17, 僕は君のための僕  


「アル〜vv」
いきなりドタドタと走って来た兄に、弟は兄よりも薄い金色の瞳を読んでいた本から兄に移した。瞳に
映るのは、ニコニコとご機嫌の兄の顔。
「俺はアルのための俺だからなvんでもってアルは俺のためのアルだろ?」
がばちょと抱きついてくる兄は何があったか知らないが、いきなりそんなことをほざいた。そんな兄を
見た弟は静かに兄を自分から引き剥がし、そのままずるずると引きずっていく。兄の部屋に入るとぽい
と兄をベットの中に入れる。そしてどこに隠し持っていたのか知らないが、いきなり体温計を出して兄
の口に突っ込んだ。この間、弟は終始無言だった。
「ふぁ、ふぁの・・・アルフォンスふぁん・・・?」
弟の行動が理解できず、兄は珍しく目を白黒させている。
「噛んじゃダメだよ、兄さん。噛んで水銀が出たら、死ぬのは兄さんだからね。」
可愛らしさの欠片も無く、弟はそう言った。
「い、いや・・・俺別に熱なんてないぞ?」
体温計を器用にずらして、兄は弟に訴える。しかし弟はそのまま部屋を出て行き、帰ってきたときは冷
凍庫の中にある大きい氷と、アイスピックと容器を持っていた。そして兄の傍に行ってガシガシと氷を
削りだした。どうも氷枕を作る気であるらしい。
「アルフォンスさん・・・?」
うろたえる兄もなんのその、暫く氷を削ることに集中していた弟はやおら立ち上がると、ひょいと兄の
口から体温計を取り出した。
「36・5度か・・・・・。」
「俺の平熱じゃねーか。」
不服を唱える兄の抗議にも、弟は動じない。
「そんなことないよ、あんな変なこと口走るんだから絶対身体を壊しているってば。はいはい、せっか
 く氷枕作ったんだから寝ていてね。」
「今、真昼間の3時だぞ?寝らんねーって。」
「病人は大人しく寝てなさい。」
「病人じゃねーって。」
ごす
ちょっぴり鈍い音がして、兄が布団の上に白目を向いてひっくり返った。後頭部にできたタンコブに氷
枕を置いて、弟はすまして部屋を出て行った。



「まったく、ほんと心臓に悪いひとだなあ。」
弟は1人になったリビングで苦笑した。思わずベットに叩き込んだのだが・・・・・・。
「なんでボクが兄さんの傍にいつもいると思ってんだろ。」
弟が元の身体を取り戻して以来、兄の弟病(ウィンリィ談)はダチョウからチーターのスピードで悪化し
ていた。べたべた触りまくるのはまだ良いとして、目が覚めたら兄が自分の上に乗っかっていたとか(も
ちろん叩き出した)、こちらに隙があればちゅーをかましてきたりと普通の男だったら夢にも思わない事
態が続いていた。それでも家出・兄出しないでいる理由を兄は考えもしないのだろうか。
「馬鹿ねぇ、エドもアルも。」
そう簡潔にコメントをしたのは幼馴染である。確かにね、と思う事もあるわけだがつい異議を申してし
まう。
「失礼な、ボクは兄さんの馬鹿とは違うよ!」
「なんだと、アル?兄ちゃんは頭が良いのですが。」
「錬金術に関してだけはね。同意するわね。」
「なにおぅ、機械鎧馬鹿のお前に言われる筋合いないわい!」
「少なくともアタシは弟馬鹿じゃないもの。」
年上2人が戦いだしてしまうのを、微笑ましく見たのも良い思い出だ。
「ちゃんと肯定しておけばよかったのかな?ボクは兄さんの為のボクだよって。」
そう一人ごちてから、ダメダメと首を横に振って苦笑する。
「そんなことになったら、もう大変(色々と)なことになるからな。兄さんを甘やかしちゃいけないよね。
 甘やかすと兄さん、調子に乗るし・・・・・。」
兄に対しての弟の判断は正しい場合が多い。絶対とは言い切れないが。
「コーヒーでも飲もうかな。」
弟は立ち上がって、キッチンへ消えていった。終始背中を向けていた為に、兄が耳をダンボにしてこの
独り言を聞いていたとは夢にも思わない。そう、弟の思考は兄が気絶から蘇ってもまだ余裕があるくら
い長かったのだ。ニンマリと笑っていそいそと自分の部屋に戻る兄。真の戦いはこれから始まろうとし
ていた。


★やりました!大変なラブラブ(自己申告制)を書くことに大成功しましたよ。ああ、やれば出来る子だ  ったのね私(笑)こんなラブラブ二度と書けないかも(弱気)  兄バカと弟バカの行く末に乾杯。 戻る