綱吉くんとヒバリさん8 

       トランキライザー

       その日、ボンゴレボスである綱吉は同盟ファミリーのボスであり兄貴分のディーノの来訪を受けて、和
       やかに談笑していた。ふとディーノが思いついたように訊く。
       「そーいえばツナ、恭弥が此処に来てるらしーじゃないか。会っとくかなー」
       その言葉を聞いてツナは幾分拗ねたように頬を膨らます。というのも前に一回、ヒバリが来ていたにも
       関わらずディーノに嘘を言った事があるのだ。なんせヒバリにとってディーノは師匠であり、いつか追
       い抜く目標でもあるからだ。その事をヒバリ本人から聞いた時は、表には出さなかったもののちょっぴ
       り嫉妬の感情が湧いた。モチロン、ディーノはツナとヒバリの関係を知っているのだが、時々こうやっ
       てヒバリやらツナをからかって楽しんでいるのだ。なまじツナも頭が上がらない存在だけに、こうカマ
       をかけられては心もとない。
       「朝に目を覚ましたら出かけていて、今は多分この屋敷内にはいませんよ」
       ニヤニヤとディーノが人の悪い笑顔を向ける。
       「とか言って、この前はそう言った直後に本人が現れたじゃないか。本当か?」
       そう、前にヒバリはでかけていていませんよと言ったらその直後、ヒバリ本人がノックもなしに部屋に
       入ってきてしまい、大いにディーノを笑わせたのだった。しかしその笑いに気を悪くしたヒバリがディ
       ーノに襲い掛かって、大変な事になってしまった。
       「うう〜〜〜、今度のはホントですって!」
       何気に昨日の夜はアダルトな世界に行っていましたと告白(しかも無意識に)するツナをディーノは好ま
       しい思いで見る。ボンゴレの歴史を終わらせると断言する弟分は、子供は作らないと言って結婚もして
       いない。当然、彼が淡い思いを寄せていた京子とも別れてしまった。しかし悲しいかな、男にはどうあ
       っても発散せねばならない時がある。何がとは訊かない様に。そんな時、まるでそれを見越していたか
       のようにイタリアに現れるのがヒバリなのである。リボーン辺りが知らせているのかと思えば、そうい
       う事でもないらしい。確かにヒバリの性格からいって、そんな情報が自分のところに来ようものなら反
       対に絶対来ないだろう。ディーノにとってツナはボンゴレボスになっても可愛い弟分であり、ヒバリは
       可愛い弟子なのである(本人は認めないだろうが)
       「わーった、わーった。じゃ、今回は信じてやるよ」
       「もうディーノさん、本当ですって!」
       まあまあと傍らのロマーリオと共に、ツナを宥めてみた。


       ガラッ
       突然ツナの部屋の窓が開いた。ここは腐ってもボンゴレボスのプライベートルームだ。そこに窓から侵
       入するものといえば、相場が決まっている。

       暗殺者。

       ディーノ・ロマーリオそしてツナ本人も立ち上がって戦闘態勢に入る。一気に緊張感が高まった。とこ
       ろがその窓から侵入してきた輩は・・・・・。
       「ヒバリさん!?」
       ツナの素っ頓狂な声が響く。その声をものともせず、ヒバリはよっこいしょなどと言いながら窓から部
       屋に侵入を果たした。顔を上げた途端、ヒバリの顔がみるみると機嫌が悪い状態になる。
       「・・・・・・・・なんでアナタが此処に居るの」
       それはディーノに向かって放たれた言葉だった。
       「ヒバリさん、今日は朝一からいなくなっていたのに、今までなにしてたんですか?」
       「君は黙ってて、綱吉」
       一刀両断。
       唖然とした表情のツナは、その顔のままぽすんとソファに座った。するとすました顔をして、ヒバリは
       ツナの後ろに立ってその首に自分の腕を巻きつける。そして警戒心も露に、こちらを睨みつけてきた。
       「オレはボンゴレの同盟ファミリーのボスだぜ?ボンゴレボスであるツナに用事があっても当然だろう?」
       しれっと答えるディーノに、ますます機嫌を悪くしていくのがわかる。
       「ヒバリさん!?ディーノさんに失礼ですよ!」
       自分の首にかかるヒバリの腕をまんざらでもない感じで、掴む。外されると思ったのか、ヒバリの腕に
       力がこもる。ツナがグエッという声を出した。
       「わーったよ、じゃあ今日はこの辺で帰るよツナ」
       「え・・・良いんですか?」
       「ああ、大事な事はもう話しちまったしな。帰るぞロマーリオ」
       「分かったよ、ボス」
       ディーノが立ち上がると、ロマーリオもそれにならって立ち上がる。慌ててツナも立ち上がろうとする
       が、ヒバリの腕に阻止される。
       「ちょ、ヒバリさん!ディーノさんのお見送りしないと!」
       わたわたと暴れるツナに、ディーノは良いってと肩を竦めた。
       「じゃあまたな、ツナ」
       「あ、はい。また」
       「さっさと出て行って」
       「ヒバリさん!」



       車に乗り込んでボンゴレ本部から出た途端、ディーノとロマーリオはお腹をかかえて笑い出した。実は
       二人してじっと我慢していたのだ。彼らの幼い恋愛が可愛すぎて出てしまう笑いを。
       「いや〜可愛い恋愛してんな〜」
       「まったくだぜ」
       正直、他人に興味がないヒバリのジェラシーも可愛いし、そのジェラシーをまんざらでも思ってないく
       せに自分達に気を使って慌てるツナも可愛い。
       「今頃、盛り上がってるんだろうなあ」
       クツクツとディーノがハンドルを軽快に回しながら笑う。ロマーリオは既に苦笑のレベルになっていた。
       「なあロマーリオ、俺って結構良い男なんかねぇ」
       「なんだボス、いきなり」
       「自惚れるわけじゃないけど、ツナは恭弥を俺に取られると思ってるみたいだし、恭弥もツナを俺が取
        る事を警戒してるしな」
       「あからさま過ぎて、可愛いもんだな」
       「俺、やっぱあの二人大好きだわ。見てて飽きないしなー」
       「だからってからかうのは程々にしとかないと、いつかヒバリ辺りに火傷を負うぜボス」
       「だな。そういやなんで恭弥があのタイミングで窓から入ってきたか知ってるか?」
       「いいや」
       「実はあの時間、ツナの休憩時間なんだよ。恭弥にしてみればサプライズ的なものを狙っていたんだろ
        うな。休憩時間となれば獄寺も来ないから、絶好の2人きりになれる時間だ。ところが・・・」
       「ああ、俺たちが居たから当てが外れたってわけか」
       「その通り!優秀な部下を持って幸せだよ」
       「誉めても何もでないぜ、ボス?」
       ハハハ、とディーノが笑う。とにかく機嫌が良いボスにロマーリオも笑う。
       「どーなってくかねぇ、あの2人」
       可愛い弟分と弟子。あの2人がひっついた時は流石のディーノも心底驚いたものだが、今では彼らの危
       なっかしい恋愛がなかなか面白い。これからも両者に倦怠期(笑)が訪れないように、適当にちょっかい
       をかけて自分も楽しもうと思うディーノだった。

       




       ★ツナヒバでも、どうみても主役はディーノさんです。本当に有難うございました。私の世界のディー         ノさんは良き兄貴分です。ツナ以下10代目守護者達の頭をぐりぐりとこねくり回す勢いですね。の         で当然恋愛感情はありません。そんなディーノさんが好きです。        戻る