Xmas2011


        「メリークリスマス!」       
        カチン、と合わされるグラスの1つは白い液体。好きなモノ選べと言ったら迷わず牛からの分泌物を選
        ぶとは、と選んだ本人以外そう思った。

        休暇を取ってこの部屋にいるのはニールとライルと刹那である。


        ニールは最初の頃、実弟と弟分のほもっぷるが休暇を取った時、ほもっぷるとはいえ2人きりでいちゃ
        いちゃしたい時もあるだろう、と思っていた。ところがそう聞いた夜に当のほもっぷるがニールの部屋
        を来襲したのだ。
        「兄さん!今度の休暇、行きたい処あるか?」
        ニールには話が全く見えなかった。
        「は?なんでお前らの休暇に俺のリクエストが必要なんだ?」
        ニールにとっては当然の質問に、ほもっぷるの刹那とライルは目を丸くして顔を見合わせた。その表情
        があっという間に陰ってしまう。
        「ゴメン、そうだよな。俺達、兄さんも一緒に来るって勝手に思ってた。兄さんだって1人で出かけた
         い時もあるだろうし、他の連中と休暇取りたいよな」
        「確かにそうだ。落ち込むなライル。俺も気がつかなかった」
        「刹那・・・・・」
        なんか2人の世界が展開されそうになって、ニールは咳をした。
        「んな事言ったって、お前らこそ2人きりで濃厚な時を過ごしたいんじゃないのか?」
        これも当然の問いといえよう。なんたってらぶらぶのほもっぷるである。しかし当の本人達は首を傾げ
        るだけ。
        「いや、ライルとはトレミー内でも2人きりにはなれるが?」
        「そうだよなー、別にあん時に誰か居る訳でも無し」
        余りに淡泊な反応にニールの方が面食らってしまう。らぶらぶと思っている俺は見誤っていたというの
        かアリー・アル・サーシェス!(なんでだ)
        「でも兄さんの都合とか全然聞いていないのは、俺達のミスだよな」
        「ああ、済まなかったニール。スメラギに早速休暇申請を取り消して貰う」
        そう言って出て行こうとするほもっぷるを、ニールは必死で呼びとめた。
        「ちょっと待ってぇ!俺、お前らと一緒に行って良いのか?」
        「?うん」
        「ああ」
        当の本人達がそう言うので、ニールは遠慮無くご一緒に休暇をエンジョイするようになった。

        後で刹那に「俺が一緒でも良いのか?」と訊いてみたが「昔は結構一緒だったからな。お前がそこにい
        るというのは、ライルだけでなく俺にとっても落ち着くものらしい」と言われたのだった。とはいえ、
        ホテルを取る場合は刹那とライルがダブル、ニールがシングルになる(ほもっぷるはシングルの部屋で
        盛り上がってから帰って行く)余談だが休暇中に借りているアパートも同じ感じ。ニールとしても、隣
        で盛られたらたまんないからだ。しかし朝の爽やかな空間でライルがいきなり
        「無重力に近いトレミーと重力がある地上ではやっぱ感じ方が違うなぁ〜」
        などとのたまって、ニールに爽やかなモーニングコーヒーを吹かせた。更には刹那が
        「そうか。因みにどっちが良いんだ?」
        等と訊いてくるのでライルが答えようとした瞬間、何故か切られずに置いてあったフランスパン(齧る
        つもりだったのか?)を振り回して、大暴れするニールの爽やかな姿が見られたという。


        まぁ説明が長くなったが、今回はせっかくだから『家族』だけでクリスマスを過ごしたいという事で、
        休暇を取って地上に降りて来たわけだ。


        「いや〜ミス・スメラギの脅威に怯える事も無く酒が飲めるって、素晴らしい事だよな〜」
        ご機嫌でニールがそう言えば、同じようにご機嫌なライルが感慨深く頷いている。刹那はいつもミルク
        を飲んでいる為に実害は無いのだが、このディランディ兄弟は良くとっ捕まって潰されていた。彼らは
        世間から見れば酒に強い方だが、スメラギの酒に対する耐性は更に上だったというのが悲劇の始まりだ
        ったりする。今頃きっとラッセ辺りがとっ捕まって床に転がっている頃だろう。そんな可哀そうなラッ
        セの事は忘れて、ライルは刹那にご機嫌なまま寄りかかった。
        「せつなぁ〜、クリスマスって何の日か知ってるか!?」
        「はっはっは、弟よ。いくら刹那が異教徒でもそのぐらい知ってるだろ!?」
        ニールは飲みほした空のグラスを振ってみせた。刹那は自信満々に頷いた。
        「ああ勿論だ。今日はウィングガンダムゼロカスタム(長い)が占拠された大統領府に向かって、ツイ
         ンバスターライフルをぶっ放した日だ」


        部屋の中なのに、寒風が吹き荒れた。


        「ん?どうした2人共。・・・・・ああそれともガンダムでもないふつーのトーラスで不殺で200機
         以上落したルクレツィア・ノインを称える日か?」


        氷河期が到来。おいでませマンモス&サーベルタイガー


        固まったニールの手からグラスが滑り落ちたが、下は絨毯だった為事なきを得たのだった。
        「兄さん」
        ギギギギ・・・・という音がする感じでライルはニールの方を向く。
        「アンタ一体、刹那に何吹き込んでんだよ!?」
        「誤解だぁ!なんでも兄ちゃんのせいにするのは止めて下さい!」
        「前例があり過ぎるだろーが!」
        ニールとしては冗談を言っていたつもりだったが他マイスターは割と間に受けてしまい2期にライルの
        度肝を抜いた事がたっぷりとあったからだ。無論ニール自身はそんなに間に受けられているとは思って
        いなかったので、なんつーか反省みたいなものはしていたのだが。
        「大体、兄ちゃんはウィングガンダム以下略の名前すら知りません!どうやって刹那に教えんだよ!?」
        「あんたならやりかねん」
        ニールの冗談で痛い目にあったライルは頑なに疑う。しかしニールにしてみれば知らないものは知らな
        いとしか言いようがないではないか。
        「刹那!朗らかに見てないで尊敬する兄貴分を助けなさい!」
        自分では説得しきれないとみて、ニールは元凶に助けを求めた。
        「分かった」
        元凶は重々しく頷き、やおらライルに向き直る。
        「良いか、ライル。ウィングガンダムゼロカスタムとは、全てのガンダムの元となるMSでゼロシステ
         ムというものを」
        「誰がMSの方の説明をしろと言ったぁ!俺がライルにかけられているいらん疑いを晴らす為に助けを
         求めたっつーの!!」
        ニールの絶叫に刹那は又しても頷いた。
        「ゼロシステムとは・・・」
        「そうじゃないっつーの!」
        なんだか頑なにウィングガンダムゼロカスタムの説明をしたがる刹那。Z2で共演した名残なのだろう
        か。ニールは気分的には床にひっくり返って、手足をバタつかせたい欲求に駆られた。しかしそれをす
        ると兄としての威厳も、人として何か大切過ぎるものを失う気がして堪える。ふと見るとライルは刹那
        に寄りかかっていた。どうもニールに罪を着せるだけ着せて、ショックの余り卒倒してそのまま寝てし
        まったらしい。そんなライルの髪を刹那が嬉しそうに撫でる。
        「本当に可愛いな」
        ぽつ、と零される呟きに
        「あったりめーだ」
        と答えた覚醒している2人はやっぱりライル馬鹿なのだろう。なにはともあれ、ライルが寝こけてしま
        ったのでなし崩しにその場はお開きになった。

        後日、ライルは他のマイスターにニールがウィングガンダムゼロカスタムについて、本当に知らないの
        か確認を取って回ったという。

        そして

        刹那が余りにも旨そうに兄弟が酒を飲んでいた為、目を盗んでミルクにちょっとだけ(本人談)入れた
        という事も判明したのだった。


        ★刹那は世界に誇る酒豪達を見て育っているので、彼の『ちょっと』は世間一般では『いっぱい』であ          ります。ディランディ兄弟は刹那は酒を飲まないモノと決めつけていたので、気がつかなかった。て          なわけで今年のクリスマスもロクな事にはなりませんでした(笑) 戻る