05, 雨 


「雨かあ・・・・・。」
恨めしそうに、窓枠に顎を乗せて兄は呟いた。人間勝手なもので、雨がなければないで大変なことにな
るのだが、やはり雨の日より晴れの方が好きだ。兄もその一人。
「ここは一発景気づけに”雨に歌えば”を外で踊るべきだろうか、弟よ。」
ガシャン、という音と共に呆れた口調で返事が返される。
「あれはミュージカルだから許される行為であって、普通の時にやったら最悪24時間お守りする設備
 のある場所に連れて行かれるよ。」
「あーーー本人じゃなくて、他の皆様をお守りするやつな。」
「そうそう。」
ここで会話が途切れた。兄弟仲良く(とはいっても弟はベットに腰掛けている)窓の外を眺める。ぽつぽ
つと窓を雨がつつく音だけが響く。
「そういえばこの前雨にあった時、兄さんはびしょ濡れになっちゃったんだよね。」
「あれは正直参ったな。ぱんつまで濡れちまったからなあ。」
「だからって部屋できんぶらはしなくっても良いじゃない?」
「そーは言ってもなかなか新しいぱんつが出てこなかったから、しょうがないじゃねーか。」
「なんでタオルを巻くとかしないのさ。」
「アルのふんどし貸してくれって、お願いしたじゃないか。」
「ボクのふんどしだって濡れてたから、貸せるわけないじゃないか。まったくあの時、誰も来なかった
 から良かったものの、きんぶらは止めて欲しいよ。」
その時のことを思い出したらしい弟が、うんざりとした感じで訴える。それについては兄も悪いと思っ
ていたので、素直に頷いた。
「おう。きんぶらはまた違う時にするよ。」
「・・・・・・・・・・いや、ボクの前ではしなくて良いから。」
などと、心温まる兄弟の会話が続く。そこへ・・・・


がっしゃ〜〜ん


唐突に部屋の壁が崩壊し、壁の材料が粉々に部屋に飛び散る。人間咄嗟に驚くことがあると、どーにも
傍にいた人間に抱きつくものらしい。この法則に則り兄弟もお互いに抱きしめあったまま、固まった。
「やあ、元気かね。鋼の錬金術師くん。」
そこに立っているのは、普段なら有得ない人だった。
「「き・・・キング・ブラットレイ大総統!?」」
見事にハモる兄弟であった。そりゃこの国のトップが壁を蹴散らして現れたら、誰だって驚く。これは
さしもの兄弟であっても、同様だ。
「いや、ちょっと私の嫌いな言葉がでていたものだからね・・・・。」
「はあ・・・・・。」
何か言ったっけ俺達?いいや心当たりないよ?とひそひそ話。
「私は目が良いのでね、それで分かった。」
「はあ・・・・・。」
目は関係ないと思うのですが大総統?とつっこみたい兄弟ではあったが、やはり言いにくいものではあ
る。そんな兄弟の前で左手で心臓の辺りを押さえ、目を閉じる大総統。右手ではないのはサーベルを握
っているからである。深い意味はないらしい。
「あの・・・・それで嫌いな言葉とは・・・?」
恐る恐る聞くのは、やはり兄である。一応聞いておかないと、その言葉を発する度に飛び込まれてきた
らたまらない。なんといってもこの我らが大総統は、神出鬼没なのである。
「ああ、私はきんぶらという言葉を聞くと切なくてセンチュリー21」
「「?」」
センチュリー21って建築会社だろ?切ないのと建設業者になんの関わりが!?とまたもやひそひそと
大混乱して囁きあう兄弟。多分なにかのゴロがあうと閃いただけだと思うが。
「分かったかね?」
目をくわっと見開いて、静かに問う大総統。その静かさが恐ろしい。思わず力いっぱい頷く兄弟であっ
た。それに向かって満足したらしい大総統はにっこりと笑う。
「そうか、分かってくれたかね。」
よっこいしょ、などと言いながら窓枠に身を乗り出す。嫌な予感がして、兄弟は止めに入ろうとした。
「待ってください、大総統!外は雨です!!」
兄よりも早く、弟がお天気の話題を叫んだ。
「はっはっはっ、安心したまえ弟君。私は目が良いのだよ。」
「いやそれと雨と何の関わりが!?」
がっしゃ〜ん
弟の突っ込みも空しく、大総統は窓を景気良く壊してしまう。
「ぎゃ〜〜〜雨が降り込む〜〜!!」
「とうっ。」
貴様どこの特撮野郎だと言いたくなる掛け声と共に、大総統は下に消えた。どうも上に飛び上がったの
ではなく、下に直滑降したらしい。弟が壊れた窓に走りより覗くと、タタタタッと赤いちゃんちゃんこ
を着る年齢らしいお方とは思えないほど軽やかなフットワークで大総統が走り去っていく。
「ほんと、月光仮面みたいな人だね・・・・。」
呟くと、流石の兄も目を白黒しながら同意してくる。
「アル、そっち直してくれないか?俺壁直すから・・・・・。早くしないと宿の人に叱られてしまう。」
弟関係以外ではなんとか常識の範囲内にいる、兄であった。


「しっかし参ったよなあ、いきなりお偉方と会うなんてローマ○休日みたいだな。」
慌てて窓と壁を直した直後、宿の人がやって来てちょっと叱られた。自分達がやったんじゃない、と主
張するのは簡単だが、犯人は大総統である。素直に言ったところで信じてもらえるわけも無いだろう。
「・・・・・ちょっと、いや大分違う気がするよ。」
「でもあの言葉を発すると現れるなんて、今流行りのカードゲームみたいだ。」



遊戯○風の決闘場。何故か相手にはデュエルシステムを装備したエンヴィーが立っている。どうもチビ
と言われた事を、兄は狸のよーにしつこく覚えているらしい。
「俺のターン!(ちなみに兄)俺は特殊召喚呪文[きんぶら]を発動!コレによりモンスターキング・ブラ
 ットレイ大総統召喚!!」
ゴゴゴゴゴと光の中から戦闘形態の大総統が現れる。

攻撃力   どうやって持つのか5刀流
守備力   サスペンダー



「い、いやちょっと待った兄さん。攻撃力はなんだか言わんとすることはわかるけど、守備力がサスペ
 ンダーってのはないんじゃない?」
「そうか?だってタブリスで会った大総統の装備で、1番印象に残ったんだけどなー。」
大総統モンスター扱いはいいのか、兄弟。この後、楽しく大総統の装備について熱く物語る。
雨の日は暇だから、妄想する時間があるんだよな。と意味ありげに発言した兄は、弟にぱんちぱんちき
っくを食らって倒れ1日を無意味に過ごすことに成功したのだった。


★雨は降らないと、水が足りなくなって稲が大変です。え、もちろん人間も大変ですけどね。その雨の  重要さを理解しながら、雨の日に憂鬱になるのは何故でしょう。ええ、会社に行きたくなくなること  山の如しですが、会社とは非常なもので台風がこよーが大雪がこよーが決してお休みにならないので  した〜。 戻る