04, 離れたくない  


これは一体どういう状況なのだろうか、と弟は思った。兄弟仲良くスカーによって壊されてしまい、故
郷リゼンブールへと帰る途中に弟はぶらり途中下車な目にあった。それを知った兄が血相を変えて電車
から飛び降りようとしたり、少佐に八つ当たりをしたり、大変な精神状態だったのは少佐から聞いた。
でもこれは何なのだろう?
やっぱり箱に入れられて、羊達といい旅夢気分状態。それはいい・・・・というか諦めた。兄が結構暴
れたらしいが、なにやら筋肉の迫力に膝を屈していたらしい。そして今、弟の前に椅子の上に何故か正
座をした兄がじっと弟を凝視しているのだった。ちょっと弟を見下ろせる高さなのが、兄にとってはポ
イントなのだろう。実は最初、兄は床に正座していたのだが群れたがる羊の習性により、見事に羊の海
に沈み込んだ挙句、足を踏んづけられたらしい。羊は重いから、踏まれると痛いのだった。
「兄さん、客席の方に行ったら?ちゃんとお金払っているわけなんだしさ。」
「いんや、アルがまた強制的に途中下車させられたら大変だから此処にいる。」
兄の決意は固いようだった。
「あのさ、アル。ちょっと訊きたいんだけど・・・。」
「ん?何?」
「お前さ、なんで箱の中にいなかったわけ?片足だから歩けないだろ。」
「ああそのこと。兄さん、箱の中にお金入っていたの気がついた?」
「うん・・・・・って買春!?」
「春はいらないよ、春は。」
弟はギロリと兄をにらめ付けた。なんつーことを言い出すんだ、この兄は。兄はちょっと小さくなって
すんません、と小声で謝った。
「それで・・・・・?」
「うん、僕をただの鎧だと思ったらしくてさ、そのまま僕を着ちゃって・・・。」
「なんですと!?」
いきなり大声を出す兄に、弟も羊もびびった。しかし兄には見えないらしい。何故か下を向き、手は握
りこぶし。良く見るとぷるぷるとこぶしが震えている。
「兄さん?どーしたのさ、一体。」
弟にはさっぱり兄が動揺する理由が分からない。呼びかけに答えるよーに、兄はゆらり・・と弟に顔を
向けた。目が怖い。
「アルを着るってことは、アルの中に入るってことだよな。」
「?え、あ、うん。そーなるの・・・かな?」
「お前、未来に中に入られて気持ち悪いーって騒いでなかったっけ?」
「未来の話なんか、分かんないよ。つかいつ頃の未来なわけ?」
「ええと、多分囚われたアルの回だと思うから・・・何話後だったか。ひーふーみー。」
「いいよ、数えなくて。なんか知りたくもないし。」
「そうか、なら話の流れをまったく無視して言うけど、気持ち悪くなかったんだ?」
「えーと・・・うん、まあ、そうだね。」
やっぱりさっぱり兄の言う事は理解できない。なんなのだ、この人。弟の葛藤もなんのその、兄はやお
ら椅子から降りて、弟の入っている箱に手をかけた。弟はぎょっとなった。
「ち、ちょっとなんなの兄さん?」
「良いこと考えたからさ。」
「・・・・・どんな?」
「うん、俺がアルを着て客席に座ってりゃ良いなあと思ってさ。」
なにやらウキウキとご機嫌な兄。
「嫌だ。」
即答。
「何でだよ!?赤の他人は中に入れたくせに、兄ちゃんがダメなんて人権侵害だ!!」
「ええーっ!それ人権侵害なの?っていうか、それ僕のセリフじゃない?」
「兄ちゃん、コート赤だぞ!?」
「赤の意味が根本的に違ってるーーー!!!」
そして弟に近づこうとしている兄と、させまいと兄の頭を残った左手で必死に押さえる弟。この時、貨
物列車はサザエ一家に突撃された家のように、激しく変形していたという。大丈夫か、羊。


「エルリック兄弟、そろそろリゼンブールに到着するぞ。・・・・・・ん?」
少佐が見たのは、群れたがる羊の上に大きなたんこぶを作ってうつ伏せに倒れている最年少国家錬金術
師と、箱の中でなにやらフラストレーションが溜まったらしい鎧の弟だった。
「おお、エドワード=エルリック。寝ていないで、早く荷物を持て。」
誰よりもマイペースな少佐は、兄の首根っこをひっつかんでのっしのっしと退場していった。


★初めてのハガレン話です。う〜ん、兄さん変だね!(自分で書いた癖に)これこそエドアルとは言えま  せんが。甘甘は恥ずかしくて私が悶絶する為、書けたためしがありません。それにしても弟は確か2  、3M近くあったはず。それを兄さんとあんまり身長変わらないっぽい少年が着ていたわけですが、  どうなっているんだろう??謎だ。 戻る