鉄パイプ


       アルベルはちょっと(いや大分)気になっていたことがあった。それはフェイトが持っている荷物の一つ
       何故だか袋から飛び出している代物。細長いシルエットのそれを良く知ってはいるものの、何故にフェ
       イトが持ち歩き続けているのかが分からない。さり気なく(と本人は思っている)クリフに訊いてはみた
       が、クリフと遭遇した時にはもはや持ち歩いていたそうだ。何に使うわけでもないそれを。
       「俺もな、変に見られる時もあったもんだから捨てるように言ったんだがな。なんでかは知らんが、後
        生大事にしているんだよなあ。」
       とクリフも首を傾げていたものだった。一応マリアにも訊いてみたが
       「さあ?知らないわ。少なくとも私にはあんなもの持ち歩く神経が分からないもの。」
       と、至極当然の事を言われた。ネル・・・・・は近づいただけで警戒するように睨むので、腹立たしく
       って近寄ってはいない。モチロン訊くこともない。



       「おい阿呆。」
       そう呼ばれてフェイトが振り返った。お前は阿呆なのを自覚しているのか?と思いきや、実はクリフが
       いない為、呼ばれることに当てはまるのは自分だけだったからだ。所謂消去法。そうでなければ、アル
       ベルは無機物に話しかける怪しい人になってしまう。・・・・・前置きが長くなった。
       「何だよ。」
       「なんでソレを持ち歩いてんだよ?」
       「?それって?」
       「それだよ、阿呆。」
       アルベルがイライラとした面持ちで指を指したのは、荷物からストーンと覗いている鉄パイプであった。
       ああ、と何故か嬉しそうに返事をしてフェイトはいそいそと荷物から鉄パイプを取り出す。
       「取り出さなくってもいーぞ、別に。」
       「いやあ、奇遇だなあ。アルベルも鉄パイプって好き?」
       「まったく。」
       「そう。」
       「いやそーじゃねえって。なんでわざわざ役にも立たねえそんなもん、持ち歩いてんだ?」
       フェイトはニッコリ笑って、何故か素振りを始める。心なしかほんのり赤っぽい感じの、鉄パイプ。
       「これはねえ、実戦で初めて使った武器なんだよ。もう逃げるのに必死でさ、この星の人みたいに武器
        を携帯しているわけでもないからねえ。頭にきてさ、そこらへんに転がってたこれを振り回したんだ。
        だから、僕はここにこうやって生きてるのかもしれないね。命の恩人ってやつかな。」
       「・・・・・・武器を携帯しなくて、どうやって身を守るんだよ、お前んとこの世界は。ここでは考え
        られねえよ。普通の家にだって、護身用の武器ぐらい持ってるぞ。」
       「もう、世界の違いってやつだよね。」
       ある意味フェイトの言葉は最終兵器だ。これを言われてしまったら、何も言えない(私だけか?)
       「だからお守り・・・・・ってなわけだね。」
       何故か素振りを止めないフェイト。
       「一応分かったから、振り回すのは止めろ。」
       アルベルが迷惑そうに言うと、渋々といった感じで素振りを止める。気が済んだので、アルベルとして
       はもう興味がない。とっとと自分の武器を引っ張り出す。その時
       ゴイン
       目から火花が散るとか、星が出るって本当なんだな・・・と感心しながらアルベルは前のめりに倒れて
       いった。後日、頭にでっかい瘤を作って自己嫌悪に陥るアルベルがあったのだが・・・・・・。


       「ねv役立たずじゃないでしょ?」
       天使の笑顔を撒き散らしながら、フェイトは目を回したアルベルに得意げに言い放った。


       ★鉄パイプ。何故か手放せない鉄パイプ。ソフィアも持ってるらしい、鉄パイプ。         というわけで、鉄パイプでした。フェイトが最初に戦う時に装備しているわけですが、ドコで拾った         んだろう、と思っていたんですが。すっかり最初の頃のイベント忘れてますですよ。格好悪いけど、         フェイトにしてみればこれがあったから勝てたんじゃないかと。だから命の恩人兼お守り。なーんて         考えてます。けど他の人から見れば、充分怪しい人ですな。         私も鉄パイプ持った人がいたら、避けて通ります。        戻る