来た。ライル・ニール・刹那の3人が振り向くとそこにはえらくひ
ょろ長い、ポニーテールの優男が困ったように立っていた。そしてグラハムには何人かが取り押さえに
入っていたのである。
「カタギリ!どういう事だ!?」
下敷きとなって呻くグラハムにカタギリと呼ばれた青年は、額に手を当て首を横に振った。
「君がこういう事してるって聞いてさ・・・・。ホント、馬鹿だねグラハム僕の冗談をまともに受けな
 くても良いのに」
そう言われてグラハムは珍しく口籠った。大人しくなった彼の上から安心したのか、捕獲していた人間
がわらわらと退いていく。バツの悪そうに立ち上がるグラハムの顔をむんずと両手で挟んで、カタギリ
はチュとグラハムの唇にキスをした。驚愕したのはライルとニールと刹那だったが、他に驚いている人
はいなかった。呆然と立っている3人組に、カタギリは困ったように笑って頭を下げた。
「どうも・・・うちのグラハムが迷惑をおかけしました」
その言葉に最初に素に戻ったのはニールだった。
「えっと・・・・・状況が全然見えないんですが」
「すみません、実は事の発端は僕だったみたいで・・・・。僕にキスしたいとグラハムが言った時に僕
 は冗談だと思って、僕にキスしたいなら女性とそうだね、1000人ぐらいキスして修行しておいで
 よって言っちゃったんです。そしたらグラハム、本気にしたみたいで。彼がキス修行しているって知
 ったのがつい最近だったので、初動が遅れてしまって申し訳ないです」
つまりグラハムはこの優男とちゅぅをしたいが為に、迷惑にも頑張っていたわけだ。そしてその目標は
カタギリがグラハムにちゅぅをした事によって達成されたと言っても良い。ライルはへなへなとその場
に座り込んでしまった。

そんな迷惑でしかないほずの男、グラハム・エーカーは刹那にとってはキューピットだった。その事を
本人に告げると
「キューピット?ああ・・・3分クッキングの」
と答え、完全に何かと勘違いしていたのだった。刹那は面倒くさかったので、説明もしなかった。そう、
グラハムに唇を狙われている最中、俗に言う吊り橋効果と女性形態の時のホルモンのバランスがどうか
なったのか、ライルはうっかり自分を守ってくれる刹那に惚れてしまったのである。無論、隠している
つもりでも肝心の刹那にバレバレになってしまったので、あっという間にひっつく事に。その事実に気
の毒なニールは卒倒し、ますますグラハムに対して良い印象を持たなくなってしまった。


現在ライルとニールは大学2年生、刹那は高校2年生。刹那は毎日せっせと大学のキャンパスに通って
来て、ライルにちゅぅをかます。それをまんざらでもなく思っている自分に、ライルは苦笑する。ふと
刹那の顔が再び近づく。ライルは静かに目を閉じたところで・・・・・
「おい、神聖なる大学キャンパスで何をしているんだおまいら」
「あ、兄さん」
「出たな、ペッパー警部」
「誰がペッパー警部だ。外で盛ってわいせつ罪で逮捕される振舞いのバカップルに注意しただけで、一
 種悪者になった可哀そうな人なんだぞ、ペッパー警部」
歌詞聞くとそうとしか思えないんですが、どうでしょう。
「あはは〜、兄さんも帰り?」
「おう、つーかお前と一緒に帰ろうと思って探してた」
帰り路にも水をかぶる騒動が起きないとも限らない、まぁ刹那のキャンパス通いもそういう意味もあっ
たりはする。
「んじゃ帰ろうぜ!兄さん、刹那!」
ちゅぅを阻まれて少しむくれている刹那に、ライルは笑いかけたのだった。


★こういうハプニングがあったので、この話の刹那はちゅぅが大好きです。乳も揉むがな!(笑)兄さ  んは複雑ではありますが。ちなみにこんな体質だと刹那の子供は産めないな、とライルが冗談で言っ  たらイオリア爺さんが女性形態を1,2年維持できる薬をさっさと開発してきて、ニールに一本背負  いを食らってたりします。でも平気。 戻る