綱吉くんとヒバリさん その7
The World
注意・・・超フライングはなしです。
やっとの思いで未来から帰ってきた綱吉御一行。慌しく各自の家に戻って行った。モチロン綱吉も走っ
て自宅に戻る。果たしてそこには、母が立っていた。
「もうツッ君、一体ドコに行っていたの?お父さんはその内帰ってくるから、騒がないでなんて言うし。」
そういつもと変わらない母に、綱吉は思わず抱きついて号泣した。母は明らかに狼狽していたが、それ
でもぎゅっと綱吉を抱きしめてくれていた。
一夜明けた今となっては恥ずかしい限りではあるが、それでも家というものの有難さが身にしみた綱吉
だった。そしてうっかり寝坊をしてしまい、放課後が近いというのにいそいそと学校に向かう。見つか
らないように廊下を歩き、ある部屋の前で立ち止まった。実は授業中であるが、その人は必ずこの部屋
で仕事をしているはずだ。
「失礼します」
声をかけてドアを開ける。
ビュッ
「ぎゃああ!」
開けた途端に何かが自分に向かって、すっ飛んでくるのをギリギリでかわす。伊達に未来の人間に鍛え
られてはいない。そして立派な椅子に座って仕事をしているらしい、なにかを投げつけた張本人はムス
ッとした顔をして睨みつけている。
「なんでよけるの」
「避けないと死にますって、ヒバリさん!」
飛んできた何かは、トンファーだった。そのトンファーを拾ってヒバリに近づき、トンファーを渡す。
「いままで学校をさぼって、何してたんだい?沢田綱吉」
「ええと・・・10年後に行ってました」
ビュッ
「ひああああ!!」
トンファーが舞った。それもギリギリでかわす。かわしながら必死で弁明を始めた。
「ヒ、ヒバリさんも狙われてませんでしたか?」
「誰に?」
「ええと、バズーカ持った人間に」
ピタリと攻撃が止んだ。
「バズーカ?・・・ああ、あれね」
ヒバリが指差した先には、壁に立てかけてあるまぎれもない10年バズーカ。
「・・・・・・・どうしたんですか、あれ?」
「この僕をこんなもので狙っていたんだ、いつもより念入りに咬み殺して危険物は没収したんだよ」
「・・・・・さすがヒバリさんですね。生きてるのかな、その人」
「虫の息」
「そうですか」
としか言えない綱吉だった。
「信じてもらえますか?」
上目遣いでそう言うと、ヒバリは渋々とはいえ頷いた。
「10年後のヒバリさんにも会いました」
ヒバリは元の机で仕事をし、綱吉はソファに座ってぽつぽつと話す。
「へえ、どうだった?」
流石に興味があるらしい。
「ええ、やっぱり最強の存在でしたよ」
「そう」
心なしか嬉しそうだ。
「で、すごい美人になってました」
「ふうん」
こっちは別に興味が無いようだ。
「色々と修行させてもらいました」
とそこまで言って、あることを思い出してうっかり自分の想いに嵌ってしまう。彼なりに甘やかしてく
れた事を。
「ねえ」
「!!」
気がつけば現在のヒバリが顔を覗き込んでいる。思わず後ずさった。
「な・・な・・なんですか」
「君が喋るのをやめたと思ったら、急に赤くなってニヤニヤしだすから気持ちが悪くなっただけだよ」
なんだか機嫌が悪くなっているらしい。そんな現在の顔と10年後の顔がオーバーラップする。
「で、10年後の僕とやらは良かったの?」
いきなり核心。
「え?は?ええと・・・あの?」
「その様子だとシタんでしょ、未来の僕と」
「あ・・・・・・ええと!」
「浮気者」
ずっぱりと一刀両断される。綱吉は焦った。
「で、でも10年後のアナタですよ?」
「でも僕じゃない」
これまた一刀両断。焦っていると、ヒバリは綱吉が後ずさってできたスペースにひょいと座り、首に腕
を回して来た。ヒバリは意外と積極的なのだが、ここまで露骨にアピールしてくるのも珍しい。これは
ひょっとして
(未来の自分に嫉妬してる?)
そう思うが、それを口にしたらこれからの綱吉にとっても美味しい状況が消えてしまう。誘われるまま
ヒバリに覆いかぶさった。そして思い出す。
(そういえば、未来のヒバリさんがある事を仕掛けておいたから楽しくなるよって言ってたけど、何だ
ったんだろう?)
お盛んになった頃、いきなりドアが開いた。
「よー恭弥、ツナがこっちに来たっつーんだが、知らねー・・・・・か・・・」
入ってきたのはディーノだった。思わず固まる綱吉、最早言い訳できない状況である。やはり応接室は
呪われていると痛感した一瞬である。流石のディーノも一瞬固まったものの
「やー悪ぃ、お取り込み中か」
「分かってんなら、さっさと出て行って」
ヒバリは邪魔されて機嫌が悪くなってきている。ハイハイと元教え子の悪態に苦笑しつつ、ディーノは
ドアを閉めようとして、ニッコリ笑った。
「ツナ、また後でな」
「早く出て行って」
更なるヒバリの悪態に、苦笑も深くなる。じゃあな、と何事もなかったかのようにディーノはドアを閉
めた。
「どうしたの?続き」
ヒバリに促されて、綱吉は我に返った。
「あーちょっとカギかけてきます」
ヒバリから離れようとすると、むんずと腕を掴まれて引き寄せられる
「ちょ、ヒバリさん?」
「ディーノがカギをかけていったから、大丈夫」
「え・・・・人の学校のカギ作ってんのー!?」
「らしいね。だから続き」
あっさりと続きを強請ってくる。ひょっとしてヒバリも寂しかったのかもしれない、と綱吉は思った。
このあと、ヒバリは色々な意味でこの時綱吉を誘った事を激しく後悔することになる。そしてしばらく
は機嫌の悪いヒバリに、何が悪かったのかさっぱり分からず必死で食いつく綱吉の姿が見られるように
なったのだった。
10年後の世界にて
「恭弥、なんだか嬉しそうだね」
「綱吉かい、まあね。きっと今頃10年前の僕は大変なことになってるだろうなと思ってね」
「ああ、あれ。今になると分かるけど、自分の良い所をさりげなーく教えてたんだな」
「どうせなら気持ち良い方がいいじゃない?」
「まあね、俺も気持ち良かったし。でもその後暫くお預け喰らってヒドイ目にあったっけ」
にっこり、10年後の彼らは10年前の彼らに思いを馳せてお互いに笑った。
★なぜヒバリさんは機嫌が悪かったのか。私の書くヒバリさんはとにかく主導権を握りたいのです。と
ころが良すぎて(何がとは聞かないように)我を忘れてしまった。それが気に入らないわけというコン
セプトで書いてみたんですけどね。
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