サイレン



       地球にフィスス・ルナを落とそうとするシャアと、阻止しようとするアムロ率いるロンド・ベルは宇宙
       で睨み合っていた。
       「人類全体をニュータイプにするには、地球を死の星にして宇宙に全ての人間を上げなければならない!」
       シャアが偉そうに言う。どんな子供の理論だと思うのは罪だろうか。
       「やかましい!」
       とうとうアムロがキレた。
       「大体カミーユ1人満足に育てられなかったくせに、なにが人類全体の進化だよ!」
       痛い所を突かれたらしいシャアが、うっとつまる。
       「な、なにを言い出すんだ・・・。それとこれとでは話が違う・・・・・。」
       「違わない!!確かにカミーユは、褒められた人格ではない。生意気だし、口答えするし、すぐに暴力
        をふるうし!!」
       最近、イライラがたまっていたらしいアムロは一気に言い募った。
       「そ、そんなことはないぞ!そこまでひどくはない。あの時期にはよくある、癇癪みたいなものだ!」
       カミーユのパパ役をやっていたので、ついつい庇ってしまう悲しいシャアだった。
       「こっちが止めても聞かないし、カツをナチャラルに煽ってくれるし、女癖悪いし!!」
       「女癖が悪いのは君もだろう!!」
       敵味方で各々1番有名なニュータイプは、分かり合えないまま罵り合っている。ジュドー、キンケドゥ
       プル&プルツーなどはぼーぜんとして、我らが司令官を見つめていた。

       その時、ジュドーの頭の中にサイレンが鳴り響いた。ファンファンファン、という音と共に赤くてくる
       くる回る光が点滅する。嫌な予感がしてカミーユのZガンダムを見て、ジュドーは固まった。
       グオオオオオオオオオオォォォォォォォ
       Zガンダムから凄まじいオーラが発せられている。と同時に信じられないくらいのプレッシャーが彼ら
       を襲う。まずい、このままではなにかそら恐ろしいことが!!!とジュドーは必死で叫んだ。
       「ちょ、ちょっと待ってカミーユさん!俺がカミーユさんが、いい人だってことは知ってるから!そう
        だよ俺が敵の問いかけに答えられなかった時”君のその怒りは戦う理由になる!”って言ってくれた
        じゃないか!ハマーンとの最後の対決に地球から力を貸してくれたじゃないか!なあ、プル!カミー
        ユさんって優しいよな!」
       プルはあまりのプレッシャーにコクピットの中で頭を抱えて悶絶していたが、突然話を振られて驚く。
       しかしさすがニュータイプ!すぐにジュドーの心理を理解する。余談だが唯一ニュータイプではないガ
       ンダムパイロットのコウは、1人無事で目を丸くしながらアムロとシャアの怒鳴り合いを見ていた。
       「そうよ、カミーユはあたしがピンチになった時、あたしを導いてくれたじゃない!そしてあたしの所
        に皆を呼んでくれた。あたしカミーユのおかげで助かったんだよ?嬉しかったよ!」
       シュウウゥゥゥゥゥ
       Zガンダムからのプレッシャーが、消えていく。良かったとほっとしたジュドーではあったのだが・・・。
       「1人で勝手に煮詰まっていきなり相手を殴ったり、あれじゃ単なるヒステリー野郎だぞ!捻くれ度は
       本当に高くって、迷惑な奴だが!!」
       アムロはその努力を、綺麗に台無しにしてくれた。
       カシーン
       見ればZガンダムはウェイブライダーに変形していた。そして間髪入れずに「魂(攻撃力2.5倍)」が
       かかる。Zガンダム最強武器に、魂・・・・・ジュドーはカミーユが、アムロに突撃するのではないか
       と危惧した。
       が
       「貴方はシャア・アズナブルを名乗って、何やってんです!?」
       と叫んでカミーユが突撃して行ったのは、何故か必死で擁護しているシャアであった。
       「?どうしたんだ、カミーユは・・・・?」
       「アムロ大尉、気がつかないんですか?人の努力を台無しにして。」
       「・・・・・・何が?」
       「・・・・・・・・・・・・・」
       「まあ良いや、俺も攻撃しておこうっと。」
       ジュドーは脱力しながら、答える。
       「はあ、俺もハイメガキャノン・フルパワーを魂付で放っときます。」
       「うん、そうしてくれ。ウラキ少尉!」
       「はい!」
       「俺はこれからシャアにフィン・ファンネルに魂付で攻撃するから、援護攻撃頼むぞ!」
       「了解しました。」
       そして・・・・・
       「フィン・ファンネル!敵は前方だ!!」(アムロ)
       「負けられないんだ!!」(コウ)
       「皆の力がガンダムにっ!!」(ジュドー)


       シャアは驚いた。なにしろ気がついたら、ウェブライダーが突撃してくるのである。青ざめた顔をした
       死者達が、その周りにしがみ付いている。さらにその後ろにパプテマス・シロッコが白いローブらしき
       ものを着て口に赤いバラを銜え、なにやら変な踊りを踊っているのが見えたのはシャアのニュータイプ
       能力の賜物だろうか。
       ドカーン!
       ウェブライダーは景気良くシャアの乗るサザビーに体当たりをして、後ろに飛んでいった。
       「こ、こらカミーユ!なぜ私を攻撃する!?」
       しかしその時シャアの瞳に写ったのは、フィンファンネル以下略の攻撃だった。
       ズバーン!
       ズカーン!
       ドーーーーン!
       全ての攻撃を受けても、サザビーは何とか無事だった。
       「な、なんとか・・・・無事か・・・・・。」
       目を回しながら、呟くシャア。
       キィィィィィィン
       音に振り向けば、ウェイブライダーが帰ってきている。しかもまた魂付で。やっぱりシロッコが後ろで
       一心不乱に踊っている。
       「ギャー、やめんかカミーユ!って君の悪口を言っていたのは、アムロだろう!!」
       シャアの弁明もむなしく、サザビーは爆発した・・・・・。


       ZZを降りたジュドーが見たものは、アムロと和やかに談笑するカミーユだった。
       「あ、ウラキ少尉。ちょっと良いかい?」
       「はい、なんでしょう?」
       アムロがコウに声をかけたので、カミーユはそのままスタスタとジュドーの元にやってくる。
       「カミーユさん、ちょっと訊きたいんだけど・・・・。」
       「ん、ジュドーか。なんだ?」
       「あのさあ、さっきはカミーユさんの・・・その・・・悪口言ってたの、アムロ大尉の方だろ?なんで
        シャアに向かっていったわけ?」
       ジュドーに言われて、カミーユはああ、そのことかと呟いた。
       「味方を攻撃するわけには、いかないだろ?」
       ニッコリ笑って言うカミーユに、ジュドーは眩暈を起こした。つまりは、八つ当たりだったわけだ。ニ
       ュータイプって本当に分かり合えるもんなのか?とジュドーは首を傾げる。チラと元凶を見ると、コウ
       に何やら書類を見せて、話し込んでいた。



       辛くもサザビーから脱出したシャアではあったが、全身包帯だらけという痛ましい姿になっていた。そ
       して、是が非でもロンド・ベルに仕返しをしてやる!と決意していた。



 
 

       ★ベースは「第2次スーパーロボット大戦α」です。クワトロ大尉として参戦していることの多いシャ         アが「逆襲のシャア」ベースで出演しておりました。シャアとアムロの問答は、アムロに軍配を上げ         ますですよ。シャア、アンタ本当に34歳かその思考と爆笑しました。このゲームでは、カミーユも         ジュドーもキンケドゥもついでにコウもいるので、会話させると楽しいです。カミーユも実際、上の         台詞を言いますからね、飛田さんボイスで。ただしシャアとカミーユの会話は、まるで親子です。カ         ミーユに問い詰められると、黙ってしまったり(アムロ相手だと黙らない)。0083関連でもガトー         とコウの会話は、親子です。ガトーが「お前はもう、半人前の仕官ではないんだな」とコメントして         たり・・・。本当に我が子の成長を喜ぶパパのようだ。ガトーまだ25だっつーのに・・・・・。         コウとアムロは実際、同い年なのですがここでは10歳も違います。でも同い年だから、仲良かった         ら良いなあと思っている私です(笑)        戻る