21, 神様なんてこわくない!  



大変だ。
兄は素直にそう思った。
何なの?
弟は戸惑ってそう思った。
2人の目の前には、サングラスをした人相の悪い男が1人。
必殺仕事人(国家錬金術師限定)スカーさんである。追い詰められ、しかも相手は殺る気満々という状態。
大ピンチだ。覚悟を決めて、襲い掛かる。正に窮鼠猫を噛むである。
「って誰が、ハツカネズミみたいなドチビかーーっ!!」
ナレーションに突っ込む馬鹿がいるか、兄。いいか世の中には信じられんぐらいの大きさの鼠だって、
わんさかいるんだぞ!?東京の地下鉄にはそんなオバケ鼠ご一行様が、溢れておるのじゃ。って話が逸
れた。

スカーさんは、でっかい鎧の方から攻撃することに決めた。何故ってもう一人は視界に写らなかったか
らだ。
「!」
ナレーションに突っ込むなよ、兄。ナレーションに気を取られた分、兄の初動は遅れた。その間に弟は
スカーさんに破壊されてしまう。
「アルッ!!!」
兄の悲鳴が響く中、弟は大きな音を上げて倒れていく。
「っの野郎ーーー!!」
兄は頭に血が上った状態で、スカーさんに襲い掛かった。しかし感情に任せた攻撃は単調だ、あっさり
かわされる。右手を掴もうとしたスカーさんの手を振りきり、スカーさんの背中に逃れた。素早く振り
返るスカーさん。兄はスカーさんの後ろで倒れている弟を見て、眦を上げた。
「こんの野郎!!!アルになにすんだ!!アルは俺の子を産んでくれる、大事な身体なのに!!!」
「ええええええええ〜〜〜〜!!!!?????」
当然天地がひっくり返るほど驚いたのは、弟である。
「ちょっと待ってよ、なんでボクが兄さんの子供産むんだよ!?聞いてないよ、そんな話!!」
聞いてればOKなのか、弟。そんな弟に兄は、やたら嬉しそうにごそごそと研究手帳を見せる。
「だろうな、言ってねーから。でも安心しろ、どさくさにまぎれて兄ちゃんの研究日誌に書いてあるか
 ら♪ほらココ、ココ。」
ご丁寧に書いてあるらしいページを見せてくれる、兄だった。
「読めないよ、その旅行日誌風のは!しかもどさくさまぎれなの!?」
「俺的には必然的だ。」
「ボク産めないってば、分かってるの?」
「兄ちゃんに不可能はないようであるが、任せておけ!」
「!!人体錬成に時に何かやる気だな!?」
「ふふ〜ん、その時まで内緒v」
スカーさんは・・・・顔色を変えなかった。コレも修行の賜物だろうか(何の修行だ)ビバ修行。


スカーさんがふらふらと、弟に近づいていく。口げんかしている兄弟は、まったく気がつかなかった。
弟が気がついた時には、既に目の前である。
「わ。」
「アルッ。」
スカーさんは何をしたか。しゃがみ込んでまじまじと、弟の鎧の中を覗き込んだ。当然、中は空っぽだ。
(わからぬ・・・・神よ、こいつはどーやって子を産めるのだ?)
実は顔に出ないだけで、スカーさんはかなり混乱していた。しかも冗談が通じない、ナイスガイ(死語)
である。いや兄は本気なのだろうが。首を捻った瞬間、スカーさんは衝撃によって弟の後ろにご丁寧に
顔からかっとんでいった。何故って兄が、両足でスライディングよろしくキックをかましてきたからだ。
ライ○ーキックというやつだ。完全に呆けていたスカーさんに成す術はなかった。
「こんの破廉恥野郎が!!何アルの身体の中覗いてやがる!?わいせつ罪でしょっぴくぞ!?」
「いや兄さん、わいせつっていうのはちょっと言いすぎじゃないの・・・?」
「いいや、アルの中覗いたり中に入ったりするのは俺だけで良いんだよ!!」
「入れた覚えないよ・・・・・。」
「安心しろ、そのうち入る。」
「・・・・・・・どんな意味で?」
「色んな意味で。」
またしてもどっかずれている兄弟漫才は続く。本人達が大真面目というのが、恐ろしいが。
「ふ・・・・・ふふふふ・・・・。」
スカーさんが、笑って立ち上がる。顔や頭からだらだらと血を流しながら。それは下手なホラーよりも
怖かった。
「お前ら、近親相姦か・・・・。なんと不吉な。」
「なんだと!誰がおみくじ凶か!?」
「兄さん、論点ずれてるずれてる。って不浄とかじゃなくて不吉なの、そうなのふーん。」
「こんなことは神が許されん。」
「神なんざいらないんだよ!あんななまっちろつるっぱげのっぺらぼうなやつなんか!」
真理君のことを言っているらしい。そんな事言ったら、また持ってかれるぞ兄。
「何を言う、我がイシュバールの神は・・・・!!」
「俺は見たの!聞いたの!!神と名乗る奴にな!!アルの身体を持っていった、どスケベ野郎だ!」
鼻の穴を大きくして、ふんぞり返る兄。スカーさんは真理君に会ったこともなく、弟は忘却の彼方であ
る。この兄の意見に賛同できるはずもない。
「兄さん、ひょっとしてボクに内緒でなんか怪しい薬とか愛用してる・・・?」
「なにを言うか、弟よ。つか怪しい薬ってどんなやつだよ?」
「麻薬(きっぱり)」
弟は兄が麻薬をやって、あっちの世界にいってしまったのかと判断したようだった。
「何を言う?兄ちゃん注射嫌いだぞ!?」
「いや〜飲めるタイプのものもあるでしょ?」
「飲みたくないってば。兄ちゃんは薬関係(正常でも)嫌いだぞ。」
「そーだねー。でもボクが子供産めるってほざいてるからさー。」
「あれは本気だ。」
等など、スカーさんそっちのけでまた口喧嘩w始める兄弟。無視され続けるスカーさんは、寂しくなっ
てきた。帰ろう、と思ったその矢先。

「そこまでだ。」

スカーさんが振り向くと、そこには軍服が溢れていた。いつの間にやら、囲まれていたらしい。しかも
わざとらしく正面の黒髪の軍人は、錬成陣か描かれたおニューの手袋を見せる。かかってきやがれ、と
いうつもりらしい・・・・・が。
「貴様ら・・・・あの兄弟にどんな教育施しているのだ?」
「?」
「今日は疲れたから帰る!が、また来る。」
そう言うと、スカーさんは地面を陥没させて逃げてしまった。役所の土木課が泣きそうな穴を、こさえ
たまま。

よく事情がわからないまま、大佐が兄弟を見るとなにやら言い争いをしているようだ。やれやれしょう
がない子らだ、と溜息をついた大佐の耳にとんでもないことが届いた。
「兄さんがボクを女の子として錬成するっていうのなら・・・・。」
「なんだよ?」
「大佐の子供産んでやるーーーーーー!!!!」
「なあああああにぃぃぃいをぉぉぉぉぉぉ!!!!」
弟の叫びと兄の絶叫。大佐は目を白黒させた。そんな気の毒な大佐に、中尉の危険な香りのするキック
が膝裏に炸裂した。ところで危険な香りってどんな香りなのだろう?ともかくポカーンな状況でそんな
キックをかまされた大佐はたまらない。どて〜んと無様に後ろにひっくり返った。
「何するんだ、君は!?」
「大佐、こういう時はコマのはじっこで足を折ってひっくり返るのがマナーですよ。」
良く分からんが、漢らしいぞ中尉。そんな心温まる会話の最中でも、兄弟の言い合いは続く。
「何言ってんだよ、アル?あんな無能と間になんて、アルの良い所が皆無能に吸い取られて子供が可哀
 相だぞ!」
「無能な人が、あの若さで大佐になれるわけないだろ!?兄さんは大佐を侮りすぎてるよ!きっと大佐
 みたいな有能な子供が産まれるよ!!」
2人共、そこに話題の人大佐がいないのに気がついていない。部下達も苦笑している。大佐は兄弟に近
寄るが、それでも気がつかれない寂しさ。
「なんというか・・・・・声がかけずらいな中尉。」
自分が話題の中心にいればなおさらのこと。
「そうですね。」
と相槌をうった舌の根も乾かぬうちに
「大丈夫?エドワード君、アルフォンス君。」
と声をかけれる中尉は素敵に無敵。そこで初めて兄弟は大佐と中尉に気がついたようだった。弟は慌て
ているらしいが、兄は眦を吊り上げた。
「こぉんのクソ無能!!!アルは絶対やらないからな!!」


大佐は・・・・・・珍しくからかう気力すらなくなった大佐は・・・・・・・溜息をついて下を向いた。




★すみません、どこらへんが神様なんか怖くないのかわからなくなってしまいました。どっちかという  と神様なんかいらないという趣旨になってしまったような?私は大佐v中尉派なのでこの二人の子供  を想像すると、微笑ましいやら怖いやら。え、兄弟の子供?正直産まれるわけないんですが、やっぱ  り錬金術に関しては天才的になると思います。ただし、兄さんの才能は超えられない気がしますけど。 戻る