綱吉くんとヒバリさん その4

       ベンディングマシーン


       衝撃の夕刻から時は順調に過ぎ、あっという間に次の日がきてしまった。
       (どうしよう、流石に十代目と顔を合わせ辛いな)
       そう思う獄寺君は正直者だ。だが十代目が待っている以上、学校に行かねばと自分を鼓舞することに必
       死になった。獄寺君には悪いが、十代目こと綱吉は別に獄寺君を待っているわけではないのだが。思い
       込みは凄い力だ。

       やはりというか、昨日の今日なので綱吉も獄寺君も微妙なギスギスフィーリング状態。山本だけが困っ
       た顔をして、2人の間をぐるぐるするだけである。


       「獄寺君、話があるんだ」
       放課後、さっさと帰ろうとしていた獄寺君に十代目から声がかかった。
       「は、はあ・・・。わかりました十代目」
       本当は逃げ出したい心境だったのだが、それをすればもはや十代目の右腕とはいえない。と再び自分を
       鼓舞してみたりする。こんな時に姉ビアンカが顔を出せば失神という救いがあったというのに、こーい
       う時に限って大人しい姉を恨んでみた。ほとんど逆恨みだ。
       「ここじゃなんだから・・・」
       と連れて行かれたのは公園だった。その入り口に設置してある自販機の前で十代目はピタリと立ち止ま
       る。
       「獄寺君、奢るよ。何が良い?」
       「い、いいえ!自分で買えます!」
       そう言いながらポケットを探すと52円しか入っていなかった。自販機のジュース類は120円である。
       困ったように笑う十代目に、なんだか涙目になりながら良く分からない心境で獄寺君も笑った。これこ
       そが日本人の必殺技「笑顔でなんとか乗り切ろう」である。しかし男子中学生が2人、自販機の前でに
       やにや笑っている情景は、はっきりいって異常だ。
       「獄寺君、遠慮しないで・・・?」
       という十代目の言葉に獄寺君はうなずいた。
       「じゃ、このコーヒーを・・・」
       「分かった」
       ガゴンという音と共に、コーヒーは落ちてきた。十代目はコーラを選んだようだった。促されて、人気
       のないベンチに座る。暫くは2人共無言で各々のジュースを飲んだ。
       「昨日の・・・・・説明をしたいんだ」
       ぽつん、と十代目は核心に触れてきた。思わず顔を上げて、十代目の顔を見る。
       「・・・・・言い訳・・ではないんですね」
       「うん、俺言い訳はしないから」
       「山本のやろーに聞きました。先に仕掛けてきたのはヒバリだって」
       「あ、山本は昨日の騒動知ってたんだ・・・。そっか・・・」
       「十代目には失礼かもしれませんが、何故それにのったんです?」
       苦笑する十代目は心なしか、大人びた笑みを浮かべていた。
       「憧れてたんだと思う」
       「ヒバリのやろーにですか!?」
       「うん。確かに怖かったし、色々噛み殺されたりしたけど・・・。あの強さに憧れていたんだ」
       確かにヒバリは強い。獄寺君でも勝てないぐらい。強い者に憧れるのは、ある意味男として当然の感情
       ではある。しかし、だからといって・・・・・。
       「だからモーションかけられた時は驚いたよ。でもそれと同時に凄く嬉しかった」
       「驚くのは分かりますが、嬉しかった・・・・?」
       「うん。憧れていたんだから、やっぱりね」
       「そうですか・・・・。十代目は・・いつも、そのあそこでヒバリと・・?」
       思わず本音が出た。
       「ち、違うよ!応接室では2回目って・・とほほ、1回目は山本に乱入されて2回目は獄寺君にバレち
        ゃって、ほんと最悪」
       「そ、そうですか」
       余計な事を訊いたと獄寺君は焦った。ああーこれ以上聞きたいよーな聞きたくないよーな!!
       「いつもはヒバリさん家だよ」
       十代目は凄い勢いで爆弾を落としていった。獄寺君が失神しなかったのは、奇跡といえよう。
       「俺ん家は獄寺君も知っての通り、チビ達がいたり母さん達に乱入されるから落ち着かないし」
       更に爆撃は続く。これは絨毯爆撃なのだろうか。
       「・・・・・・やっぱり軽蔑した?」
       本格的な失神は免れたが、軽く気が遠くに行きかけていた獄寺君は我に返った。彼の尊敬する十代目は
       心配そうな顔をして、こちらを見ている。
       (十代目にこんな顔させてしまうとは、俺は右腕失格だ!)
       何故
       良く分からない罪悪感に襲われて獄寺君はニッコリ笑い、あまつさえピースサインまで出して答えた。
       「いいえ!たとえヒバリとそーいう関係であったとしても、俺は十代目に一生ついていきます!」
       「そ・・そう」
       今度は獄寺君の勢いに、十代目が引いた。ふと十代目は立ち上がり、獄寺君に右手を差し出す。
       「?」
       「良かった、安心したよ。取りあえず分かってくれて」
       いや、多分分かって・・・・分かりたくないだけだ十代目。
       「ヒバリさんを責めないでね。俺はヒバリさんとの関係に満足しているから」

       核爆発

       獄寺君の視界にはキノコ雲が見えたよーな気がした。流石にもうヒバリに噛み付いたものの、あっさり
       とあしらわれたとは言えなかった。なんだか良く分からない気持ちのまま、獄寺君も立ち上がり握手を
       した。
       「じゃあ俺帰るから。また明日ね、獄寺君!」
       十代目は散々爆弾を落として、爽やかに去って行った。そして獄寺君は見た。十代目が走って行った先
       に黒髪が揺れていたのを。

       「前途多難だな・・・・・」
       奢ってもらったコーヒーの缶を手で弄びながら、獄寺君は呟いた。彼の受難と苦悩の日々は続く。

       ★というわけで、この話はお終いです。自分でも何書いてんだかわかんなくなりました。ちょっとでも         ツナヒバ好きな方に楽しんでいただければ良いんですが・・・。多分、これからもいくつか書くつも         りのツナヒバの原点になるはず。うん。        戻る