20, キス・キス・キス  


兄はともかく、弟は彼女が欲しいお年頃であるらしい。しかし鎧の巨体が邪魔をして、なかなかお目当
ての彼女はできない。弟は言う。
「可愛い彼女ができたら、お花畑を笑顔で大疾走したりお花畑の中で笑顔でローリングかましたりして
 みたいなあ。」
と。兄は思う。そりゃ春限定イベントになるのか?普通こういう場合、ひまわりとか麦とかねぎの花を
想像する人はいない。そうなると春に咲く花々のイメージとなるのは必然かもしれない。
「ふーん。」
投げやりに返事をする兄だった。・・・・・・面白くないから。
「それでさ、ファーストキスのシュチエーションはさ・・・・・・・・。」
珍しく脳天がピンクになっているらしい、弟の夢であるらしいシュチエーションを聞かされる兄。それ
は一体どこのエセ雑誌から引っ張ってきたんだと、突っ込みたくなるものだった。
「兄ちゃん、生まれて初めてお前の将来が心配になってきたよ。」
兄の心よりの言葉に、弟は揺るがなかった。
「安心して。ボクはいつも兄さんの将来が心配だから。」
毒舌で返してくる弟。そりゃいつも兄のめくるめく愛を一身に受けていれば、兄の将来を心配するのは
当たり前だ。この前も腰にしがみついて離れなかった為、弟は天下の往来を兄という腰巻をひっつけた
まま歩くハメに陥った。そりゃもう、行き交う人々のあたたか〜い視線を独り占め。
「それよりボクだって、夢ぐらい見たって良いじゃないか。」
むくれたように言う弟に、そりゃ夢ぐらい見ても構わないがもうちょっとこう・・・センスってものが
欲しいよなと考える兄であった。お前さん、人の事言えないけどな。
「ま、安心しろ。アル。」
「何を?」
「お前のふぁーすとちゅーは、もう終わってるから。」
爆弾発言を、うそ爽やかな表情で言う兄。当然、弟は驚愕の嵐である。
「ええ!?いつ!?誰と・・・?」
「んーお前が3歳くらいかな。」
「聞きたくないけど・・・・・・・・・・・・誰と・・・?」
「俺に決まってるじゃん!」
胸を張って、高笑いと共に宣言する兄。何故か勝ち誇ったような表情をするのは何故だろう。
「ちなみに、せかんどちゅーもさーどちゅーも俺のもんだ!!」
追い討ち。
「あ、あのね兄さん。家族のキスとは違うってば!異性の子とのファーストキスだよ!」
「あ、そういう意味でも終わってるぞ。」
「・・・・・なんでさっ。」
「俺がアルにええと・・・・ないんちゅーをした時かな?ウィンリィに見つかってさぁ、そしたらあい
 つ”あたしもアルにちゅーする”って言い出して。」
「見逃したんだ、ウィンリィを。」
「何を言う、抵抗したぞ俺は!そうさ、お前を庇いながら必死でな!でもあいつ、おれの裏かきやがっ
 て結局アルにちゅーしちまったんだ。」
兄の告白(?)に弟は頭を抱えたくなった。抱えたくなったので、部屋のすみっこに行って体育座りをす
る。その背中は兄でなくとも、よしよし可哀相になと頭を撫でたくなるほど悲哀が滲んでいた。
(全然覚えてないよ、ボク。やっぱりこの記憶は本当の記憶じゃないのかも)
何故そうなる、弟。人間明確に記憶しているのは、5歳くらいからだというぞ(実話)ショックなのは分
かるが、そこへ思考がいくのは飛びすぎだ。
「アル?」
「ほっといてよ・・・・。探さないで・・・・・。」
「?探すったってそこにいるじゃん、どーした?」
兄が本人にしてみれば心当たりがないのか、オロオロとして弟の周りをうろつく。どさくさにまぎれて
身体を摺り寄せてみたり。それはまたたびに心奪われたにゃんこのようだった。傍から見たら、いや傍
から見なくてもどーやって贔屓目に見ても、違和感有りまくりな光景ではある。しまいには反応を示さ
ない弟の背中によじ登ってしまい、振り落とされる兄であった。

「大丈夫だって、元の身体に戻ったら兄ちゃんがた〜んとちゅーしてやるからな!」
「いらないよ!兄さんの馬鹿!」


★以上、弟の過酷な運命でした。・・・・・ウソです、でも夢が壊れる瞬間ですな(笑)あ、ダメですよ  兄が3年もちゅーを待てるかどーか考えては。一応自覚したのがこのぐらいの年齢と、考えてはいる  んですが。ちょっと赤ちゃん弟を見て、そーいう意味で大興奮する幼児は嫌です。しかし異性の子の  初ちゅーが幼馴染なんて、恵まれてるぞ弟よ! 戻る