階段
ハリーやロンにとってはやっと、という感じでハーマイオニーにとっては早く時間が流れ去り、3人仲
良くグリフィン寮に向かっていた。早く部屋に帰って、寛ぎたいと心底願って歩きは早くなる。そして
ある階段に差し掛かった。
と
その階段がブン、と動き出した。ホグワーク名物の1つ、気まぐれな階段である。ので、ほっておけば
いつかはどっかの他の通路にくっつくだろうと3人は呑気に構えていた。
ところが・・・・・
「わ〜〜〜〜〜!!!なんだこれ〜〜〜!!??」
ロンの悲鳴が響く。階段は、どこかの通路にひっつくという己の習性を忘れてしまったのか、激しく左
右にゆれていた。
「なんなんだ!?」
流石にハリーも余裕を無くして、床にへばり付く。
「ちょっと待ってて!」
頼もしくそう言ったハーマイオニーはローブの中からぶ厚い1冊の本を取り出す。それはハーマイオニ
ーのお気に入りの魔法辞典だった。
「君・・・・・それいつも持ってるの?」
さっきまで派手に悲鳴を上げていたロンが、静かに問うてくる。ハーマイオニーは力強く頷いた。
「ええ、例えクルックシャンクスを忘れてもコレだけは忘れないわ!」
きっとここにクルックシャンクスがいたら、涙に沈むだろうと思ったがハリーは別のことを口にした。
「で、なんか分かった?」
「ええ、これ”踊る階段”よ。」
「気まぐれじゃないんだ?」
「そうみたい。でもまあ気まぐれに踊りたくなったら、踊るらしいわ。」
「・・・・・・アバウトだなあ、此処の学校って。」
「でも困ったわ、どうやったら止まるか書いてないの。」
「じゃあ・・・・。」
「ええ、この階段の気が済むまで待った方が良いみたい。」
ハーマイオニーの答えに、がっくりと肩を落とすハリーだった。そして、さっきから気になっている事
を口走った。
「踊るったって、左右に揺れてるだけじゃんか。ワンパターン・・・・。」
その言葉が終るや否や、今度は上下に揺れだした。
「なんだ、こういう動きもできるんだ。」
床にしがみ付きながら、ハリーは感心したように言った。
「さっきより〜〜!!危険度が増したっていう自覚はないの!?」
ロンが蒼白な顔をして、叫んでくる。
「ちょっとハリー!なんで余計なこと言うのよ!?」
ハーマイオニーも叫んだ。
「なにをやっている!?そこの・・・・・1・・・2・・・・・3人!!」
ハリーが必死で顔を階段から覗かせると、そこにはスネイプ先生が立っていた。ばっちり目が合う。
「せんせい・・・助け・・・。」
「またしてもポッター、お前か!!まったくジェームスと同じでトラブルが好きなようだな!!」
助けを求める生徒に対して、この言い草。ハリーは怒った。
「ええ〜い!!なんでもかんでも僕や父さんのせいにするなああ!!」
「ぬう!?口答えするか?グリフィンドール減点10点!」
「減点でもいーから、ここから助けやがって下さい!!つーか助けれるもんなら助けてみて!」
頭にきた沸点を軽く飛び越えて、ハリーは怒鳴った。挑発したいのか、助けて欲しいのか、馬鹿にして
いるのか分からない微妙な発言ではあったが。途端、スネイプ先生は黙り込んだ。
「!?」
その間にも、やけになったとしか思えない階段の暴走は続いていた。仕方なく、といった感じでハーマ
イオニーは叫んだ。
「偉大なるスネイプ先生!私たちをどーか助けてやって!」
だがスネイプ先生は、黙り込んだままだった。良く見ると、額に汗らしいものが浮かんでいる。
「ひょっとして・・・・・止め方知らない・・・・?」
図星だったらしい。突然シャキーンと背筋を伸ばし、兵隊さんのようにずかずかと廊下へ消えて行って
しまった。これには流石にハリーもハーマイオニーも呆れたのだが・・・・・。
「ハリ〜〜〜〜僕はもう駄目だ・・・・。」
いやに大人しかったロンの死にそうな声がする。慌てて見ると、顔面蒼白だった。
「うえ〜〜〜〜気持ち悪い・・・・・。」
あまりに揺れている為、どうも酔ってしまったらしい。
「しっかりして、ロン!」
「そうだよ!結婚式の準備もしてないんだから、死んだらダメエ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ハリーの台詞に、本当に意識が飛んだらしい。ロンはずりり、と階段から落ちていく。ハリーはしっか
りとロンの手首を握って、もはや完全に階段から落ちているロンはナニやら弱気なことをブツブツと呟
いている。
「そうだわ、上下運動の時にきっと下の階段に近づくはず。だから下に思いっきり移動した時、ロンを
降ろせるわよ。」
多分、こういう状況なら10人が10人共うんというのだが、ハリーは言った。
「だめ!だってロンが僕を置いていっちゃうから!一緒に手を取り合って、ランデブーじゃないと!」
「ナニ言ってるのよ、それってハリーのエゴじゃない!!」
「エゴじゃないさ、ロンだってきっと僕と一緒に揺れてた方が良いって思うよ。」
「あんな状態のロンに、なんの期待してるのよ!?」
ハリーとハーマイオニーのロンについての口喧嘩は、延々と続いた。その合間で
「うう〜ん、平安だったのか、スリリングだったのか良く分からん僕の人生も此処で次号に続くのかな。」
という弱々しいロンの呟きが聞こえる。それにしても、ロンの人生の終焉ではなく続くらしい。白目向
いているロンを余所に、階段もハリーとハーマイオニーもヒートアップしていった・・・・・。
ようやく3人がホグワーツのスーパーな爺様ダンブルドア校長先生に助けられたのは、実に30分後だ
ったという・・・・。
★ハリロンを目指したわりには、ハリーVSハーマイオニーみたいになった気がするのは気のせいでし
ょうか?さらに私の中ではスネイプ先生は、ギャグメーカーになってしまった模様です。ファンの方
申し訳ありません。
ホグワーツの階段は気まぐれなので、1つぐらい踊っていても良いですね(・・・そうか?)実際は、
車酔いが激しいのでこんな階段迷惑ですけど。てゆーかダンブルドア先生、なんでもお見通しなのだ
から早く助けてあげて下さい。
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