かみなり


       その日は午前中は良い天気だった。ところが午後になってから、激しい雨が降り出した。毎度おなじみ
       のギルモア邸で、久々にメンバーがほぼ揃っている。午後3時、いそいそとおやつの用意をしている0
       03をメンバーが手伝って目出度くお茶となった。
       ズズッと008が、緑茶を啜る。
       「上手そうに飲むよな、ピュンマ。」
       コーヒー片手に感心したように002が声を掛ける。008は湯飲みから口を離して、ニコリと笑った。
       「まあね、結構この渋みっていうのが気に入ってるんだよね。」
       「渋みなら紅茶だってあるだろう?」
       「全然違う渋みだよ。ジェット、ひょっとして君緑茶飲んだことないのか?」
       「失礼な、あるぞ。」
       踏ん反り返って答える002に、007がくつくつと笑って話し出した。
       「確かにね。だけど最初メロンソーダと勘違いしてガボゥッと飲んで熱ちい〜と叫んだ挙句、なんだよ
        甘くねーじゃん!って文句言ってたよな。」
       002の顔がかああと赤くなり、007に掴みかかろうとして005に止められる。
       「止めろジェット。八つ当たりは良くないぞ。」
       貫禄たっぷりに言われてしまえば、002もあまり強く出れない。ぶつぶつと文句を言いながら、元の
       ソファに座り直した。
       「そっか、流石コーラの国の人だな。」
       何故か感心したように008が呟く。002は意外と甘党だ。特にコーラは大好きで、1日に3本は飲
       む。昔はもっと良く飲んでいたのだが、003があまりコーラが好きではないらしく厳しく制限されて
       いるのであった。それでも健気に守っているところは、惚れた弱みというべきなのだろうか。


       バタン
       「ただいま・・・・・。」
       「ただいま〜♪」
       同じようにずぶ濡れて2人は、正反対のノリで帰宅を告げた。
       「よっお帰り。」
       自分から話題が逸れると思ったのか、002が直に声をかける。
       「おや、傘を持ってなかったのかい?御両人。」
       007が尋ねると銀髪の青年がちょっと不機嫌そうに、こげ茶の髪の少年は笑顔のまま頷いた。
       「大体、お前が傘なんか必要ないって力説するから!」
       「そう思ったんだもん。そりゃ少しは外れることもあるさvそれに風邪はひかないじゃんか。」
       「ええい、開き直るな。反省せんか。」
       「あら、どうしたのよ2人共。びしょ濡れじゃない!ああ、床まで!!」
       席を外していた003がヒョコと帰ってきて、大声で言う。確かに2人の立っている場所は、濡れてい
       た。流石にバツの悪い顔をした2人に、ちょっと待っててと声をかけて003は姿を消した。と・・・。

       ゴロゴロゴロ・・・・・


       「カミナリ・・・・・。」
       009はポツンと呟く。
       「思い出すなあ、カミナリといえば0010との戦いを。名前を訊いてるのに”0010”と名乗った
        結構間抜けな奴だったよな。そりゃナンバーだっつーの。」
       002がしみじみと言う。
       「ああ、えらく威勢のいい啖呵をきって飛び出して行った奴の為に、作戦もへったくれもなく出ていか
        ざるをえなかった戦いの相手な。」
       004のしれっとした台詞に、002がうっと言って胸を押さえた。
       「一体ドコで着替えたんだろうっていう謎が残ったけどね♪」
       と009が楽しげに言う。002の体が前に傾いた。
       「でもさ、アルの愛の目で合図があったからいいや。」
       「愛を込めた覚えはないが。」
       「感じたもん、愛を。だから愛の目配せv」
       「・・・・・・・お前の言う愛ってやつの正体が知りたいよーな知りたくないよーな。」
       「知って知ってv今ここでv」
       びしょ濡れのまんま、009は004に抱きついた。
       ガチャ
       ドアが開いて、003がタオルを持って現れた。そのままトコトコと引っ付く009を剥がそうと大騒
       ぎしている004に近づく。
       「はい、そこまでよ。これで拭いてからシャワー浴びてらっしゃいな。」
       有難う、と言って2人がタオルを受け取る。009は004にしがみ付いたままだったが、流石に拭き
       にくいらしく渋々という感じで離れる。その間に002の顔色は大変悪くなっていった。他のメンバー
       がフォローに入れば良かったのだろうが、生憎事実だった為に誰もフォローができなかったのであった。
       別に意味なく002を見ていたわけだが、002にしてみれば居心地が悪いことは否めない。意外に繊
       細なトコロがある002は、キリキリと胃どころか心臓まで穴が開きそうな勢いだった。
       「ジェット、どうしたの?顔色悪いわよ?」
       「い、いいや・・・・なんでもない・・・。」
       「そう?本当に悪いわよ?明日、お買い物に付き合って貰おうと思ってたのに・・・。」
       ドサッ
       003の他意のない言葉が決定打になったのか、002はとうとうソファから転げ落ちてしまった。
       「お、おい。本気でダメなのか?」
       それまでのほほんと状況を楽しんでいた007が、慌てたように立ち上がる。
       「うわっ白目剥いてる!?」
       「ジェット、しっかりしてよー!」
       卒倒した002を囲む大騒ぎを尻目に、事の発端を作った2人はとっとと部屋を出て行ってしまった。
       とは言っても自分達が原因を作ったとは思っていないに違いない。


       「0010の時ってさ、アルは僕を守る為に戦ってくれたんだよね。」
       「いや、あの時はこんなに腹黒だとは思ってなかったしなぁ。それにジョーの為だけじゃないし。」
       「僕はアルを守る為に戦ったんだから(第一戦)、当然僕を守る為に戦ってくれたんだよね(第二戦)。」
       「いや・・・・別に・・・・。」
       そこまで言ってから、004ははっとして隣の009を見る。009はニコニコ笑ってはいたものの、
       目が怪しい光を放っていた。タイミング良く、カミナリがビシャーン!と鳴って009の顔を照らす。
       まるで蛇を前にした蛙のように、004はギクシャクと首を縦に振った。
       「おっしゃる通りで。」
       途端に009の目から怪しい光が消えた。のこのこと廊下を歩きながら、004はホッとした。
       「でもさーアルを感電させて身動きを取れなくさせるなんて、身震いするほどうらやま・・・いやいや
        怒ったよなあ。」
       「・・・・・ちょっと待て。うらやま、とはなんだ?」
       「気にしないでよ。うらやま・・・・裏山!」
       「わけわからん、お前はもっと国語を勉強しろ。」
       「会話ができれば充分でしょ?」
       いけしゃあしゃあと言ってのける009に勝てないのは分かっている。004もそこまで馬鹿じゃない。
       黙ったまま、シャワー室に入っていく。009もその後から、スキップをしながら入って行った。

       なにやらシャワー室で起こったらしいが、カミナリの音と光で誰にも分からなかったという。


       ★久し振りの更新でございます。カミナリといえば009の世界では0010。0010といえば00         9の世界でいえばカミナリ。そして0010といえば002の飛び出しですね。意外と002はその         事を気にしているような気がします。本当に第一戦では002のおかげで破れた面があるので(笑)0         04と009のアイコンタクトで興奮したのは私だけではない・・・はず・・・。ああ、この頃は結         構94の美味しい場面が多かったのになー。そのまま行ってくれれば、きっと94はもっと増えてい         たのになー。        戻る