綱吉くんとヒバリさん その2

       コンビニおにぎり

       獄寺君が大空を見て黄昏ていたとき、ひょこと顔を覗かせたのは山本だった。
       「よー、どうしたよ獄寺?」
       ニコニコと人懐っこい笑顔のまま、こちらを見ている。この山本も気に入らない人間の一人だ。十代目
       がかなりの頻度で頼りにして、しかもリボーンまで山本に対して好意的だ。いつも乗る肩は山本だし、
       山本の為に特訓をしてみたり、意外と誉めてばかり。リボーンがそういう態度だからこそ、十代目も山
       本を頼りにするのだ。自称、十代目の右腕を名乗っている自分にとって面白いはずがない。しかしその
       天然ボケには一生叶わない気がするのは良いことなのだろうか?と自問自答もしてみたりして(笑)
       「うるせーよ、お前部活はどうした?」
       「ああ、これからなんだけどさ。お前が猛ダッシュして廊下走って行ったから、どーしたかなと思って。」
       「なんでもねーよ!」
       「あ、そういやツナ見つかったのか?」
       獄寺君は思わず嫌そうに顔ををゆがめてしまった。その顔を見て普段の天然ボケもどこへやら、ちょっ
       と考える仕草をしてからきょろきょろと周りを見回す。
       「?」
       「あのさ、獄寺・・・・・」
       「な、なんだよ?」
       「見たのか?」
       ドキリと胸がなった。甘さなどちっとも含まない動悸。これは救心のお世話になるべきなのだろうか?
       「なにをだよ・・・?」
       声に震えが走ったのはみっともないが、とにかくごまかそうと必死だった。脳裏に十代目とヒバリとの
       姿が蘇る。思わず心臓を押さえた。こんな苦痛、姉ビアンキを見た時以外に味わうなんて思ってもみな
       かった。が、こんな時に限って山本は鋭かった。
       「見たんだな・・・」
       「だから何を?」
       「ツナ、ヒバリと一緒だったろ?あの二人、そーいう仲らしーからなー」

       爆弾宣言。

       「何故、爽やかな笑顔全開で言えるんだ?ってお前知ってるのか?」
       思わず山本の胸倉を掴む。はっはっは、ちょっと苦しいぞ?と呑気なコメントが寄せられた。
       「俺もさー用事があって応接室にいったら、佳境でさ」
       何とは訊く勇気は獄寺君にはなかった。
       「んで、ヒバリに追い出されたんだよなー。懐かし」
       懐かしくっていいのか、お前!?天然ボケもそこまでくると感動ものだ。と獄寺君は胸倉つかんだまま
       固まった。
       「んーあとでツナに話を聞いたらさ、モーションかけてきたのはヒバリの方らしいのなー」
       「じ、十代目になんという粗相をっっ!!」
       「でもそれにのっかったのはツナだぞ?」
       「ううう・・・・・」
       あんまりな事の展開に、獄寺君はパニックを起こしかけていた。同じ雨の守護者である山本は、そんな
       獄寺君をやっぱり天然ボケ満載の笑顔で見守っている。
       「俺さ、十代目はあの笹川の妹が好きなんだとばかり・・・・」
       端から見てても分かるぐらい、笹川京子に向けるツナのいじらしい恋心を思い出した。それがモーショ
       ンかけられたからって、どこをどー間違えばヒバリとアダルトな世界に飛んでいけるのかさっぱり分か
       らない。
       「ま、それは本人に訊いてくれよ。」
       うずくまって頭を抱える獄寺君の手を取って、山本は何か握らせた。
       「おにぎり・・・?」
       「おう、コンビニのな。俺今日食べないからやるよ。元気だせよ獄寺。お前が大人しいとこっちも調子
        狂うからさ」
       「ほっとけよ、くっそ」
       「あのな」
       真顔で山本は獄寺君の顔を覗き込んだ。
       「説明に来るツナをあんまり責めてやるなよ?俺も初めは驚いたけど、本人達がいいならま、いっかっ
        て思うことにしてっから」
       「俺が十代目を責めるはずねーだろ!?責めるならヒバリの方だ」
       「そりゃ構わないが、ぜってー返り討ちにあうからな?」
       「うっせ」
       完全に拗ねモードに入った獄寺君をやれやれといった顔で山本は見つめた。
       「じゃ、俺部活あっから。また明日なー」
       「山本」
       「あー?」
       「コレ、どうも」
       「いやいや、食べて落ち着いてくれよなー?」
       そう言い残して、山本は去って行った。




       ★獄寺君と山本のコンビが結構好きです。これも恋愛感情なしの方向で。友情でお願い         しますね。ツナヒバだっつーのに、本人達出てこないよ。山本達観しすぎという突っ         込みは全力でかわす所存でございます。        戻る