一緒にね!






 
あなたとねむりたい



「刹那!この通りだ!教えてくれ!」
尊敬する兄貴分に心底拝まれて、刹那は途方にくれた。
「教えたいのはやまやまだが、無意識でやっている事には責任が持てない」
「そこをなんとか!」
さらに必死で頭を下げられて、刹那は珍しく本当に困った。そんな刹那の顔を見て、尊敬する兄貴分こ
とニール・ディランディは叫んだ。
「俺だってライルと一緒に寝たいんだよっ!」


事の発端はニールとライルの巡り愛宇宙あーんど殴り愛宇宙の後、ニールに頼まれてライルは久々に兄
と同じベットに入ったわけだ。そして悲劇が幕を上げた。ライルは非常に洒落にならないほど寝相が悪
かったのだ。それこそライルと離れてからの方が長いニールはさっぱりと忘れていた・・・というかと
んでもなくライルを神聖化して拝んでいたので、自分に都合の良い事しか覚えてなかったわけだ。そし
てそのツケは早々とやってきた。突然顔面に強い衝撃を受けたのだ。あの寝袋の親分みたいな布団の中
でどうしたらそんな事ができるのかさっぱり分からないが、とにかくライルはニールとは上下正反対の
方向になった。そしてまた動こうとした時、ニールの顔面に足がスペシャルクリーンヒットしたらしい。

ニールは覚醒と同時に失神した。

しかし事はそれだけではすまなかった。なんと蹴られた反動でニールはベットから転がり落ちるハメに。
更に気の毒な事に普通の布団だったらそのまま下に激突したわけだが、布団は寝袋状態。しかも反対の
方向には同じ身長体重のライルが一種の重りになって、宙ぶらりんの状態に。随分頑丈な寝袋だな!G
N繊維で作ってあるのだろうか(なんでもGN付ければ良いと思っている)

そして更なる悲劇が。なんと重しにもなっていたライルがニールの方向にごろごろと転がったのである。
当然支えを失ったニールは床に後頭部を激突させる事となった。

ニールは再び覚醒と同時に失神した。

更に朝。目覚めたライルが見たものは後頭部にでかいタンコブをこしらえ、顔に自身の足裏にピッタリ
嵌る痣を濃く残して失神しているニールだった。大事には至らなかったのだが、ライルは相当ショック
だったらしく、それ以降どんなにニールがお願いしても一緒に寝る事は無かった。


そこで注目されたのが刹那である。刹那はライルとよろしくやる間柄だ。当然コトが終わった後は2人
仲良く同じベットで寝とるわけだが、刹那がそんな被害を被ったという話は無かった。最初はライルの
寝てから暴れん坊将軍から逃れるコツを訊かれていたのだが、刹那としてもさっぱり分からない。ただ
寝相が悪いのは知っていたのだが。そこでライル本人の承諾を得て、2人で仲良く寝ている(えっち抜)
処をカメラに収めてみた。するとどうだ、やはりライルは眠ってから健やかに暴れん坊将軍になってい
たのだが、刹那は実に巧みにその攻撃(?)からふわりするりとかわしていくではないか。これには刹
那本人も驚いた。因みにライルは自身の余りの暴れっぷりにショックを受けてしまい、暫く刹那とも寝
ようとしなくなった。刹那だって健全な男である。恋人がいるのに色んな意味で寝てもらえないのだか
ら不満は溜まる。ライルを説得して説得してやっとえっちっちは承諾を得たが、終わった後の疲労困憊
な体で自分の部屋に帰ろうとするライルを引きとめて大騒ぎ。情事後のけだるさの中でライルを抱き締
めている事が好きな刹那にとっては譲れない事だった。ライルの身体を心配するのもちゃんとあったが。
そして更に説得に説得を重ね、やっと前と同じように一緒のベットに入ってもらう事に成功。これはニ
ールのように実際にえらい被害を受けていなかったから、ライルも受け入れたのだろう。が、ニールの
一緒に寝ようvという提案は却下されっぱなしだった。ライルからしてみれば、就寝中というコントロ
ールできない状態で、またニールにえらい目に合わせるかもしれないという危機感がある。そりゃ朝起
きてみたら実兄が大惨事なんて嫌だろう。

というわけで、冒頭に至るわけだ。

「大体、30も過ぎた兄弟がそうそう一緒に寝るという事はないだろう?」
そう言えばニールはむくれた。
「良いだろ、例外がいっぱいあったってさ」
気持ち的には分かる。ニールはとにかく『家族』というものに飢えていた。刹那達を『疑似家族』とし
ていたけれど、やはり本物の『家族』には勝てないというわけだ。そしてずっと長い間触れる事すらで
きなかった弟と親密になったわけだから、当然スキンシップというものをしたいのだろう。割とニール
はスキンシップ重要視派だったのだが、何の事は無い。自分が『家族』とスキンシップしたかっただけ
なのだ。そう考えると、刹那としてはちょっと面白くない。自分はライルの身代わりだったのか、と思
うと、やっぱりね。それなりに刹那を可愛がってくれたニールではあるが、その視線がいつも自分を擦
り抜けていってしまうのは分かっていた。だがその視線の先にいたライルに惚れ込んで、えっちっちも
する間柄になるとは予想もしていなかった。
「心配するな、ライルはこれからも俺と沢山『寝る』から」
「心配の意味が分からん。つかお前がライルとホモップルになるとは、思いもよらなかったよ。やっぱ
 あの時にライルの事、バラすんじゃなかった・・・」
「そうするときっと今でも、ライルと語らえなかったと思うが?」
「・・・・・・・そうなんだよな」
あの時、刹那にライルの事を話さなければきっとライルは今でもカタロンにいただろう。割と悪運は強
そうなので、カタロン狩があっても生き延びていそうな気がする。そしてニールとめぐり会う事も無く
すれ違ったままになっていたはずだ。それに比べれば起きていれば普通に仲の良い兄弟なのだから、ラ
イルはどう思っているか知らないが、ニールにとっては盆と正月がいっぺんに来たようなおめでたさな
のだ。どっちの状況が良いか?なんて決まっている。ニールにしても刹那にしても。

さて本当にどうするか。

刹那は再び溜息をついて、周りを意味も無く見回した。



★昔、日記に書いた「ライルの寝相が悪い」ネタを書いてみました。なんの事はありません、寝相が悪  かったのは、私だ。高校の修学旅行で朝、目を覚ましたら隣の布団で寝ていたのも私だ。ローリング  という枕詞を頂いたのも、私だ(膝を折りながら)自分ではコントロールできないですから、やっか  いですよ。最近は暴れないようですが、デカイ声で唸っていたそうです(母談)大人しく、静かに寝  るのが憧れです。 戻る