10, 我慢できない!


「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
「兄さん、五月蝿い。皆に迷惑だよ。」
初っ端から大分ピンチっぽい兄と、それを情け容赦なくバッサリと切り捨てる弟は、それはそれは目立
つ。
「アルっ、お前兄ちゃんがこんなにピンチだっつーのに、冷たいぞ!!」
騒ぐ兄に、ジロリと冷たい一瞥をなげかける弟。
「ちゃんと言ったよ?汽車に乗る前にそんなに飲み物飲んじゃダメだって。無視したのは兄さんだろ。」
「2つ向こうの駅だからもつと思ったんだよーーー。ああ生理現象がこんなに苦しいものだったとは。」
そう、兄は汽車に乗ってから生理現象にかられてピンチに陥っていたのだった。短距離を走るこの汽車
にはお花畑が完備してはいなかった。しかもその生理現象はいきなり1つ駅を過ぎたあたりで唐突に始
まったので、救いようが無い。
「アル、ここでお花畑錬成しても良い?」
「ダメ。」
「じ、じゃあドアから外に向けて・・・・。」
「絶対にダメ。周囲に迷惑。」
「だって我慢できないぞ!?超特急な緊急事態なのに!!」
声も末期になってきて、いらぬ力が篭ってしまっている。心なしか青ざめている兄。やれやれと弟は溜
息をついた。本当に頭が良い人なのに、なんでこういうことが予測できないんだろ。昼間食べていた何
かで喉が非常に渇いていたのは知っているのだが、齢15にもなってこんな事態を引き起こしているの
が弟には信じられなかった。

兄のピンチに真理くんも同情したのか、汽車の速度がぐんと遅くなってきた。
「兄さん、もうすぐ駅に着くよ。それまでファイト。」
囁くと返事ですら響くのか、兄は力なくうんと頷いた。弟は手際よく荷物を網から降ろし、兄を抱えて
ドアに立つ。ちょっとつっかえながらホームに滑り込む汽車から、弟はぴょいとお気楽に飛び降りる。
地面に着地した時の振動が響いたのか、兄がうぅと情けない声を上げた。そしてそのまま兄を駅のお花
畑に突っ込んで、弟は空を眺めたのだった。


兄が非常に上機嫌で駅のお花畑から出てきたのは、すぐだった。



★ちょっと(いや大分)お下品なお話で申し訳ありませんでした。しかし我慢できないというお題に、こ  のピンチしか思い浮かびませんでした。生理現象は本人にしてみれば、生死の境をさまようかと思う  ぐらいにおおごとですからね。誰でも一回はこういう兄さんみたいなピンチを経験したはず、と思う  私はお腹にケチャップを入れて切腹すべきでしょうか。 戻る