忘れない


       一応クロセルに手伝ってもらったものの星の船を撃破したので、フェイト達は次の攻撃が来ないうちに
       この星を去ることになった。早くこんな星を脱出して、父親を助けに行きたいと願っていたはずなのに
       いざその時が来ると寂しいものだ。

       見送りはアーリグリフとシーハーツのトップなお方と、ネル。・・・と、その他大勢の人々であった。
       (あれ?)
       フェイトは気がついて、キョロキョロと周りを見回す。そんなフェイトを見て、ネルが首を傾げた。
       「どうしたんだい、挙動不審だね。」
       「いや・・・あの・・・・ネルさん。」
       「なんだい?」
       「ネルさんに訊くのもなんなんですが・・・・アルベルは?」
       フェイトの口から出た名前に、ネルが顔を歪めた。それはそうだろう。ネルはクリムゾンブレイドとし
       て、アーリグリフとの戦争を戦ってきた。当然、アーリグリフを許してはいないし、アルベルに対して
       も良い感情を持ってはいない。それは至極当たり前の話だ。戦争が終ったから何もかも忘れて、仲良く
       しましょでは済まされない。両国共に、多くの犠牲を出しているのだから。人の生死は仕方がないでは
       すまされないのだ。
       「クロセルから降りたら、さっさとどこかへ行っちまってね。」
       だがネルは意外にも苦笑しつつ、答えた。
       「え?」
       「私も止めたんだよ。フェイト達を見送らないのかいってさ。そしたらあいつ、何て言ったと思う?」
       「さあ・・・・・・・・。」
       「”俺はお前らと仲間なわけじゃない。そこまで親しくもないし、つい最近まで敵だったんだ。そんな
        奴らを何故見送らなければならない?”ってね。」
       「・・・・・・・・・・・・そうなんだ・・・・。」
       フェイトの脳裏にペターニでの出来事が蘇った。自分に対して「俺が憎いか?」と尋ねてきたアルベル。
       あの時は確かに不安そうだった。それはそうだろう、ついさっきまで戦争をやっていた敵ばかりの中に
       ほおり込まれたのだ。ウォルターに言われて渋々といった感じでついては来たものの、他のメンバーと
       の温度差もかなりあった。ネルはいわずもがな、クリフもあまり良い印象を持ってはいないようだし、
       マリアは正直アルベルという人物をどう判断して良いか、様子見といったところだったし。
       それでも一緒にクロセルに挑んで、マグレとはいえ勝利もした。だから、少しでも仲間と認めてもらっ
       ていたのかと思い込んでいた。
       「それにしたって、薄情なやつだなー。見送りぐらいしたって、減るもんじゃないってのに。」
       クリフが苦笑しながら、そう言う。
       「まあ、そういうことをするの、嫌いっぽいししょうがないんじゃない?」
       冷静に、顔色一つ変えずにマリア。
       「すまんな、あいつはどうも協調性がないからな。」
       王に謝られてしまったら、どうしようもない。フェイト達は困って、ハハと笑って誤魔化した。
       「なにか伝言でもあるかい?まあ、できたらって話だけど伝えられるように努力はするよ。」
       ネルの申し出は有難かった。・・・・・でも
       「いえ、良いんです。もう二度と会うこともないだろうし、敵だったのは確かだったから。」
       フェイトは空を見上げた。

       正直、一目ぼれだったんだよな。
       少しでも仲間として認められたかったんだけど。
       いや、もっと近くにいたかったけど。
       でも忘れない。
       君の事は、絶対に忘れないよ。
       例え君が僕のことを忘れても。

       「さよなら。」










       「とかなんとか思ってたんだけどね。」
       戦艦アクアエリーで与えられたアルベルの個室のベットにだらしなく寝っ転がりながら、フェイトはし
       みじみと呟いた。
       「えらくリリカルにポエムってた割には、とっとと帰ってきやがったな。」
       そばの椅子に腕組みをして、足を組んだ格好で座っているアルベルが呆れた声をだした。その声に反応
       したがごとく、フェイトはゴロンとアルベルの方に転がった。ちなみに靴や装備品はちゃんと脱いでい
       る。
       「しょうーがないだろ、アッチがそう指定してきたんだから。」
       ぷう、と膨れる。
       「まあでもさ、やっぱりアルベルと僕の間には運命の赤黒い荒縄で繋がっているんだねv」
       「・・・・・・なんだ?そのやたらに禍々しいやつは。」
       「ソフィアが言ってたよ?結ばれる運命の相手との間には、どうやっても切れない赤黒い荒縄がついて
        いるんだってさ。伝説なんだって。」
       「なんだか、腑に落ちん伝説だな。とりあえず、俺はごめんだぞ。そんな気味の悪いもんは。」
       正確には運命の赤い糸なのであるが、未来世紀ではどうも尾びれがホエールレベルまで発達してしまっ
       たらしい。てか荒縄って時点で気がつけソフィア!全然ろまんちっくじゃないぞ!
       フェイトはゴロンと仰向けになって、天井を見つめた。
       「アルベルはさ、僕のこと忘れないでいてくれたかな?」
       「あんな短い期間で忘れたら、それは痴呆って言うんだぞ。」
       「だよねぇ。ってそーじゃなくて、僕が聞きたいのはあのまま別れて、こんな風に話すこともなくても
        忘れないでいてくれるかなーと思ってさ。」
       アルベルは顔を顰め、なにやら貧乏揺すりらしきものを始めた。それは少しイラついているサインだ。
       「うるせーよ。」
       ガタンと立ち上がって、ベットの側で仁王立ちをする。
       「それよか、さっさと自分の部屋に帰れよ。いつまで人のベットを占領している気だ?」
       「ん〜、ここで寝る。」
       「・・・・・・・・そーか分かった。なら俺はお前の部屋で寝かせてもらう。じゃーな。」
       やけに聞き分けよくアルベルはスタスタとドアに近づく。フェイトが慌てて起き上がったときには、も
       うドアを開けていた。
       「忘れねーよ。」
       ソレは小さい声だった。
       「え?」
       「俺に勝った数少ない奴だからな。そういう奴は、俺が負けさすまで忘れねーんだよ。分かったか、阿
        呆。」
       そう言いながら、耳が赤くなったのがフェイトには分かった。憎まれ口には違いないが、アルベルにし
       てもフェイトは忘れられない存在、ということだ。
       「ひょっとしなくても、両思い?」
       「言ってろ、阿呆。」
       しゅん・・・・とドアが閉まった。アルベルがここにいなくて良かった、とフェイトは思う。両思いと
       いう言葉に、アルベルは否定をしなかったのだ。顔の筋肉が緩みっぱなしになってくる。こんな表情を
       したら、必殺技の4つぐらいは喰らってしまいそうだったから。
       「そっかーvやっぱり僕らは運命の赤黒い荒縄で結ばれているんだねーv」


       だーかーらー赤い糸だって言ってるのに・・・・・・・・。



       ★フェイトは+の感情で忘れない、アルベルは−の感情で忘れないと思うんですよ。あれから本当に二度と         会えないんだったら。アルベルの加入時期はネルなどに比べれば短いですし、仲良くなるようなイベント         もないし。ペターニの宿屋のイベントは仲良く、とはちょっと違うと思いますし。だからフェイトはとも         かくアルベルが+の感情をフェイトに持つのであれば、きっとカルアサ事件(笑)のあとからだと思うんで         す。まあアルベルも勝ち逃げされるよりは、後に引っ付いて行ってフェイトに勝つことに努力する方が良         いでしょう。        戻る