竜の牙


       なんでかはよく分からない。しかし004は立っていた。手に大きな袋を持って、立っていた。まず、
       この袋の中身を見てみようと思った。


       出てきたのは・・・・・・
       「?歯?」
       ばらばらと色んな形の歯が袋から飛び出してきた。人間の歯か、とそら恐ろしくなったが、どうも違う
       らしかった。牙も混じっていたからだ。こんな鋭利な牙は人間は持ってはいない。
       「竜・・・・・・・の牙か・・・・・。」
       何故、と言われれば答えられないが、その歯の正体を004は知っていた。
       「そういえば・・・・・。」
       竜の牙は耕した畑に蒔けば、スパルトイという戦士になるという。意外と好奇心の強い004は、ちょ
       っと試したくなった。見回せばおあつらえ向きに回りは耕された畑である。004はちょっと鼻歌まじ
       りで、バラバラとてきとーに蒔いて行く。それから水をやる。


       それから暫くして・・・・・。
       むくり
       土の中から、スパルトイが起き上がった。1人起き上がると、次々に他からもスパルトイが起き上がっ
       てくる。いきなり土の中から人間が起き上がる、という光景はなかなか背筋が寒くなるものであった。
       あまり良い気分ではない。しかし更に004にとって、驚くべきことがあった。
       「・・・・・ジ・ジョー!?」
       むくむくと起き上がってくるスパルトイは、何故か全員009の姿をしていたのだ。思わず立ち尽くす
       004の方を、彼らが一斉に向く。
       「アルvv」
       全員が同じタイミングで、そう叫んだ。うるうると目を輝かせ、いわゆるぶりっこポーズをして叫ぶ姿
       は実際の009が良くする行動だ。思わず後ずさる004に罪はないだろう・・・・・多分。004が
       怯んでいる間に、009「達」は尻尾があれば千切れんばかりに振っているノリでだーっと走り寄って
       来る。
       「僕のアルーvv」
       やっぱり一斉に叫ぶ。そして004が009達に押し潰されての死を覚悟した時、彼等の動きが止まっ
       た。真ん中辺にいる009が、ぼつりと呟く。
       「誰のアル・・・・だって?」
       その呟きに、視線の全然別の所にいる009が胸をはって答える。
       「決まってるさ、僕の・・・だよ。」
       「あーふざけないでよ。アルは僕のだよー?」
       別の009がそれに文句をつける。
       「何いってんだか、アルは僕だけのものだよ。」
       「違うよ、僕のだよ。」
       どーやら004本人をそっちのけで、009達は自分の004だと言って言い合いを始めてしまう。そ
       して気が付けば、殴り合いに発展していた。同じ性能の009達が、あちこちで殴り合っている。00
       4はぼーぜんとしてその様子を見ていたのだが、段々腹立たしくなってきた。自分は自分のものなのだ。
       009のものになった覚えはない。しっかり周囲からは009のラバー(笑)と思われている004では
       あったが、そんな評価は本人が知らなければ意外と問題ないかもしれない。004は叫んだ。
       「いい加減にしろ、お前らーーーーー!!!!!」


       はっと004は目を覚ました。サイボーグだというのに、大量の汗をかいている。・・・きっと冷や汗
       という汗に分類されるに決まっているであろう、汗。
       「い・・・・・嫌な夢をみた・・・・・。」
       正しく本音であろう言葉を呟き、004はふらふらと立ち上がった。ふと時計を見ると、いつもの起床
       時間より大分遅い時間を指している。多分悪夢にうなされた分、おねぼうをしてしまったのだろう。な
       んだか自分が情けなくて、右手で顔を覆い深い深い溜息をつく004(30)であった。


       「あらアルベルト、おはよう。今日は随分ゆっくりね。」
       キッチンに入ると003が声をかけてくる。それに苦笑しながら、004はおはよう、と挨拶をした。
       そのままふらふらした足取りで、リビングに向かう。リビングでは009がテレビを観ていた。が、素
       早く004の気配に気が付いたのか、振り返って笑う。
       「おはよう、アル。珍しくお寝坊なんだねv」
       そんな009の言葉を無視して、004は009の隣にぺたりと座った。そして009の顔を両手で挟
       み、ペタペタと叩く。
       「?どしたの、アル?」
       009が不思議そうに見つめると、004は溜息をついた。
       「お前は1人だけだよな。」
       「は?」
       「そうだよな、1人に決まってるよな?」
       「・・・・・もしもし、アル?」
       「うん、そうだよなぁ。」
       なにやら1人で納得している004に、009はワケが分からないと目を白黒させている。流石の00
       9も004の夢までは把握できない。まあある程度は耳元で囁いてみたりして、004の夢を操作しよ
       うとしたことはあるが。009がキョトンとしている間に、004はいやに納得した顔でうんうんと頷
       き、立ち上がった。なにやらとても嬉しそうだ。そのまま良かった良かったと呟きながら、キッチンに
       消えて行った。すれ違いざまにリビングに入ってきた003が不思議そうに004を見送る。ソファに
       座って、彼女は首を捻った。
       「どしたの、アルベルトったら。」
       「・・・・よくわかんないんだよね、言ってることも意味不明っぽいし。」
       「まあた、ジョーがなにかやったのね。」
       「今回は知らないよ。」
       いやにきっぱりと言ってくる009に、003は呆れかえった顔をした。
       「ふーん、今回は・・・・ね。」


       後日、009によって004の悪夢は暴かれたとか暴かれなかったとか。


       ★竜の歯や牙が戦士になる、という話はわりと有名ですよね。だけど彼らは気性が荒いので、すぐ仲         間同志で殺しあったらしいですが・・・。それにしても本編でも書いたんですが、分っていても土         の中から人間がムクムク起き上がってきたら怖いでしょうねぇ。なんだか死霊が蘇っている感じが         します。大量の009が本当に出てきたら、004は圧死してしまうかもしれません。良かったね         004!009は1人で!        戻る