寄せ集め2






 
日記ログ2


・バテレンタイン

「ライル〜、今日は好きな奴にチョコあげる日って知ってたか?」
「初耳だ。どこの習慣だよ」
「日本だって、沙慈クンがそうミス・スメラギに白状させられたらしい」
「ふ〜ん。でも兄さんにチョコなんて用意してないぞ」
「心配すんな!ちゃんと兄ちゃんがお前に用意した」
「・・・・・・・・・・そう」
ずい、とだされたそれは可愛らしくラッピングされていた。恐怖。
「このラッピングは兄さんの趣味?つかどうしたんだよコレ。地上には降りてないだろ?」
「ああ、偶然フェルトがチョコ作ってるのに遭遇してさ。俺も好きな奴にあげるから作るって言って材
 料分けてもらった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
このバカ兄ーーーっ!と叫びたくなるのをライルは奇跡的にこらえた。フェルトはきっと兄にあげる為
にチョコを作っていたはずだ。そこに当人が現れただけでなく、好きな奴にあげると宣言されたフェル
トにスライディング土下座をしたい。最初に彼女の粗相したのは自分だが、それを反省してからはエイ
ミーと同じくらい大事にしているライルだった。ミレイナは別の意味で可愛い存在ではあるが。
「開けて食べてくれよ」
目の前の兄はだらしない笑顔のまま、弟の心の葛藤にも気が付かずに催促してくる。ライルはぎこちな
く頷くと、そのラッピングを解き中を見る。そこにはトリュフチョコらしきものが4つ行儀よく並んで
いた。兄の期待の目を一身に受けながら、1つを口の中に放り込んだ。
「うまいか?」
「(モゴモゴモゴ)うん」
「良かった!じゃ、全部食べてくれな」
「うん、有難う兄さん(そしてゴメン、フェルト)」


「どうした、そのチョコは」
「兄さんから貰った。刹那も食う?」
「いや、良い。そういえばさっきミレイナとフェルトにチョコを貰ったな。なにかあるのか、今日」
「なんでも日本でチョコを好きな奴にあげる日だと沙慈クンがスメラギさんに白状させられたらしいん
 だと」
「そうか・・・・・。トラウマにならなきゃ良いんだが」
最後のチョコを口に入れたライルは、ふと良い案を思いついた。
「せつなー、チョコやるよ」
「口に物入れたまま喋るな。今ので最後だろう?」
「ふっふーん♪」
ぶちゅ
珍しいライルからのちゅぅに、刹那は目を白黒させる。いや、嬉しいのだが・・・。
「どうだった?」
「チョコの味が凄かったな」
「だろ?」
悪戯が成功したような顔をしてライルは笑った。してやったりという表情に、つい刹那にも笑顔が浮か
ぶ。
「まったく・・・・・。お前には敵わないな」
そして負けじと今度は刹那から、ちゅぅをした。


「どうしましょうグレイスさん。らぶらぶ過ぎて、これストラトスさんに渡せないですぅ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
フェルトは深く深く溜息をついたのだった。


俺の自慢の×2 「凄いわ、ライル。今回は大活躍ね」 スメラギの絶賛に、ライルはまんざらでもない顔をして笑った。人間、褒められれば嬉しいものだ。豚 もおだてりゃ木に登る。ホントに登ったら怖いが(真顔) 「「当たり前だ」」 ライル本人の言葉ではない。他のトレミークルーが声のした方を向くと、本人以上に得意げな顔をして 立っているニールと刹那。しかし声がハモッたので、お互い奇妙な表情をして見つめあう。 「な、なにが・・・?」 割と地雷を踏む事が得意なアレルヤが、やっぱり地雷を踏みぬいた。2人はやはり得意気な顔をして、 アレルヤを見る。心なしかアレルヤが後ずさった。 「「俺の自慢の嫁・弟だからな!」」 やっぱりまたしてもハモッた。肝心の本人をまったく無視して、今度は邪魔すんなと言いた気な顔をし て、にらみ合う。 「刹那クン、ライルが君のなんだって・・・?」 「嫁だ。聞いてなかったのか?」 「ライルを嫁に出した覚えはないなぁ・・・。ライルだってお前の事婿だとは思ってないぞ。それに比  ぶれば、ライル明確に俺の弟だがな!」 「問題ない。直ぐに婿として認めてもらう」 「お兄ちゃんはライルの嫁入りは許しません」 「お前の許しは必要ない」 「お・・おい。兄さん?刹那も・・?」 割って入ろうとしたライルを止めたのは、スメラギだった。 「まったく、貴方も地雷を踏むのが好きね。このまま彼らの意識が貴方に向かったら嫁だ弟だと、絡ま  れまくるわよ」 「・・・・・・そっか」 「さ、あのトンチキはほっといて、撤退しましょう。皆、急いで静かにね」 「はいですぅ」 言い合う2人を置いて、トレミークルーはこっそりとその場から逃走したのだった。 「ああっ!?ライルがいない!いつの間に!」 「お前のせいだぞ、ニール」 「何でだよ!?お前のせいだろ!?」 2人のトンチキは、それからしばらく続いたのであった。
ホワイトデー 「う〜」 「どうした、ライル」 「あ、刹那」 悩んでいるライルの処へ刹那がやってきた。 「うん、この前兄さんにチョコもらったんだけど、なにか返さなけりゃならんらしくてさ、ちょっと困  ってる」 「そうなのか、なら俺もお前に返さなければ・・・」 「良いよ、兄さんから貰ったチョコのおすそ分けだったんだし・・・」 「そうか。なら口に赤いバラ咥えてスカート捲くしあげつつ、一心不乱にフラメンコを踊るというのは  どうだろう。ああ、危ないからバラのトゲは取っておけ」 「刹那、お前な・・・」 ライルは溜息をつきつつ、左手を額に当てる。 「そんなことして、本当に兄さんが喜んだらどうする!俺はその方が怖い!」 問題点はソコかい。 「・・・・・・なあ、刹那。酒はどうだろう。この前地上に降りた時に買ったものがあるし」 「ニールが酷い目に合うから、止めた方が良い」 「?なんで?」 「俺達には、優れたうわばみがいる」 うわばみって優劣あるんスカ。そのうわばみの持つ酒センサーは感度が恐ろしく良く、隠れて飲んでい ても当然のように姿を現す。そして本人以外、酔い潰されるのだった。 「そっか・・・・・それはダメだなー」 2人して溜息をついた。 月並みだが一番簡単そうなクッキーでも焼くか、と男2人で切なく作業していたところ他の男性陣に見 つかって、女性へのお返しになってしまった。しかもお目当てである当の兄までやってきて、作ってし まったのだから大失敗。 落ち込むライルに、刹那はポンと肩に手を置いた。 「やはり、此処は酒しかないようだな。それ持ってニールの処へ行って来い」 「でも優秀なうわばみが・・・・」 「心配するな、ラッセとイアンを生贄にしてうわばみを阻止してやろう」 どこのカードゲームだそれ。ファラオがやってくるぞ。 「有難う、刹那」 「ただし・・・・」 「?」 「持って2時間だ。忘れるなよ」 なんだか今度はシンデレラみたいになってきた。 「お、どうしたライル?」 「うん、この前貰ったチョコのお返しと言ってはなんだけど、俺と久々に飲まないか?」 そう言って酒瓶とグラス2つを掲げる。そこ、アレルヤのパクリとか言わない! 「気ぃ使ってくれなくても良かったのに。でもさ・・・此処は酒に関しては・・」 「大丈夫、刹那が説得してくれてラッセとおやっさんが犠牲になってくれているから。だけど2時間が  限界らしい」 兄は遠い目をした。多分、1番犠牲になったのはこの人だ。ラッセとイアンの運命に同情したに違いな い。しかし久々に邪魔なく、しかも弟とゆっくり酒を飲める機会はこれを逃すとないかもしれないと思 いなおす。 「そっか、じゃあ早く始めようぜ。入った入った」 「うん。あーでもつまみないんだよなー」 「良いよ、別にさv」 というわけで、尊い犠牲の元ディランディ兄弟はしんみりと杯を交わす事が出来たのだった。
トンチキ会話 「待ちわびたぞ、少年!」 見目だけは麗しいその男は、緑の目をきらきらさせて叫んだ。その言葉にトレミークルーは周りを見回 す。というのもトレミーには青年1人と三十路越えたおっさんしかいないからだ。 「こちらを見んか!少年!」 びしぃ!と指名されたのは刹那だった。刹那の眉間に縦皺が刻まれる。 「確かに出会った頃は、俺は少年だった。それは認めよう。だが今は妻帯者だ。もう少年ではない」 「妻あぁぁぁぁ!?」 刹那の発言にすっとんきょうな声を出したのは、背高のっぽのマイスターだ。『何を今さら』というト レミークルーの視線も気が付かない。 (な・・・なんてこった。刹那に妻がいたとは・・・。てことは俺は不倫相手?いやいや妻って誰だろ ?ミレイナ?犯罪・・・・にはなりきらないか。ミス・スメラギはどんなに良い男になっても、子供  という印象が抜けないと言っていたし・・・。じゃあフェルト?ああ1番しっくりくるかも) と、そこまで考えてライルは自分に視線が集中していた事に気が付いた。特に刹那の眉間の縦皺は更に 深くなって刻まれている。どうもライルの思考はバレバレのようで、不機嫌な顔のままライルの腰に手 を回して引き寄せる。 「おわっ!」 「俺の妻だ」 「え、俺ぇぇぇ!?」 ライルにとって刹那との関係は恋人という認識だった。前にミレイナに 「愛する人だから愛人で良いと思うですぅ」 と言われたが野郎同士なので付きまとう背徳感が更に2割増しになる気がして、却下した事はある。し かし妻と思われていたのは想定外。そう思うのはライルだけだったのだが・・・・。 「良いか、俺はこいつに(良い子の教育にはよろしくない発言の為、割合致します)少年にこんなテク  ニックはあるまい。だから青年だ」 赤裸々に語られて(主に夜)ライルは真っ赤になって口をぱくぱくさせる。 「ほう」 「刹那ぁ!なに、言ってんだよ!?って、止めろ!その慈愛に満ちた視線は止めてくれ皆!」 後日、イアンとラッセから心づくしの栄養ドリンク1年分をプレゼントされて泣き濡れるライルの姿が あった。 「なるほどな、わかったぞ、少年!」 ライルの犠牲は無駄になったようだ。目の前の男・・・グラハム・エーカーは爽やかにそうのたまった。 「貴様・・・・俺がじじぃになっても少年と呼ぶ気か」 刹那の機嫌が急降下。 「わかっている、君がもう少年でないという事は!承知した、少年!」 「・・・・・・・・」 人は分かりあえないのだろう。ライルはぼんやりとそう思った。
虎と狼 「待て!」 「身の危険を感じて逃げない奴はいないだろっ!!」 ライルは必死で刹那から逃げる為に、トレミーの廊下を全力疾走していた。CB入りをしてから程なく 刹那の「大好き」攻撃にさらされていたのだが、これがパワーアップして「愛してる」攻撃になったの だからたまらない。うっかり流されたらなにか、人として大切なものを無くしそうな気がした。 「だからっ!お前は兄さんと俺を重ねてんだよ!そういう事にしてくれぇ!!」 「何度言ったらわかる!?俺はニールに対してそんな気持ちを持った事はない!欲情しているのは、お  前だからだ!」 「公衆の面前(とはいってもギャラリーはいない)でなに、ほざいている!?兄さんがいた頃に、お前  が恋愛事情を理解してなかっただけだろーがー!!」 一体、この必死の鬼ごっこはいつまで続くのだろう。ライルはうんざりしてきた。 「あーもう!兄さん、助けて!俺の代わりに刹那に掘られろっ!!」 これまたとんでもない発言が(本音が)ライルから飛び出した。あの世では「ライルは助けたいけど、 俺も刹那に掘られるのはちょっと・・・」と苦悩する兄がいたのだが、それはまた別の話だ。 前の扉が開いてスメラギが出てきた。 「げぇ!?」 よりにもよって、スメラギがライルの前に現れたのである。どえらい勢いで走ってくる刹那とライルを 見て一瞬キョトンとしていたが、すぐに聡明な彼女には事情が察せられたらしい。ニヤリ、と人の悪い 笑みが浮かんだ。 正に前門の虎、後門の狼。 ライルは一瞬迷ったが突破しやすいのは前門の虎であるスメラギの方だ。彼女のおつむは素晴らしいが、 ライルの動きにはついてこれない。ので彼女が出てきた部屋に逃げ込む算段を一瞬でつける。無論スメ ラギの個室ではない。さっとスメラギを避けた時だ。 むにょ 男は女のおっぱいに弱い生き物だ。ライルとて例外ではない。しかも押し付けられているのはスメラギ の美乳ときたもんだ。うっかり固まる。 「えいv」 スメラギの声とともにライルは後に押されてたたらを踏んだ。そのライルの身体を支えたのは後ろから 伸びてきた腕。その腕はすぐにガッシリとライルの身体に絡みついた。 万事休す・・・・・ 「すまない、スメラギ。感謝する」 「あら刹那にはいつもお世話になっているから、気にしないで」 「俺はお中元かっ!」 「そうね、そうかも」 あっさりと頷くスメラギだった。ライルはそのまま刹那に拘束されたまま、どこかへ(多分刹那の個室) 連れて行かれたのであった。
ちみっこライル2 ・ライルは物心ついた時には、既にCBにいた。 ・両親兄弟は不明。 ・10歳の時、14歳の刹那と出会う。 ・なにがツボに入ったのか、ライルを溺愛する刹那。 ・ライルも刹那に依存。 ・ライルの年齢もあって、超清らかなふたり。 ・一期トレミーにもライルは乗船。 ・雑用係。 ・ニールとそっくりだが、偶然って事で。 ・ディアナ様とキエルみたいなもん。 ・ニールは刹那とライルだけで終わっている世界を心配している。 ・最終決戦でライルはクリスの計らいで、フェルトに連れられて助かる。 ・4年後再会した時、ライルはケルディムのガンダムマイスターになっている。 ・激怒する刹那を説得したのはティエリア。 ・ティエリアはライルの後見人になっていた。 ・絶対と思った世界がそうではなかった事に気が付き、自ら戦う意思を持ったライル。 ・そう言われるとぐぅの音もでない刹那。 ・刹那とライル、アダルトな関係に突撃。 ・刹・ライですから。
復活騒動 ニール・ディランディが復活してきた。ところがニールは何を思ったのか、皆の前に現れた途端、隣ど うしで立っている刹那とティエリアにこう声をかけたのだ。 「よう、成長したな〜二人とも。夫婦みてぇ」 次の瞬間ニールはイノベイドパンチとイノベイターキックをまともに食らって、壁に叩きつけられて倒 れた。魂弾け飛ぶかぐらいに驚いたのはライルである。ライルは慌ててニールのそばまで走り、ひざま ずく。 「お前らあれだけ兄さんを神聖視していたくせに、出会い頭にパンチ&キックとはどういう了見だっっ!!」 「まあまあ落ち着きなさいよ、ライル」 「ミス・スメラギ・・・・。これで落ち着いていられるとでも思ってんのか。やっと治療カプセルから  出られたというのに、また逆戻りかもしれねーんだぞ!」 「だっていつもの事だもの」 「へ?」 「ニールはね、前からコミュニケーションの一環として、アメリカンジョークを連発していたのよ」 「俺らアイルランド人だけど・・・・」 「そのたびにパンチ&キックをお見舞いされていたわ」 「・・・・・・どーいうコミュニケーション取ってんだよ、お前ら・・・」 そこまで言ってからライルは自分の袖をクイクイと微かにひっぱる力を感じた。慌てて兄の方を見ると、 なにやら右のひとさし指がくねくねと動いている。 「兄さん・・・・大丈夫って血文字で書かれても信憑性がないっつーか・・・」 困惑し果てて思わずうめく。すると今度は膝になにやらひんやりする感覚が。見るとそこには水たまり ができていた。 「ライル、お漏らしか」 「この歳でお漏らしするか、バカたれ!」 真顔で恐ろしい事を言う刹那に、ライルが噛みつく。 「なんだよ、この水たまりの発生源は・・・・・・」 それはどうもうつ伏せになったままの兄の顔かららしい。 「あら良かったわね、ニール。ライルが心配してくれてるから感涙しているのよ」 「兄さん!そんなに涙流したら脱水症状に陥るよ!!ああもう、涙溜まりで消えたからって、新たに血  文字書かなくていいからっ!」 喚くライルにとてとてと刹那がおもむろに近づき 「手伝おう」 と言った。 「有難う刹那」 「いいや、義兄さんは大切にしないとな」 「せぇぇぇぇつなぁぁぁぁぁ!!!」 いきなりニールは立ちあがった。 「ちょ、兄さん!頭強打してるかもしれないんだから、動くなって!」 ライルの叫びもなんのその、ニールは刹那を睨みつけた。 「ライルはお嫁さんには出しません!」 「嫁さんもらう側だろ、俺」 「いや、既にお前は俺の嫁なのだから貰わなくて良い」 「なに勝手に人の人生きめちゃってんのー!?」 「そうだ!ライルはっ・・・・・・あれ・・?」 「兄さん!」 やはりいきなし立ちあがったのが悪かったのか、ニールはそのまま倒れた。 「ほら見ろ!ミス・スメラギ、治療カプセル使わせてくれな」 「ええ、良いわよ」 「刹那、そっち持ってくれ」 「了解」 ニールはライルと刹那に抱えられ、退場してしまった。再会の感動どころではない。 「ふふふ・・・・・楽しめそうね」 この人はやっぱり、最強だった。
切ないお兄ちゃん 「少し訊きたい事があるんだが・・・・」 ブリーフィングルームでのすれ違い会話が終わった時、ニールはこそこそと長兄であるヨハンに近寄っ た。 「なんでしょう?」 「あのさ・・・・どうしたらあんな風に弟妹に慕われるんだ?」 「は?」 「特に弟」 ヨハンは思いもよらない質問に、つい不躾にまじまじとニールを見つめた。ヨハンは弟妹に慕われてい るのが当たり前の状況だったので、どうやったらと言われても困る。別に意識などしていないのだから。 「そう言われても・・・・・別になにも」 流石に困り果ててそう言うのだが、目の前の男の真剣な眼差しは相も変わらずヨハンを貫いていた。 「なんというか・・・・コツ教えて欲しいってさ・・・・」 「・・・・・貴方も長兄なのですか」 「うん」 守秘義務はどうした! 「そうですか。とはいっても、本当にコツなんてものはありませんよ。彼らに私を慕ってくれる理由を  訊いた方が早いとは思います。が・・・」 と目を上げるとニールの姿は無くなっていた。どうもヨハンの弟妹の処にダッシュしたらしい。ふぅ、 とヨハンは困ったように溜息をついた。 「あの子達に訊いても、多分分からないと言うと思いますよ、と言おうとしたのに」 せめて弟妹に害されないよう、祈るばかりだった。
浮気? ライルがユニオン圏で拉致監禁されたと聞かされた刹那は、直ぐに救出に行った。途中出会った金髪変 態は軽く一蹴。愛の威力は絶大だった。監禁されている場所を確かめ、突入した刹那が見たものは・・・・ ぽにて眼鏡と茶ぁしばくライルの姿だった。 「あれ?刹那!?どうしたんだよ?」 目を丸くしているライルは嘘を言っているようには思えない。 「いや、俺はスメラギからお前が拉致監禁されたと言われて・・・」 「えぇ?ここにいるようにって指示だしてきたの、ミス・スメラギだぞ?」 しばしの沈黙の後、ライルがおずおずと口を開く。 「じゃぁ、刹那は俺を助けに来てくれ・・・」 「先程は楽しかったな!少年!」 ライルのデレ言葉は、あっけなく打ち消された。そこには金髪変態の姿が。 「貴様、さっき確かに落としたはずなのに・・・・」 「おやグラハム」 ビリーの呑気な声がその存在を肯定する。 刹那の言葉もなんのその、金髪変態は刹那の肩に手を回した。 「先程は実に有意義な時間だった!情熱的にお互い(自機MS)への愛を存分に語り合ったからな!」 「なにを言って・・・」 「へぇ・・・・情熱的にお互いへの愛を存分に語り合った・・・・ねぇ・・・・・」 はっと気が付くと、ライルが満面の笑みを浮かべて刹那を見ている。しかし目は笑ってはいない。 「おや、どこからともなくワルキューレの騎行が鳴り響いてる。地獄の黙示録?」 ビリーの声に刹那は慌てて弁明しようとしたが、ライルの方が行動が早かった。 「ごちそうさま、ビリーさん。俺はこれで失礼します」 「あ、なんのお構いも無く」 「俺は構う!!待て、ライル」 さっさと立ち上がって、ライルはにっこりと刹那に笑いかけたやっぱり。目だけ笑ってないが。そのま まスタスタと部屋を立ち去る。後を追おうとした刹那ではあったが、グラハムの腕がシメコロシノキの ように絡みついて離れない。暫らくもがいた後、刹那はやっとその腕から逃れることに成功し、グラハ ムの胸ぐらを掴み上げた。 「貴様・・・・俺がどんなに苦労してあいつの心を鷲掴んだと思っている!俺の春はどーなる!?」 「春が過ぎたら夏だな」 「訳のわからん事を言うな!いや俺もガンダム発言で電波と言われたが、お前はそれ以上だ」 「お褒めにあずかり光栄の極みだな」 「褒めてないっ!」 がくがくと激しく揺さぶるが、どういうわけかちっとも動じないグラハムを放り投げ、刹那はライルの 後を追った。 「?どうしたというのだ、少年は?」 「グラハム、この『(自機MS)』っていうのが言葉に出てなかったみたいだよ」 「そうなのか?全部口に出したと思ったのだが。なら私も後を追いかけて弁明した方が良いか」 「余計こじれるから、止めて。まーあ恋愛にイベントはつきものだよね」 「そうだな」 なんか当事者をすっぱりと蚊帳の外に出して、彼らはまったりと納得したのであった。
遊園地にて どういうわけか遊園地にやってきたテロリスト共いやいやトレミークルー。ニールはぼんやりとその中 を歩いていた。本当はライルと一緒に回りたかったのだが、気が付けば刹那に持っていかれていた。悔 しいと思う反面、まぁ恋人同士だからなぁと思ったり。兄貴&兄貴分は大変だ。その時である。どっか から魂はみだしているような悲鳴が聞こえてきたのだ。ニールが間違えるはずはない、最愛の弟の悲鳴 だ。慌ててその悲鳴が聞こえてくる場所に向かったニールの眼前にあったもの、それは ウルトラ級高速回転するコーヒーカップ。 ニールの優れた瞳はいかに高速回転していても普段と変わらない表情の刹那と、完全に目を回している ライルを捕らえた。ああいう感じに高速回転する乗り物かと周りを見回せば、カップルだらけの周囲は 完全に引いていた。とにもかくにも止めてもらおうと1歩踏み出した途端、コーヒーカップは回転を止 めた。 「ライル!」 目を回してふらふらしているライルを刹那に代わって抱きとめる。 「吐きそうか?トイレ行くか?」 「あ・・・兄さん。俺ベイブレードの気持ちが分かったよ」 「そんな無機質の気持ちなんか分からなくて宜しい。って刹那!ライルは繊細なんだから、もうちょっ   と気を使えよ!」 そう訴えれば刹那はじっとニールを見つめて、おもむろに口を開いた。 「お前はライルに夢見過ぎだ。繊細な奴がマイスターなんぞになれるわけなかろう」 「なんだと!そんな・・・・こと・・・・・・・な・・・・・・」 一期の時は神経質な奴はいたが、その戦い方たるや大雑把も良いところだったのを思い返し、ニールの 反論は次第に小さくなっていった。 「ああでも」 ぽん、と刹那が手を打つ。 「感度は良いな」 次の瞬間、刹那はニールのブラコンキックをまともに受けて、空を飛んだ。 流石図太いマイスターだけあって、ライルは10分ぐらいで復活した。 「あーベイブレードって大変な仕事だったんだなー。これからは様付で呼ぼうかな」 「無機質にそんな感情持たんで宜しい。で、一体なにがどーなってるんだ、弟よ」 「あ、うん。最初はふつーに回ってたんだけど、真中にあるモンがくるくる回るんで刹那と一緒に一心  不乱に回したら、気が付いたらあのスピードになってました」 ケロリという弟にニールは目まいを覚えた。 「と、とにかく!戦闘で昇天しても慙愧に堪えないのに、コーヒーカップのウルトラ級高速回転でライ  ルが昇天したら、兄ちゃんは頭剃って出家します」 かなり本気での発言に刹那もライルも項垂れたのであった
画面 廊下で立ち止まり携帯画面を熱心に見詰めていた刹那を発見したライルは、気軽に声を掛けながら画面 を覗き込もうとした。何故か画面を隠そうとした刹那ではあったが、ライルの方が早かった。そしてラ イルは覗きこんだ途端、フリーズ。暫らく沈黙が続いた後、絞り出すような声でライルは尋ねた。 「それ・・・・・誰?」 画面には自分か兄かは分からないが、とにかくそんな顔が映し出されていた。それだけならフリーズは しない。問題は背景であった。お星様にバラの花、挙句の果てには点描も飛び交う、ライルにとっては 意味不明な世界が広がっていた。 「これは例の脳内イメージを画面に再現するシステムによって、俺の画面に焼きつけられたんだ」 刹那が滔々と説明する。最近開発されたというこのシステムは、今CB内では面白いと大人気。という 事は・・・・・・・? 「まさか・・・・・これ、お前の脳内にある俺だとか言わないわな」 震える声で尋ねると、ふぅと刹那が溜息をついた。 「俺じゃない」 「そうか、良かった」 心の底からそう思う。刹那とは所謂恋人同士ではあるが、こんな妄想されているのはごめんだ。 「安心しろ。俺はもっと赤裸々で生々しいお前を見ているから」 「そうなんだー♪安心・・・・・できるかっ!!」 確かにな。 「あ、分かった!」 現実逃避をした先でライルは閃いた。 「これティエリアの中の兄さんだな!」 「確かにティエリアはニールに夢見ていたようだが、お前に対する態度に修正せざるを得ない事になっ  たぞ」 「あ・・・・そうなの?」 「これはニールの脳内にいるお前だ」 刹那はメメントモリ級の火力に匹敵する言葉を言った。 「う・・・ウソだろ?だって同い年で・・・同じ性で・・・・」 刹那は簡単に説明をした。このシステムを面白がって試そうとしたのはニールだった。しかし自分の脳 内ライルを張本人にばれると怖いから、と言って刹那の端末を奪ってそこにニール謹製脳内ライルを映 したらしい。ニール本人は大満足していたが、流石にこの少女漫画的なものについていけない刹那は、 画面を消すかどうか迷っていた。 「ごめん・・・・刹那。兄さんがこんなに俺に夢見てるとは思わなかったよ。なんか俺じゃなくてエイ  ミーが生き残った方が良かった気がする。たとえ実の妹でも双子の弟にこんな妄想被せるより、マシ  だな」 「それは困る」 「なんで」 「俺がライルと出会えない。こうやって付き合う事も出来ない。俺はお前が生き残って此処にいてくれ  る事を感謝している」 「せ・・・・・刹那・・・・・・」 相変わらず直球でくる刹那にライルは恥ずかしそうに笑った。 「ああ・・・なんですかあの良い雰囲気は。お兄ちゃんはジェラシーしますよ」 真面目な用事があって刹那を探していたニールは、自分の行為がその雰囲気を作ったとも知らず、ちょ っとハンカチ咥えて拗ねていたのだった。
女装(DVDネタ) 「なんで俺達まで女装しなけりゃならんのだよ・・・・」 「まったくだね」 げんなりした顔をしてライルとアレルヤはのそのそと渡された衣装に袖を通した。抵抗を感じているの は彼ら2人だけであるらしく、元々女装するティエリアと無言の刹那は淡々と衣装を身に着けていた。 「ライルッ!!似合うなぁ!」 「!?なんで兄さんはふつーの制服着てんだよ?」 「だって俺、もうマイスターじゃねーもん」 「元マイスターなんだから、俺達と一緒に女装してろ」 緑色のドレスを着たライルが抗議するが、兄は鼻の下伸ばしてご満悦のご様子だった。その横ではきゃ っきゃとはしゃぐスメラギとミレイナ。そして満更でもなさそうに見ているフェルトとリンダ。憐れみ の視線をよこしたのはおやっさんとラッセだった。その顔には堂々と「マイスターでなくて良かった」 と書いてあり、それがライルを更にイラつかせるのだった。 刹那がひょい、と動いてライルの前にやってくる。むしゃくしゃしていたライルは此処で素敵な墓穴を 掘る事になった。 「刹那はメイドか。なら皆のお世話でもするのかぁ?」 「そうだ。俺はお前のお世話を思う存分にしてやろう。ああ、エロゲ的なお世話もな」 「なんで俺オンリー!?」 「愚問だな」 刹那はライルの手を恭しく取り、両手で包む。 「お前の頭に輝くものはなんだ?」 「え・・・ティアラ?」 「そうだ、ティアラは姫が着けるものだ。メイドは主人のお世話をする。姫が主人。なんの疑問がある」 そうのたまうのと同時に、ライルを肩に担ぎあげた。 なんという男らしいメイド。 そのままドアに向かった時 「ちょっと待ったぁ!」 実兄から声がかかった。ライルがパッと顔を明るくする。 「兄さん!」 「お前、仮にも姫をそんな荷物みたいに扱うメイドがどこにいる!?ちゃんと姫抱っこしなさい!」 しかし助けにはならず、ライルにとって更に状況は悪化した。 「嫌だぁ!!そんな事されたら俺、死ぬ!」 「安心しろ、ライル。お前を死なす事はしない。俺が全力で守ってやる」 「こんな状況で必要以上に男らしい事を言うな!やめろぉ!!」 ライルの暴れるのもなんのその、刹那はさっさとライルを姫抱っこして部屋を去って行った。 「兄さんの馬鹿ーーーーっ!!!!」 というライルの絶叫を残して。 「良いんですか、ニール」 それまで黙っていたアレルヤがニールに寄って来た。 「よう、アレルヤ。素敵な胸筋なチャイナ娘だな」 「褒めてないから、それ。でも本当に良いんですか?」 「なにが?」 「姫様、メイドにエロゲ的お世話をされますよ?」 ビキ、とニールが笑顔のまま固まった。そしてだらだらと滝のように汗が出てくる。 「し、しまったーーっ!つい荷物扱いされている方に注目してしまった!だから最後に馬鹿って言って  たのか!」 「気がついて無かったんですか・・・・」 呆れるようなアレルヤの言葉も既に届かない。 「今行くぞ、ライル!不埒なメイドからお前を助ける!」 走りだそうとしたニールは右手首をがっつりと握られてもんどりうった。振り返ればそこにはティエリ アの姿。心なしか縁起の悪い系オーラを放っているようにも見えた。アレルヤがさりげなく後退してい く。 「な、なんでしょう、ティエリア」 「ニール・ディランディ。貴方には僕のフォローにまわっていただきます」 「え、なんで?」 「僕のフォローをするはずだった刹那は退場してしまいましたからね」 「アレルヤだって良いじゃんか!」 「あ、僕は面が割れてるからだめですよ〜」 確かにな。 くっくっく・・・と笑うティエリアは多分、怒っているのだと思うと流石のニールも逆らえなかった。 アリー戦の時、増援として来てくれたのはアレルヤだけだったという。
朗らか 「俺の朗らかな顔が見たい?」 刹那は目をキラキラさせて頷くライルに振り向いた。これがすべての始まりで。ピュアな気分5%単な る好奇心95%の要求なのだろうが、いつもコンクリートで塗り固まったと言われている刹那はちょっ とトライする気になった。 お手本は勿論、ニール・ディランディである。 あの朗らか(除く対ライル)さを思い出しながら、自分では割と上手くマネができた朗らかな顔をして みた。 ところがその顔を見た途端、ライルは失神して今現在に至る。ご丁寧にも3日も意識不明だ。 「ライルーーッ!!兄ちゃん置いて逝かないでぇぇぇ!お前が死んだら兄ちゃんも死にますよっ!?良  いの!?」 というライルの実兄の声が治療カプセルが設置してある部屋に響いていた。最後は哀願なのか脅迫して いるのか良く分からないが・・・・。 無論、ライルが倒れた時にはニールに何をしたのかと詰め寄られた。刹那と2人きりの時に倒れたから だ。だが刹那が全てを話すと申し訳なさそうな顔をして謝罪してきた。 「すまないな、刹那。ライルの奴に後で言っとくから。刹那にも謝らせるからさ」 「何故だ」 「自分からリクエストしておいて卒倒なんて、いくらなんでも失礼だろ?」 ライルに対しては甘すぎるニールではあるが、朗らかな顔をして倒れられた刹那が不憫になったのだろ う。珍しく刹那に味方をしてくれるらしい。だが刹那にはもうどうでも良かった。早くライルの笑顔が 見たかった。 さてライルは刹那の朗らかな顔に対して良すぎて倒れたのか、怖くて倒れたのか?
墓参り 「俺はロックオン・ストラトスとして戦う」 ライルは家族と最愛の女性の墓の前で誓う。そしてこう付け加えた。 「俺の背中に張り付いている奴は、気にしないで下さい」 ライルの背中には子コアラ宜しく刹那が張り付いていた。一応最初は気を使って墓地の外で待っていた 刹那であったが風通しのいい墓地の事、どうも寒くなって来たらしくライルが決意を心の中でしている 後ろから墓を盾にして、ジリジリと近づきライルの胸を両腕で抱え込み両足はライルの腰を挟んだ。結 構疲れる体勢であるがライルとひっついた事で温かくなったのか、背中の物体は大人しくなった。どう やらまだ一応、気を使ってはいるらしい。 「兄さん、刹那と仲良いんだな〜とか言ったらぶっ殺す」 ライルはそれはそれは爽やかな笑顔で、墓にご忠告申し上げた。 一方あの世でニールは笑顔のまま滂沱の涙を流していた。 「ライル・・・・兄ちゃん死んだのに、お前にもう1回殺されねばならんのですか」 「あら、ライルったらあの子と仲良しなのね、アナタv」 「本当だ、良かったなぁライル」 そんなニールのブロークンハートをものともせず、後ろでご両親様が呑気な感想を申し上げていた。 「お義姉さま!今度のイベントは刹・ライに決まりましたね!」 「ええ、そうねエイミーちゃん。私も頑張って原稿描くわ」 さらにはその横で妹とライルの嫁(アニュー)がはしゃいでいる。 「ライル・・・・この人達の言動は許すの?ねぇ、ライルゥ・・・・」 兄の慟哭も両親のコメントも妹と嫁の腐女子発言も、ライルには知る由も無かった。
★日記にしょぼしょぼと書いていた欠片なお話パート2。 戻る