06, おやすみなさい


「アル、どこに行くんだ?」
夜いそいそと出かけようとする弟に、兄は疑問を投げかけた。鎧の弟は何を今更・・・という感じで振
り返る。
「ん?ちょっと散歩に行って来ようかと思うんだけど・・・・。」
「じゃ、俺も行く。」
そういうと兄はピョイとベットから降りた。そのまま服を着ようとする。そんな兄を弟は慌てて止めた。
「ちょっと兄さん?ダメだよ、ちゃんと寝ないと。」
「良いんだよ。俺も行く。」
「ダメ。」
「何でだよ!?」
「・・・・・なんでそんなについて来たがるのさ?」
そういうと、兄はエヘンと胸を張った。
「アルが粗相されないようにさ。当たり前だろ?」
その台詞に弟はまたか・・・と呆れ気味に兄を見つめた。
「またそれ?兄さんぐらいだよ、ボクを可愛いって言う人は。大体こんな大きくて無骨な鎧を可愛いな
 んて思う人がいるのさ?」
「何を言う、弟よ。もっと自分に自信を持っていいんだぞ?」
「いやそー言われても・・・・・。」
困惑する弟であった。兄は何を思っているのか、鎧の自分を可愛いと言って憚らない。驚いたものの、
兄は自分が人間であったことを知っている人間だ。きっと兄の中の自分はあの頃の、10歳のままなの
だろう。しかしそんな自分を知らない人間にとっては、首を傾げたくなる言動ではある。それが恥ずか
しい年頃な弟だった。
「それにアルが帰ってこなかったら、嫌だからさ。」
「ボク、朝帰りしたことないよ。」
「当たり前だ、そんな不埒なこと兄ちゃんが許さん。」
なにやら話が平行線をたどってくるようになってきた。まずい、と弟は思った。兄はやたらと頭の回転
が早い。早いが故に話が平行線をたどると、弟がいつの間にやら丸め込まれている事も多々あるのだ。
後で冷静に考えればかなりの屁理屈を通されていて、自分が折れる必要なんかなかったという事実に気
がつくのも1回や2回ではない。いかにして兄の攻撃(?)をかわすかが、問題である。
「兄さんね、さっきも言ったけどこんな鎧にトキメク人はいないよ。」
「いるぞ。」
やけに自信たっぷりの兄。ふんぞり返るなら、ズボンぐらい穿いてくれと思う弟。
「どこに。」
「ここに。」
それは自信たっぷりに言うことじゃないと思うぞ、兄。弟は傍目から見ても分かるぐらい、項垂れた。
「言い直す。兄さん以外いないよ。」
「それでも他に絶対にいないとは言い切れまい?」
「・・・・・・そんなもんかな。」
「そーだとも!だから兄ちゃんが一緒に行ってやるから、安心しろ弟よ!」
そー言われれば、余計安心なんかできないと達観する弟である。なにせ自分から鎧の弟にトキメいてい
ると白状しているわけで、所謂要注意人物というやつだ。そんな人物と夜の散歩・・・・・とか考える
と身の危険を感じるのであった。

で

「兄さん・・・・・・・後ろっ!!!」
「へ!?」
「てい。」
ごいん
ご丁寧に指まで震わせて叫べば、うっかりと後ろを向いてしまうのは人としての悲しい性なのだろうか。
思わず後ろを振り返った兄の後頭部に思いっきり手刀を炸裂させた弟である。目をくるくる回して動か
なくなった兄をさっさとベットにほおり投げ、慣れた手つきで掛け布団を掛ける。ここら辺は薄情な弟
とみるか、臨機応変な弟とみるかで印象は変わるだろう。

キィとドアを開けて、弟は部屋の中で失神しとる兄に優しく声を掛けた。・・・兄には聞こえていない
のは明白だが。
「じゃ、いってきます。おやすみなさい、兄さん。」




★えらく情熱的の兄さんと、えらく薄情な弟の話になってしまいました。しかしコレが私の頭の中の兄  弟であります。・・・・・報われないな、兄さん(笑)弟は夜に結構外をふらふらしてるんじゃないか  と思っているんですけど、どーなんでしょ。原作で兄さんが跳ね起きる場面でも、弟はいないしな。  ”眠れる”兄を見て辛いと思うこともあるでしょうしね・・・・。私だったら外に出て行ってしまう  かもしれません。眠りはストレスや悲しみなど負の感情負担を癒す1番良い方法だそうなので、それ  が出来ない弟のストレスはドコに消えてるんでしょうね・・・・。 戻る