書いてイスタンブール




日記ログ7



男たちの分かりあい

刹那が食堂に行くと、ニール・ディランディが既に食べ終えたトレイを前に、難しい顔をして座ってい
た。
「どうした?ニール」
取り敢えず無視するわけにもいかず、そう問いを発するとニールは初めて刹那の存在に気が付いたよう
で、目をぱちぱちとさせた。
「いや・・・ライルと再会して殴り合いして関係が穏便になったのは良いんだが、話をしているとライ
 ルの中の俺って凄いパーフェクト人みたいな感じなんだよな。なんつーかちょっとプレッシャーだな
 ・・・と思ってさ」
確かにライルの中のニール像は聖人君子かと言いたくなる事も確かにある。
「なら考えてみろ、ニール。ライルに『兄さんってやっぱ凄いな』と思われるのと『こんなんだったの
 か、ガッカリ』と思われるのとどっちが良い?」
刹那の言葉にニールはあちこちに目を泳がせて短い間考え込んでいたようだが、いきなり刹那の両手を
ガッと自分の両手で包みこんだ。
「分かった!刹那、有難うな」
「分かってくれたならなによりだ」
まぁなんだ

男達は分かりあったのだった。

しかしその分かりあった場面は
ピロロリロ〜ン
という写メを写す音に終焉を迎えた。2人がそのままの格好で音の方を振り向けば、そこには満面の笑
みを浮かべた女王様の姿。思わず固まった彼らをしり目に、高速スキップをかましながら(どんなだ)
あっという間に消え去った。彼女の行先は決まっている。ライルの処だ。そしてあの写メを見せてライ
ルを煽るのだろう。実はライルは刹那が恋愛的な意味でニールを見ているのではないかと思ってたりし
たりするのだ。刹那自身はきっぱりと否定しているのだが、やはり疑惑は拭えていないらしい。そんな
ライルにあの写真を見られたら刹那にようやく訪れた春が過ぎ去って、真冬になりかねない。刹那はそ
んな事はごめんだった。それはニールにも言える。ニールにしたって刹那は可愛い弟分以上でも以下で
もないし、それをライルに疑われた時にえらく憤慨して否定しているのだが。変な遠慮をされてまーた
心情的に遠くに去られるのはやっぱりゴメンなのだ。
「大変だ、追うぞ刹那!」
「ああ。気合入れて行くぞ!」
2人は必死でトレミーの廊下を疾走して行った。




  夫婦の日 「・・・・なんだってこんな事になってんだ」 いきなり部屋に突撃してきてベットに押し倒されたライルは不機嫌を通り越して、子供のよーに純粋に 首を傾げた。ぎゅうぎゅうと意味不明にライルをベットに抑え込んでいるのは刹那である。別にこんな に抑え込まれなくてもヤルこたヤッテいるのだが。 「今日は11月22日で良い夫婦の日らしいからな」 「あのさ、良い夫婦ってこんな拘束ゴッコすんのかよ。わけわかんねぇ」 正論です。 しかしその正論は刹那の電波に阻まれるのである。それでもその突飛な電波には逆らいたいお年頃(三 十路過ぎ) 「つか、俺達別に夫婦でもないだろ?」 正論です。 「夫夫とでもいうのか?」 「なーんか嫌な響きだな、それ。とにかくこんな状態じゃ呑気に話もできん。取りあえずどいてくれ」 「しかし今日は良い夫婦の日だから・・・」 「おやっさん夫妻が今日、こんな拘束ゴッコしてるわけなかろう。って、やってたら果てしなく嫌だが」 大体「良い夫婦」→「拘束ゴッコ」になる思考回路が奇跡的なまでに理解不能だ。なんで俺、コイツと そーいう関係になってしまったんだろ?とライルは頭を抱えたくなったが、腕は拘束されているので抱 えられなかった。無念。 そして やっぱり意味不明にライルを押さえつけ続ける刹那と、なんで押さえつけられるのかさっぱり分からな いライルはにらみ合いに近い状態を律儀にも継続したのだった。
洋服のセンス 刹那の部屋にやって来たのは、ご機嫌なニール・ディランディだった。CBは制服が基本なので、ニー ルも普段は制服を着ているのだが、今日は私服だった。 「アリガトな!刹那も1枚噛んでるって聞いてさ、礼を言いにきたぜ!」 「気に入ってくれたなら何よりだ」 そうニールはあの緑と赤の凄まじいと評判の服ではなく、割と洒落た服装だった。洒落た服装、という ものが想像できないので各自想像して下さいお願いしますお手数をおかけします。しかもニールにバッ チリ合っているものをお願いしますです。 「いや〜今朝ライルが俺の部屋に来てさ『今日は良い兄さんの日だから受け取りやがれっ』って大リー  グボールみたいに投げてきてさ」 「相変わらずバイオレンスなコミュニケーションしているなお前ら兄弟は。プレゼントが異変を起こし  たか」 「ああ、ばっちり」 「因みにそのプレゼントはどんな軌跡を描いたんだ?」 「消えた」 「大リーグボール2号か(わざわざ調べました)良く取れたな」 「ああ、アニメでもそうだけど消えても目標に向かってかっ飛んでくるんだから、腹の辺りで手を待機  させてたら飛び込んでた」 「それでこそ元祖ロックオン・ストラトスだな。それにしてもわざわざ魔球を開発するライルも凄いな」 「ああ。でも投法が『エビ投げハイジャンプ魔球』だったら大変だったけどな」 「ああ・・侍ジャイアンツに出てきた真上に飛び上がって更に空中でエビ反る奴か(わざわざ調べまし  た)」 そんな事したら天井に頭激突させて、ニールが悪い意味で度肝を抜くだろう。良い兄さんの日どころの 騒ぎではない。 「まぁこれで先日緊急ミッションと称して俺とライルが地上に降りた理由が分かったか?」 刹那的にはこれが大事だったのだ。元々刹那とライルのほもっぷるは自分達が地上に降りる際、必ずニ ールを誘っていたからだ。ニールは最初はほもっぷるとはいえデートにも等しいトコについて行って良 いのか戸惑っていたが、反対にほもっぷるに迷惑だったか?と訊かれてその戸惑いを克服したのだった。 なのでニールがちょっと引きこもり状態になっていたのだが、ライルにしても刹那にしても今日までは 放っているしかなかったのだ。しかし今日、その謎は解けた。 「ああ。アリガトな」 「気にするな、義兄だからな俺にとっても」 そう言って刹那は満足げな顔をしたのだった。
甘えとプライド シュミレーションを終えてパイロットスーツのままで、元現マイスターと1名(マリー)はまったりと 結果を待っている時だった。 「そういえばライルが刹那に甘えるトコ見た事ないねー」 アレルヤが突然こう言い始めたのだ。 「だが彼は年上だからな、早々甘えられないんだろう」 とティエリアが一応フォローらしきものを入れて来た。ライルはその一応フォローにうんうんと頷く。 「大体30越えの男が甘えたって気味悪いだけだろ!」 そう張り切って言ったライルの言葉は、刹那の声に阻まれる。 「いや、ちゃんと甘えてくる。この前など酒に酔った振りをして、俺にちゅーをせがむんだからな。可  愛いだろう?」 びょーん、とライルの身体が器用にも垂直に跳ね上がった。な、なんでバレてんだ?完璧に演技してみ せたはずなのに、とぐるぐるしだす。 「そっか、それは可愛いかもしれないね、マリー」 「ええ、確かにそうね」 ええい、黙れ(自分達の事は棚に置いて)馬鹿っぷるがっっ! 「そうか、そういう事をしてくる時もあったのか、良かったな刹那」 良くないよ、ティエリア!俺の立場はどーしてくれる!?(そんなものはない) そして刹那とライルの痴話喧嘩に巻き込まれすぎて、とうとう周囲から『刹ライ博士』と呼ばれるよう になったニールは全てを察してにやにや笑っている。正に四面楚歌。 「それだけじゃない、その後なだれ込んだ」 そこまで喋った刹那の顔というか頭が、ヘルメットで覆われる。これ以上喋らせまいとしたライルが (マイクあんのに)縋る思いで刹那のヘルメットを被せたのだった。案の定不本意気味に睨みつけてく るが、ライルとしてもこれ以上喋られたら大変なので必死だ。だってその後なだれ込んだ時に、結構積 極的に刹那を煽ったりしていたんだから。刹那とニールにはモロバレだったという事実が、ライルには 耐えがたかったのである。 「あ、俺ちょっとトイレ!」 完全に不自然に立ち上がって、部屋から出て行くライル。刹那がメットを外してこう1言。 「可愛いだろう?」 「ほんとだな!」 答えたのは実兄だけだったという・・・・。
クルシミマス 「今年のクリスマスは張り切っちゃうわよー!」 まだアロウズとどんぱちやっとる最中にこう言える、トレミーの女王様は凄かった。おかげさまでガン ダム各機がペイントされてえらい事に。テーマは「クリスマスツリー」らしい。其々のマイスターが各 愛機の無残な姿に卒倒していたが、1番えらい事になったのはボディカラーがばっちり当てはまったケ ルディムである。なんせ頭上にどでっかい、キラキラしたお星様が付いていたのである。しかもスメラ ギの気分次第で光ったりするらしい。 「兄さん・・・・・俺、次の出撃で死ぬかも」 お星様はそれはそれは見事な目印になって下さるに違いない。 「ガ・・・・ガンバレ、ライル!」 この惨い現実に、ニールは弟を励ますしかなかった。 どうか今日だけは襲ってこないで欲しい。そんなマイスターの願いも虚しく、アロウズがやってきたの で渋々出撃したガンダム達。しかしアロウズの機体の様子がおかしい。前に2機後ろに1機の編成でい くつかの部隊が迫っていたのだが、前のMSにはどっかで見たよーな角が2本生えているし、後ろのM Sは赤いてっぺんにぼんぼんが付いた帽子が乗っかっている。マイスター達はそれを見た途端、思わず 口に手を当てようとしてバイザーに阻まれた。 「ア・・・・アロウズの連中も、俺達同様の目にあっていたのかっ!コンセプトはサンタさん!」 ライルの声を切欠にマイスター全員が目頭が熱くなり、熱い水流が目から流れ落ちるのを止められなか ったという・・・・・。 そしてアロウズの名前は各個あるのだろうが『名無し』と呼ばれるパイロット達も同様だった。 「おい!ガンダム達のあのペイント!俺達はテーマはサンタさんだが、奴らはクリスマスツリーかっ!」 「あの緑のガンダムがテーマの本命らしいな」 「あれ・・・・どうしたんだろう。俺、涙が止まらない・・・・・・・」 「安心しろ、俺もだ」 触発するかと思われた瞬間、ガンダムとアヘッド達は固く固くお互いを抱きしめあったのだった。きっ とコクピットではパイロット達が上からの理不尽な行いに、号泣しているものと思われた。 世界は救われた。 ビバいえっさ!←?
可愛い可愛い 「お前さぁ・・・なにが良くてライルとそういう関係になったんだ?」 ぽつりと漏らされたニールの言葉にライルがぶほっとむせたが、余り注目はされなかった。 「どういう意味だ?」 刹那はあくまで真顔で訊き返してくる。それにニールは「だってさぁ・・・」と言葉を続けた。 「ライルはお前より身長あるんだぜ?可愛いけど。ライルはお前より体重あるんだぜ?可愛いけど。ラ  イルはお前より8歳も年上なんだぜ?可愛いけど」 「ちょ、兄さん!語尾にいちいち付いてくる繰り返しの言葉はなんだ!?呪いか!?呪いがかかってん  のか!?」 ガタッと立ち上がって喚くライルに、ニールは本気で不思議そうな顔をした。 「呪いなんてかけるかよ。俺はただ事実をくり返し述べているにすぎん」 「真顔で言うな。つかアレルヤ!ティエリア!お前らもなんとか言ってくれよ!俺は可愛くないって!!」 ライルの魂の叫びを聞いた2人は一瞬、顔を見合わせた。が、アレルヤは非常に爽やかな笑顔と共に、 ポッケからなにやら白いハンカチを出してにこやかに振った。 「おのれ・・・・さっさと白旗上げおって・・・・・・。ってティエリアさん!?何怖い色のハンケチ  ーフ振ってらっさるんですか?」 見ればティエリアは淡々と赤いハンカチを振っていた。 「これはバッフ・クランにとって白旗と同じ意味合いを持つ」 流石イデオンガンのモチーフの武器を持っている(脚本家認定)ガンダムに乗っているだけの事はあっ た。地球でやったら牛、大興奮しますがな。事態はまさしく四面楚歌だった。 ニール・刹那→本気でライルが可愛いと思っている輩 アレルヤ・ティエリア→白旗 「俺は可愛くなんてねーんだよ!兄さんも刹那も目に掛ってる鎧戸(フィルター強化版)を開け放て!  くっそー!」 四面楚歌に陥ったライルはぷりぷり怒りながら、出て行った。そんな後ろ姿を見送った後、刹那が口を 開いた。 「最初の質問の答えだが、お前が如実に言っている事が真実だ。あいつは実に可愛い」 アレルヤが精神的に力尽きたのか、この言葉でごっという鈍い音と共に額をテーブルに強打した。その 横では相変わらず淡々と「イデオンの色」のハンカチを振り続けるティエリア。 「やっぱ、そーかー。あいつの可愛らしさは凶悪だからなー」 本人の怒りと仲間の精神的憔悴もなんのその、ニールは鼻の下を伸ばしまくっただらしない表情で納得 したのだった。
ちっすっす 「ライルおはよう」 「あ、兄さん、おはよう」 朝の挨拶を交わした後、ニールがライルの頬に唇を寄せる。朝の挨拶のちっすなので、ライルも素直に 頬を差し出したのだが、いきなり兄が消えた。いや違う。振り返ればズザザザーっと床を素っ転がって 滑って行くニールの姿。 「わああああ!兄さん、大丈夫か!?」 慌ててニールの滑り終えた処へ走って行って、上半身を起こした。 「大丈夫か!?兄さん!」 「ああ。・・・・・びっくりした」 ニールは目を丸くしていた。そりゃそーだろう、完全に虚を突かれたようなものだ。 「刹那ぁ!お前、なんてことするんだよ!?本当に兄さんの事、敬愛してんのか!?」 そう、いきなし刹那がニールを突き飛ばしたのである。しかしライルの抗議に、刹那は拳を握りしめて ぶるぶると震わせている。その後ろではやっぱり目を丸くしているアレルヤとやれやれという感じのテ ィエリアの姿。どちらもこういう時の刹那と係らない方が良い、と知っているので沈黙を守っていた。 「お前ら・・・・朝から濃ゆいフレンチ・チッスなどとなんと不埒な」 「いや刹那。フレンチ・キスって元々濃いもんだぞ?」 「そういえばこれ書いてる人も、フレンチ・キスって軽いちっすだと思っていて、真実を知ったのは割  と年食ってからだよね」 にっこりと多分フォローのつもりらしいアレルヤの発言。うっさいわ、ふーんだ。 「真実を知った時に『おのれ、たばかりおったな!許さんぞフレンチ!料理は高いし!』と意味不明に  騒いでいたな」 呆れた感じでティエリア。ふーんだ。フランス料理ってなんであんなに高いんだよ(貧乏人) なんだか微妙な雰囲気になってきたが、それを破ったのはニールだった。 「おお・・刹那がジェラシーか」 そう言ってにやりと笑う。この笑みが浮かぶ時、ニールはロクな事を考えてはいないのだ。 「そうだな、俺の方がちっすは上手いだろうな。ライル〜してみる?」 やっぱりだ。刹那の瞳が金色に輝いた挙句、炎が噴き出した。無論、全身からも。 「ちょ、兄さん!焚きつけるなよ!?俺が酸欠で死ぬぞ!?」 そう叫んだライルではあったが、いきなり腕を掴まれて刹那に引き寄せられる。目の端にニヤニヤして いる兄と、さっさと退散して行く薄情な仲間の背中が映った。 「刹那、待て!おちつ・・・・・・」 ぶっちゅー 「おおー」 それこそ羽交い絞めにされてちっすされているライルの後ろ姿に、ニールはなんだか感慨深く見守る。 無論、見てないで助けろよというライルの願いは叶えるつもりはなかった。というのも刹那がこんなに 情熱的に執着しているのを、ニールは微笑ましく思っているのだ。ライル関係で煽るとムキになってく る刹那の姿を見るのは楽しい。ライルは現在、酸欠に陥っているようだが。 すっぽん 「どうだ、ライルがうっとりしているだろう。俺だって濃ゆいフレンチ・チッスは上手いんだ」 「うっとりどころか、目を回して泡吹いてますが。俺の大事な弟」 きっと薄れゆく意識の中で、覚えてろおまいらと思っている事だろう。なんだか最近はこうやってほも っぷるをからかう事に、快感を覚えつつあるニールであった。
節分 トレミークルーがブリーフィングルームに行くと、そこには満面の笑みを浮かべたティエリア・アーデ が立っていた。嫌な予感が吹き荒れる。 ゴォォォォォ・・・・ 「皆、良く来てくれた」 呼んだの、お前だろ?という突っ込みは各人の心の玉手箱にそっと仕舞われたのは内緒な事実だ。 「一昨年は妙にテクニカルな鬼、去年はもち米恵方巻とロクな節分ではなかったが・・・」 「それプロデュースしたの、ティエリアだろ?」 ニールの尤もなツッコミをティエリアは思い切りガミラス星辺りに放り投げた。これにより突然意味不 明なツッコミが天から降って来たガミラス星人は、困り果てて皆青い顔になり元に戻らなくなったとい う(嘘です) 「今年は思いっきり時期を外したので『家族対抗歌合戦』をしようとしたのだが、パーフェクトファミ  リーはヴァスティ一家しかいない事が判明した」 ヴァスティ一家→パーフェクトファミリー ディランディ兄弟→両親と妹が爆死 刹那→両親銃殺 スメラギ・ラッセ→不明 フェルト→両親事故死 ティエリア→ヴェーダ マリー→デザインベビー アレルヤ→離れ小島 「え、僕だけ離れ小島って!?」 思わず叫んだ気の毒なアレルヤだったが、更に追い打ちがかかった。 「そうだな、君はイギリスにおけるフォークランド諸島みたいなものだ」 「随分、遠いなオイ」 ライルの突っ込みが入ったが、どっかの川に流された。ティエリアの流しテクは年々無駄に高等技術に なっているのであった。 「仕方ないので『紅白豆合戦』に決めた」 決めなくて良いのに・・・・というクルーの意見は、やはりそっと各々の玉手箱に仕舞われたのだった。 「それにしても紅組の勝利は確実じゃないか?」 ラッセが珍しく突っ込んだ。確かにそうだ。 フェルト・ミレイナ→可哀想で豆ぶつけられない。 リンダ→イアンがいるので、ぶつけにくい。 マリー→超反応で避けられる。 スメラギ→真の恐怖が貴方をお待ちかね。 「心配無い、紅組にはライルに入ってもらう」 「何で俺ぇ!?盾にされるのは明白じゃないか!」 確かにな。野郎なら遠慮もいらないってこった。するとマリーがライルの横に立って微笑んだ。 「大丈夫よライルさん。私が貴方の前で全部の豆を避けてみせるわ」 「いやそれ、全弾俺に当たりませんか?」 それは真実だ。 「アレルヤ、まさか私に豆投げるなんて事しないわよね?」 マリーはニッコリと笑った。アレルヤの膝が笑った。これでアレルヤは封じ込められたも同然だ。ティ エリアは映像なので仲間に加わるとは思えない。 「ライル、君は刹那に注目していた方が良いだろう」 「え?なんで?」 「君は一昨年、豆に襲われた事実を忘れているようだな。今回も見ろ」 見た先には一昨年地獄を見せてくれた豆のコスプレに身を包んだ刹那の姿。 「安心しろ、お前には俺以外の豆が当たる事なぞ許さん」 「お前の豆が一番嫌なんだけど」 その時である。不埒な豆がいきなり後ろから羽交い絞めの目にあった。 「安心おし可愛い弟!兄ちゃんが全力で阻止してあげますよっ!」 ニールと刹那が白組戦力からあからさまに外れた。 ぎゃーぎゃー騒ぐ刹那とニールを置き去りにして、紅組勝利必至の戦いが幕を開けようとしていた。 「あ、そうだ忘れていた。勝者にはこの『アーサー・グッドマン』のフィギアをプレゼント!」 とれみーくるーぜんいんのしきが、まりあなかいきょうよりもふかくおちた!
節分のおまけ 「何をむくれている?」 刹那はベッドでうつ伏せになっているライルに近づき、髪に自分の指を絡めた。なんのかんのいっては いるが、いたすことはいたしたので2人共すっぽんぽーんだった。 「当初の予想通り紅組が勝ったんだからよかったじゃないか」 ティエリアの迷惑な取り決めにより、行われた「紅白豆合戦」賞品の「アーサー・グッドマン」のフィ ギィア人形に士気が恐ろしいまでに下がり、殺意がチョモランマ並に高くそびえたトレミークルー。し かしティエリアはその空気を読み、直ぐにこう述べたのだ。 「というのは冗談で、本当はあの世からの『グッドパン屋謹製の福袋』だ!」 士気は一気にチョモランマを越えた。DVDのおまけで此処のパンが美味しいことは皆、知っていたか らだ。どうやって入手したかなんて考えてはいけません。 戦いは開始された。 当然狙い撃たれるのはライルである。意外な事にラッセが遠慮なくぶつけてきた。その豆をマリーが前 面で回避するので、ライルは被弾しっぱなし。イアンは気の毒そーにぶつけてきた。それを見て憤慨し たのがミレイナである。 「ストラトスさん、いじめちゃダメですぅ!」 とラッセに豆を大量投下。余談だがアレルヤの膝は絶賛笑い中だった(役に立たない) そして その横では豆と兄との、全く「紅白豆合戦」に関わりのない戦いが繰り広げられていた。しかし遂に世 界一不埒な豆が勝利。巧みにマリーを避けて、ライルに特攻。 「ぎゃあああああ!」 というライルの悲鳴と共に気合の入った豆に押し倒され、周囲の黄色い声を上げさせたのだった。 「がっつくなっつーんだよ」 「だが俺がお前にがっつくのが良いんだろう?」 刹那の言葉に振り返ったライルの顔がみるみるうちに赤くなる。ライルは言葉とは裏腹に、がっつかれ るのが嬉しいらしい。そうでなければ既に刹那との関係は途切れているはずだ。顔を真っ赤にしている のが刹那の言葉が図星なのを物語っている。何か言おうとしたのだろうが、何も思いつかなかったのか さっさとまた元の体勢に戻る。 「人前ではがっつくなっつーんだよ」 ライルは2人きりになると割とがっついたりもするのだが、人前で刹那ががっつくのを嫌う。それは年 齢差と性別からきているものだとは分かっているが、刹那だってライルの恋人権を周りに主張したい時 がある。だが此処でこう言ってまた長々とむくれられてはたまらない。 「分かった、善処しよう」 それでも時々は暴走するのも許して欲しい。刹那はそっとそう思った。
破滅の呪文 「おはよう、子猫ちゃん。今日も可愛いね。ほーるみーたい、ほーるみーたい」 朝っぱらからのこの言葉に、ライルはついうっかり美味しく食べていたパンをぼと、と落とした。それ から固まる事10秒、反応に困る事10秒。できれば聞かなかった事にして朝食を食べる事を続行した かったが、パンを落としてしまった事で聞いている事はバレてしまっている。仕方なしにそちらを向け ば、期待に目を金色どころか非常にカラフルな輝きでじっと見つめている。 「刹那・・・・今、お前邪神でも復活させて世界を一瞬で破滅に導く恐ろしい呪文を吐いた自覚はある  んだろうな?」 普通の口調で言ってもドン引きされるのに、棒読みでは更にドン引きの倍率が上がる。 「何故、俺が世界を破滅に導かねばならんのだ。俺はお前を口説いているに過ぎん」 何故か胸を張って、誇らしげに刹那は言ってくる。ライルはもう既に布団に潜り込みたい心境だった。 「布団に潜り込むという事は、俺がそこに同様に潜り込んで(以下略)」 「朝っぱらから、破廉恥な事を言うな。つか心を読むな。一体誰にそんな破滅の呪文を教わったんだ?  兄さんか?」 今はシフトで本当に布団に潜って寝ている兄、ニールが此処にいたら「いくらなんでもひどい屈辱です よ、弟よ」と号泣するに違いない。ニールが変なのは洋服のセンスぐらいなもんだ。巷では「しまむら ファッション」と呼ばれているらしい。あと、あのジャケットらしいものは本当にしまむらであるらし い。が、結構高いらしい。以下どうでもいい情報でした。 「いいや、匿名の「ミスター・ブシドー」という奴から教わった」 「それどーみても匿名じゃねーだろう?なんでアロウズの運転免許持ち(ライルはライセンス持ちを勘  違いしている)に教わってんだよ」 アロウズは敵中の敵ではないか。しかし刹那はやっぱり揺らがなかった。 「大体、口説くたって俺らもうイクとこまでいってんじゃん」 ライルもあけすけだった。 「だがマンネリになると良くないと聞いた。新しい風を吹き荒らしたかっただけだ」 つまりライルとの関係を維持する為にした事らしい。 「そうか、俺世界の滅亡を夢見たよ。今後はそういう事はエクシアにでも言ってやれ」 言われたらエクシアも困ると思うぞ。まぁ悪態ついてはいるが、ちょっとライルの表情が柔らかくなっ ている。なんのかんの言ってても、刹那が自分との関係を維持する為に行動してくれるというのは嬉し いものらしい。それを敏感に感じ取ったのだろう、刹那が満足げに目を細めた。 「喜んでくれてなによりだ。次の口説き文句も「ミスター・ブシドー」に相談してこよう」 「や・・・口説かなくても良いですから、相談するのは頼むから止めて下さい」 一転して必死でそう訴えるライルに、刹那は首を傾げたのだっだ。
★実は丁度一年前ぐらいに書いていた小話達。うは〜〜歴史、といえば格好良いのだろうか? 戻る