地球


       地球。
       それは自分の故郷。
       故郷は所謂自分の帰る場所。
       けれども
       故郷は遠くにありて想うもの。


       「でもなあ、いくら遠くにありてって言われても、無くなっちゃあどーしよーもないよね。」
       「やけに開き直ってやがるな、阿呆。」
       今日は宿屋・・・・ではなくて、綺麗さっぱり野宿である。アルベルとフェイトは火をおこすから薪
       を取って来いというマリアに従って、木の間をもこもこ歩いていた。なんだかさっぱりとした口調に
       アルベルが呆れたように返事をする。
       「だってさあ、無くなっちゃったんだよ?一応訊いておくけど、意味分ってる?」
       「・・・・・・・分っているつもりだが?」
       「帰る場所が無くなるって、結構キツイもんだよね。皆、帰る場所があるから立っていられるのにね。」
       そう言ってフェイトは地を足でトントンと叩いた。
       「アルベルだってさ、僕達に着いて来てたって最終的にはアーリグリフに帰るわけだしさ。」
       「まあ、そうなるな。」
       「だけど、コトが終っても帰る場所がないってキツイよ。」
       「・・・・・・・。」
       どう言っていいやらと振り返ったアルベルが目にしたのは、嬉々として太い木の棒を拾うフェイト。脇
       に今まで拾った細い木の枝を抱えながら、ブンブンと上下に振ってみている。
       「う〜ん、結構いいなあ。コレ。」
       満足気なフェイトのセリフに、思わず額に手をやるアルベルだった。その先の展開が見える分、気分も
       落ち込む。
       「おい、俺たちは火にくべる薪を探しているんであって、間違っても敵を撲殺する為のものを探してい
        るわけじゃないからな。」
       不安的中。
       図星を指されたらしいフェイトが口を尖らせて、こちらを見ている。アルベルは溜息をついた。
       「で?」
       「ん?」
       「地球ってトコはどんなトコなんだ?」
       アルベルはムーンベースには行ったことがあるが、地球はスクリーンで見たことがあるだけだった。フ
       ェイトやソフィアが育ったその星に、少しだけ興味をもった。フェイトは未練がましい仕草で先ほどの
       棒をポイ、と捨てながら何か考えているっぽい。
       「そうだなあ・・・・。ムーンベースみたいな感じかな?」
       「ムーンベース・・・・・・・・。」
       言われてアルベルはムーンベースを思い出した。冷たい金属で覆われた、味気のない施設。そこにある
       植物も、やけに空々しく目に写った。
       「殺風景なトコだな。」
       素直な感想を口にすると、フェイトはアハハと笑った。
       「そりゃ、ココと比べたらね。でも・・・・・大切な場所だった。」
       噛み締めるように最後のセリフを言うフェイトに、アルベルは困ってしまった。誰かに慰められるのも
       嫌だったが、誰かを慰めたこともない為こういう時はどう言っていいのやら皆目見当もつかない。普段
       気にもとめない行為が、こんなところで裏目にでるとは。
       ただただボーっとフェイトの側に立っているアルベルにフェイトが笑った。
       「でも良いんだ。アルベルの腕の中が、僕の故郷に決まったからね。」
       さらり
       一瞬沈黙が過ぎった。
       「ほぉ・・・すると何か?テメーはオノレの故郷を引き連れて旅をしてるわけか?」
       下を向き、低い声で呟くアルベルに気がついているのかいないのか、フェイトはアッサリと頷いて見せ
       た。
       「うん。あ、ソフィアの故郷はアルベルの背中に決まったからね!念の為。」
       ふるふると震えだすアルベルに、ね、とばかりにふってくる。
       「テメー・・・・なに本人に相談なく決めてやがんだよ。しかも、いつ!?」
       噛み付いてくるアルベルに、フェイトはきょとんとした顔をして首を傾げる。
       「先週だったかなあ。ソフィアと地球の話になってさ、無くなっちゃったから新しい故郷を探してみよ
        うということになったんだ。」
       そこで一旦言葉を切って、アルベルの方を上目遣いに見る。これから悪戯をする時の子供のような目を
       して。
       「で?」
       イライラとした態度を隠しもせずに、アルベルは先を促す。腹芸は苦手だった。
       「ん。僕はアルベルの腕の中にするって言ったらさ。」
       フェイトはその場面を思い出したのか、アハハと笑って続ける。
       「ソフィアに怒られちゃった。”ずるい〜あたしだってアルベルさんの腕の中が良いのに”って。」
       そう言ってソフィアが怒ったり拗ねたりする時のポーズを真似するフェイトであった。それは非常によ
       く似ていた。流石幼馴染と言うべきか、ちょっと変だというべきか、それが問題な気もするがアルベル
       は一応脇に置いておくことにした。
       「しょーがないから、背中で我慢するってさ。」
       「・・・・・・お前ら、俺が死んだらどーする気だよ?」
       「大丈夫!守ってあげるさ、僕とソフィアと時々マリアで。」
       なんだか凄いトリプルアタックを受けた気がするのは、気のせいだろうか?
       「マリア?なんであの女まで出てくるんだ?」
       「ん、マリアの故郷・・・って言っていいのかな?基地はもうないんだ。だから僕らが盛り上がってい
        たら、私も決めるって。」
       「だからなに、俺のいないトコで勝手に話を進めるんだよ!」
       「(聞いてない)マリアは左腕だってさ、そこで我慢するって。」
       「だからなんで俺が、お前ら意味深トリオの故郷にならないけないんだ!?」
       とうとう脇に抱えていた薪をほおリ投げて、地団駄を踏むアルベルではあったが相手はフェイトである。
       まるでひのきの棒でラスボス(ルシファーか?)に襲い掛かるぐらいに、アルベルにとってフェイトを口
       でやり込めることは難しい。かといって、今のレベルでは戦闘であってもフェイトに勝つことすら難し
       いことも認めたくはないが、事実だ。
       「平気平気vどーんとアクアエリーに乗った気でいてね。」
       「それ消失した船じゃねーか・・・・。」
       やたら軽く縁起でもないことを言って、笑うフェイトに弱々しく突っ込むアルベルではあったが、あっ
       さりと無視される。
       「さあ、薪も大分集まったしそろそろ帰らないと、マリアが怒っちゃうだろうしね。」
       「・・・・・・・・・・・・わかった。」
       もはや突っ込む気力すらなく、アルベルは自分がほおリ投げた薪を再度拾ってとぼとぼと歩き出した。




       ★お題の1地球ですが、なんだか故郷で語ってしまった気がします(気のせいじゃありません)。フェイト         は黒かったり白かったり灰色だったりと忙しい人になりそうです。アルベルは右斜め前に偏っている人。         素直じゃないっていうのが、アルベルの基本的姿勢なんですが・・・・。歩き走り戦う最終兵器用故郷         にされてしまった彼に乾杯3度!        戻る