綱吉くんとヒバリさん その3
オレンジ色の猫
山本から貰ったおにぎりをもそもそ食べた後も、獄寺君は屋上でたそがれていた。敬愛する十代目との
想い出が走馬灯のよーに走っていく(死ぬんかい)
がちゃ
いきなり音がして、慌てて振りかえるとそこにいたのは・・・・・
「ヒバリ」
かの最強にして最凶の風紀委員長がそこに立っていた。思わずまじまじと彼の顔を見つめてしまう。獄
寺君の頭の中に、先ほどの大悪夢が蘇った。しかし目の前に立っている当の御仁は涼しい顔をしている。
そんなに時間が経っていないというのに、自分を見ている顔に動揺の欠片も無い。
(可愛くねぇ)
と思うものの、可愛げがあったらそれこそ恐怖っだと思いなおす。
「いつまでそこにいるつもり?」
ヒバリが先に口火をきった。いつもながらの無駄に尊大な言い方にむっとする。
「俺がいつまでいたって、良いだろう?俺の勝手だ」
思わずそう言い返すと、ヒバリはふんと鼻を鳴らした。
「そういうわけにはいかない」
「なんでだよ!?」
「だって下校時刻はとっくに過ぎているんだよ?僕は単にここに見回りに来たに過ぎない」
「ええ!?」
我に返ってあたりを見回すと、夕日がかなり傾いており辺りをオレンジ色に染めていた。
「何考えていたか知らないけど、さっさと帰ってよね。迷惑だから」
そう言ってとっとと踵を返し、扉に消えようとする。
「ま、待てよ!」
引き止めるとヒバリは迷惑そうな顔をして振り返った。
「なに?君と違って僕は忙しいんだ」
こいつは人の神経逆撫でするのに関しては天才的だ、と今更ながらに思う。
「訊きたい事がある」
「なに?」
「・・・・・・・・さっき・・・・のこと」
「さっき・・・?」
さっきという言葉を発するのに、ここまで自分は躊躇したというのに目の前の人間は不思議そうな顔を
して首を傾げる。
「さ・・・・さっき!十代目と・・・その!」
「ああ、あれね。」
「あっさりと言うな!」
「なんでさ」
「うぅ・・・・俺が訊きたいのはどうして十代目とあんなことしてたんだってことだよ!」
最後には叫んでしまった。しかし相手は動じない。
「なに、君、綱吉としたいの?」
話が全く違う方向にぶっ飛んだ。
「はっ!?何故そーなる。俺にとって十代目とは・・・・」
「じゃ、なんなのさ」
「話の腰を折るなよ!」
「じゃあ・・・僕としたいわけ?」
「いえ、まったく」
咄嗟に本音が出た。
「だろうね、僕もきみとなんてしたくないよ」
えらくあっさりと、空恐ろしい事を言ってくれるヒバリに脱力しつつある獄寺君。負けるな、君の敗北
が近づいてきておるぞ。ヒバリを睨みつけると、彼は夕日に染まってオレンジ色になっていた。
(そーいえば誰かが言ってたな、ヒバリって名前だけど猫みたいだって)
目の前のオレンジ色の猫は悪びれた風もなく、淡々とそこに立っている。
「話はそれだけ?」
「じゃ、1つだけ教えろ」
「気が向いたらね」
「なんで十代目を誘ったんだ?」
山本が言っていた、先にモーションをかけたのはヒバリ。それに答えたのが十代目。十代目は大変に素
晴らしい人ではあるが、ヒバリが興味を持つようには思えなかった。彼の興味はいつも一緒にいるリボ
ーンに集約されていたはず。獄寺君の問いに少し考えたらしいヒバリは、そのまますたすたと扉に向か
う。
「お、おいちょっと待て!」
「気が向かない。だから答えない」
「なぁにぃおぅぅ〜!!お前、リボーンさんとお近づきになりたいが為に十代目を利用したんじゃない
だろうな!?」
ピタ、とその言葉に足を止め、ヒバリは再び獄寺君を振り返った。
「そんな遠まわしなことはしないよ。面倒だからね」
「じゃ、なんで・・?」
「さあ?じゃ、僕はこれで。校内を回ったらまた此処に来るけど、様子を見ずに鍵だけかけて帰るから。」
そう言ってヒバリは今度こそ扉の向こうに消えて行った。
「・・・・・わけわかんねぇ・・・・」
頭を抱えた獄寺君ではあったが、流石に屋上で一夜を過ごす事はゴメンこうむりたい。ので彼もまるで
ヒバリの後を追うかのように、慌てて扉へ消えて行った。
★はい、ヒバリさん編でした。原作でも獄寺君はヒバリさんに噛み付いていたりするけれど、あっさり
ふられているようにみえます。いや、ふられているって変な意味じゃなくってですね?
戻る