墓碑銘


       004は少し淡い表情で、そこに立っていた。日々の生活に追われ、なかなかここに来られないことを
       詫びる。多分、あの人は笑って頷くだけなのだろうが。
       「・・・・・・・・・・ヒルダ。」
       小さく呟く。小さな墓地の片隅に、ひっそりと立つ小さな墓碑。そこに書かれている名前は、自分の全
       てといっても過言ではない人のもの。そして墓碑の前には小さな花束。なんとはなしだが、大きくて豪
       華な花束は似合わない気がした。一つの色花に、かすみ草を足した質素な花束。



       突然004は左から冗談ではない衝撃を受けて、なす術もなく右にもんどりうって倒れた。ザザーッと
       ご丁寧にスライディングまでしていく。停止してから、暫くピクリともしなかった004が突然ガバア
       と跳ね起きた。
       「ジョー!!!貴様、神聖なる墓場でなにするんだ!!!」
       ご指名された人物は嬉しそうに004の腰をむんずと抱きしめたまま、004を見る。僕らの正義の味
       方、009である。正義といっても009にとってはである為、本当に正しいかなんて分からない。
       「だあってぇ〜アル、帰って来ないんだもん。行き倒れてたら大変と思って、探してたからさ。つい見
        つけて嬉しくなっちゃったんだもん。」
       猫なで声とはこういう声なんだな、と密かに思いつつ004は009を見る。
       「さっき別れてから、5分と経っとらんぞ。それに墓参りに行くって言っといただろ!?」
       「そうだっけか。」
       「ええい、いけしゃあしゃあと!いいからどけ!重いし、ヒルダの墓前でなんつーことするんだよ。」
       そう言われて、ぴょこと009は案外素直にどいた。よっこらしょなどと声を出しながら起き上がる0
       004を横目にしながら、いそいそとヒルダの墓碑の前に行く。
       「こんにちわ、ヒルダさん。アル寝取ったジョーです。」
       パカーーーン!!
       004渾身の一撃が、珍しく009の後頭部にヒットした。
       「いたいなーー!!脳細胞死んだら、どーしてくれんのさ。」
       「何言ってんだ、この罰当たりがっっ!!ヒルダの墓前でよくも非健康的なこと言ってくれたな。」
       「いまさらでしょ〜。」
       しれっと言い返す009。そりゃまさにその通りなのだが。
       「貴様、そこのパーラーでスパゲティアイスを食していたはずなのに、あの量をもう食ったのか。」
       009の大好物、ドイツ名物スパゲティアイス。スパゲティの状態のアイスに、ソース等をかけたデザ
       ートである。しかしウスターソースはかけてはならない。ミートソースも。
       「ううん、まだ食べてる最中だよ。」
       済ました顔をして009が指差すその先には・・・・・・
       「ああっ!誰の墓かわからんが、バチは当ててくれるなーーってガラスの容器ごと!?」
       5個ほど遠くの墓標にちょ〜んと乗っているのは、まさしく009が食していたスパゲティアイス容器
       ごとだった。
       「残すのもったいないからさ、持ってきちゃったv」
       「きちゃったじゃないだろう?代金はちゃんと払ったのか?」
       「あのね〜人を食い逃げ常習犯のよーなこと言わないでくれる?ちゃんと払ったよ。」
       「そ、そうか。でも容器は返して来いよ。」
       「うん。日本円でね。」
       「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
       嫌な予感は人間、結構当るものだ。004の目の前には、笑顔を浮かべつつも額に怒りマークをつけた
       パーラーの従業員が立っていた。


       合掌





       ★久しぶりの009!久しぶりの94!おめでとう私!有難う私!愛・地球博には愛じゃなくて行列が         溢れているぞ!久々に書きました・・・本当申し訳ありません。思えば書き溜めた小説を初期化で無         くしてから、書く気がモリモリ抜けていきました。別ジャンルですが、ちょっと書きたいものもある         し、ちょっと頑張ってみようかと思っています。        戻る