綱吉くんとヒバリさん その1

       飛行機雲


       獄寺君が開けた扉の向こうには、アダルトな世界が広がっていた。


       獄寺君が敬愛する十代目を探していた時、誰かに応接室の方に向かっていったと聞いて、応接室の前に
       立った。ここは「かの」並盛で最強であり最凶であり更にはムカツクことに、十代目を守る雲の守護者
       たる人物が思いのままに使っている場所。普通の生徒なら近づきもしない、地獄の一丁目なのである。
       正直、獄寺君はこのヒバリなる人物が苦手。自分より圧倒的に強い存在、というのはなかなかに面白く
       ないものだ。出来れば会いたくない。のー天気な山本などは「ヒバリ」と呼び捨てにした挙句、手合わ
       せして欲しかったとか言っていたが。
       (お前にゃ、プライドってもんがねーのかよ!?)
       と自分を棚の上に上げて獄寺君は思った。困った人だ。       


       しかしいつまでもここに突っ立っているわけにもいかない。十代目たる綱吉が此処にいるかどうかもわ
       からないが、とにかく扉を開けて中を確認して十代目がいたら伝言があるから連れ出して、いなかった
       ら早々にトンズラしようと腹に決めた。

       「十代目ー、いますかぁ?」
       ノックもなしに扉を開ける。

       そして最初の光景に出くわした。


       十代目は果たして・・・そこにいた。いたのではあるが、理解することを放棄した獄寺君の脳みそには
       連れ出すということができなかった。
       「ご、ご、獄寺君!?」
       赤い顔をして、慌てふためく獄寺君の敬愛する十代目。その小柄な体の下にはソファに寝っ転がってい
       るヒバリさん(年齢不詳)同じく顔は紅潮していて、息が荒い(それは十代目もだ)なにをしていたか、だ
       なんて一目瞭然だった。
       「じゅ・・・・・十代目・・・?」
       「いやあの、これはねっ!ぎゃっ!!」
       いきなり十代目が悲鳴を上げた。何事かと思えば、そこには不機嫌そうなヒバリの顔。
       「なに、よそ見してるの」
       どうも十代目の気が自分から反れた事が気に入らないらしい。ので前のめりに苦しんでいる十代目を見
       る限り、ナニをいきなり締め付けられたとしか思えなかった。
       「だからっていきなり、締め付けなくたって・・・・・」
       「君が気をそらしちゃうのが悪い。当然だ」
       「あ痛たたたた、ちょっとタンマ」
       「やだ」
       「そう言わないで!獄寺君固まってますからー!せ、説明を!」
       「後にして」
       慌てる十代目に反してヒバリは容赦が無かった。そして固まっている獄寺君をギロリと睨む。
       「いつまでそこで見ているつもりなの?君がそういう悪趣味とは思わなかったよ」
       あんまりといえばあんまりな言い草に、獄寺君は自分を取り戻した。
       「て、てんめぇ〜十代目に、なんてことを!」
       「や、ちょっと誤解だって獄寺君!」
       「誤解?こういう場面見られてどう誤解なのさ、綱吉?」
       「や、ヒバリさんストップ!あのね獄寺君あとで説明するから、ここは俺の為にも出てってくれないか?」
       喧嘩腰になったとはいえ、十代目にお願いされると弱い。渋々ダイナマイトをどっかにしまう。と、十
       代目があからさまにほっとした顔をした。
       「分かりました十代目。この事は黙っておきます。用件があったのですがまた今度で良いです」
       「あ・・う、うん」
       「早く出て行って」
       この野郎、そう心の中で罵倒しながら獄寺君は十代目に頭を下げた。

       パタン

       獄寺君は廊下に出て早々、猛ダッシュ!あんな恐ろしい場面に出くわした挙句、恐ろしい声が聞こえて
       くるかもしれないなんて冗談じゃない!
       「おー?どーした獄寺?」
       呑気に声をかけてくる山本にも答える余裕はない。そのまま屋上に上がって空を仰ぐ。そこには大空が
       広がっていた。十代目を象徴する大空。そしてそこには太陽と、飛行機雲が広がっていた。
       「・・・・・俺、雲が嫌いになりそーだ」
       ぽつんと呟くその声は、誰に届くでもなく空と飛行機雲に消えていった。





       ★あまりの少なさに(またかよ)つい書いてみたツナヒバです。主人公が獄寺君ですが、         ツナヒバです。取りあえず続きます。獄寺君は十代目に恋愛感情は持っておりません。         持ってたら、可哀想だし。それにしてもこんな下品な作品書いたのは初めてかも(汗)        戻る