綱吉くんとおなごヒバリさん 

       ひとでなしの恋


       それは初恋だったと思う。小さい頃「ダメツナ」と呼ばれていじめられていた時、助けてくれて遊んで
       くれた女の子。恭子、と名乗ったその子と大分長い期間遊んだものだ。急いで小学校から帰って来て公
       園に行けば、必ず待っていてくれた。

       ところが

       ある日、その子はもう遊べなくなったと綱吉に告げたのだ。泣く綱吉に嫌いになったわけじゃない、家
       の都合で仕方ないのだと困ったように言った。それから彼女は本当に姿を見せなくなったのだった。

       時間は流れ、綱吉は中学生になった。情けない事だが「ダメツナ」であることには変わりがなかったが。
       そんな中好きな子が誰と聞かれ思わず「恭子ちゃん」と答えてしまった。しまったと思ったが後の祭。
       「お前、あの笹川京子が好きなのか!ダメツナの割には見る目あるじゃん」
       と言われて更に大慌て。綱吉は笹川京子という存在すら知らなかったのだから。だが本人を見ると、本
       当に可愛い子だったのでそれでも良いかー等と考えを改めていた。

       そしてリボーンが現れてから世界が一変。何度も死にかけながらも、獄寺と山本という本当の友達をゲ
       ットできた。そんな中で応接室をアジトにしようというリボーンの提案に大いにのった獄寺と山本に連
       れられて、応接室の前に。
       固まってしまってなかなか動かない2人に疑問を持ちながらも、綱吉はうっかり中に入ってしまう。山
       本の警告を聞いた途端、なにか硬いもので殴られて床にうずくまって悶絶した。やっと痛みに慣れて周
       囲を見回すと、伸びている2人が目に入る。
       (こ、殺される!)
       心中で叫んで前を見るとそこには1人の少年の姿。誰だかは知らないが、獄寺と山本を伸ばしたのはこ
       の少年で間違いないはずだ。綱吉は本気で死ぬ覚悟を決めた。

       ところが攻撃はこなかった。それどころか少年はじっ・・と綱吉を見つめているだけ。居心地の悪さを
       覚えて綱吉は困惑した表情を向ける。少年はふぅと溜息をついた。
       「沢田綱吉、僕の事覚えてないのかい?」
       「ええ!?」
       そう言われてもまったく心当たりがない。と、その時脳裏に閃くものがあった。これも「超直感」とい
       うやつなのだろうか。性別は違うが試しにその面影を重ねてみる。すると、ぴったりと合致した。
       「き・・・き・・・恭子ちゃん!?」
       ひっくり返った声を出した彼を、少年は呆れ返った顔をして綱吉を見る。
       「やっと思い出したのかい?ニブイね相変らず」
       「だ、だって・・・恭子ちゃんって男だったのーーっ!?」
       淡い初恋がガラガラと音をたてて崩れていく。なんてこった、なんという悲劇!悲しみにくれる綱吉の
       手首をいつの間にか近くまで来ていた恭子ちゃんが、むんずと握る。そのままその手を左胸に当てた。

       むに

       「ぎゃーーーーーーす!!」
       な、なにか柔らかい何かがこの手の平に当たっているー!振り解こうとしても、力強く握られた手首は
       ビクともしなかった。
       「わかった?」
       「あわわわ・・・離して!?」
       「僕が恭子だって分かったら、離してあげる」
       「わ、分かりました、分かりましたから!2人に見られたら俺セクハラ野郎になってしまう」
       「何言ってんの、僕の事を男と勘違いするからでしょ」
       幾分むっとしたかのような表情をして、やっと手首を開放してくれる。
       「それにあの2人は暫く起きないよ、そういう攻撃をしたからね」
       「あ・・・そうっすか・・・・。じゃなくて!なんで男の格好してるの?」
       「咬み殺しやすいからさ」
       「ハイ?」
       なんだ今、凄く恐ろしい事をさらっと言わなかったかこの人?
       「僕が女だと手加減したり、違う方向で鼻息荒くするからさ。男なら純粋にこっちを殺す気になれるで
        しょ?そしたら、こっちも楽しく咬み殺せるし」
       「いやはや・・・・ハイ、ソウデスネ」
       ジロリ、と睨みつけられて綱吉は縮こまる。とても初恋の人との劇的な再会とは思えない、この雰囲気。
       だが相手は至極ご機嫌だ。
       「今はね、雲雀恭弥って名乗ってる。君も他の人の前ではそう呼んでね」
       「恭子ちゃんが女って知ってるのは、誰なの」
       「当然だけど先生、あとは僕の部下の草壁ぐらいだ。ま、2人っきりになった時以外は呼び方変えて」
       「あ、う、うん。ええとヒバリさん・・・で良いかな」
       「うん、いいよ」
       「って、2人っきりってなんでそういう事になっちゃうの?」
       「決まってるじゃない、これから君は毎日のよーにここに来る事になるんだから」
       「なぜえ!?」
       「なに、綱吉のクセに僕と一緒にいるの嫌なのかい?」
       ちゃき
       なにか物騒なものを出して笑う恭子・・・もといヒバリに綱吉は全力で首を横に振った。
       「じゃ、早速今日の放課後、此処に来てね。そろそろ昼休みも終わりだから、さっさとその2人連れて
        帰って」
       もはや綱吉に決定権もなにもない。
       「ハイ・・・・・コレカラヨロシクオネガイシマス」
       波乱万丈な人生が始まったのであった。


       ★女性化ネタ、実は苦手です。しかしヒバリさんが女だったら恭子となるのかしらとか、京子ちゃんと         被って皆が誤解するっていうネタを思いついたので書きました。後悔はしていない。あ、これ続きは         ありません。あしからず。        戻る