01, 見上げた空は  

弟がふと窓を通して空を見上げる。
「あ、雨かあ・・・」
嬉しそうにも、沈んだようにも聞こえる微妙な声を出す。
「思い出すなあ・・・・・。昔のこと。」
別にそんな昔を懐かしむ年頃ではないはずなのだが、波乱万丈・疾風怒濤・焼肉定食(最後違う)の人生
を歩んできてしまった弟にとっては、仕方のないことかもしれない。雨はぽつぽつと窓を弱く叩き、そ
の弱さが更に弟を懐古心を刺激したらしい。


まだまだ母がヒトの”母”としていた頃。よくある話ではあるが、学校の帰りに雨になった。もちろん
兄弟共母に言われて(幼馴染はばっちゃんに言われて)お利口さんに傘を持ってきてはいた。そして和気
藹々と3人で帰っていたのであるが、何が原因だったか忘れたがとにかく兄弟は幼馴染の傘にあいあい
傘する為に、大喧嘩になった。当時はこそばゆい話ではあるが、幼馴染の事が大好きで兄弟共に彼女に
愛の告白をしていたものだ(フラれたが)。幼馴染は呆れ果てて飄々と歩き、兄弟はわあわあ口げんかし
てその後を追って歩く。ついに業を煮やした幼馴染に
「もう!じゃんけんで勝った方を入れてあげるから、勝負なさい!」
と叫ばれたのだった。当然やる気満々の兄弟。
「いいか、アル。正々堂々と勝負だ!!」
ただのじゃんけんなのに、すごい気合の兄。
「負けないよ、兄さん!」
珍しく弟も熱血モード。
「じゃ〜〜んけん。」
「ぽん!」
勝負は・・・・・・・
「やた!俺の勝ち!!」
兄の勝利で終わった。そそくさと幼馴染の傘に入る、嬉しそうな兄であった。弟はそんな兄をふくれっ
面で見ていた。
「へへ〜ん、良いだろアル。」
憎たらしいまでに余裕の笑みを見せる兄に、弟はイライラしてくる。兄の横で幼馴染がちょっと、そん
なにくっつかないでよ!と兄をどついている。じゃんけんで負けたのも悔しいし、兄の得意満面が腹立
たしい。弟は無表情になり、くるりと2人に背を向けた。
「おい、アル?」
どこかおろおろしてる兄の声が聞こえてくる。弟は振り返らずに、言い放った。
「ボク、先に帰ってるよ。兄さんはウィンリィとゆっくり帰っておいでね。」
そのままスタスタと早足で歩き出す。兄と幼馴染が自分を呼ぶ声がしたが、意地になって振り返らなか
った。いらいら、むかむかしながら暫く歩いていると突然背中にとんでもない衝撃が加わった。驚いて
振り返ると、そこにはさっきまで幼馴染の横で勝ち誇っていた兄の笑顔。
「な・・・・・。」
驚いている弟に、兄はニカッと歯を見せていたずらっ子のように笑った。
「やっぱ俺、アルと一緒に帰る方が楽しいや♪」
その言葉は正直に嬉しかったが、やはり素直に表現するのも面白くない。
「あ、そ。あとでウィンリィに謝っておいてね。」
とつっけんどうに言うのが精一杯だった。



「てなことがあったなあ。」
弟は相変わらず窓から見える空を見上げて、しみじみと呟いた。
と・・・・
「おい、アル。」
「なあに、兄さん。」
「そんな甘酸っぱい昔を回想するのは全然かまわんのだが、兄ちゃんに四の字固めかましながらという
 のは納得いかんぞ。」
「だって、兄さんボクのふんどしに顔をスリスリした挙句にどさくさにまぎれてお尻(鎧だが)に顔を突
 っ込むんだもん。普通の反応だよ。」
床にすっ転がって呻いている兄に、弟は静かに答えた。


見上げた空。
今は、快晴。



★空は見上げなければ絶対に見えない。だから空を見上げるわけですが、晴れにするか雨にするかで微  妙にお話の雰囲気が変わる気がするのは気のせいですか?というわけで、湿っぽくなる雨を無駄に明  るくすることに大成功(自己満足)。さっき気がついたのですが、雨だったらお題ありましたねー。  ・・・・・・・・・・見ないフリしよっと(笑) 戻る