劇場版ネタ






 
日記ログ3


特権


「ほらロックオン、これ」
ライルがスメラギに捕まって連行された先にあったのは、2枚のポスターが貼られた部屋だった。1枚
はクアンタ。もう1枚は刹那と見慣れぬ銀髪の男のツーショット。
「誰だ、これ?」
「あ、これが新キャラでしょ」
「ふーん・・・・」
じーっとそのツーショットを凝視するライルに、スメラギは悪戯っぽく笑って肘でライルを突く。
「どうしたの、複雑そーな顔しちゃってv」
突っ込めばあからさまに慌てる。
「べ、別になんでもない!あ、俺サバーニャみてくる!」
苦しいどころか呼吸困難に陥りそうなリアクションをして、ライルはその部屋から慌ただしく出て行っ
た。
「んふふ〜v可愛いんだから。でも放ってはおけないわよねvピ・ポ・パ♪あ、刹那」
端末に出てきた青年に向かって、スメラギは上機嫌で笑った。


「あ〜あ、なにやってんだろ、俺」
サバーニャの処に寄って部屋に帰ってから、ライルはずっと落ち込んでいた。原因はさっきのツーショ
ット。とても友好的に見えないものの、刹那と新キャラのツーショットがライルには面白くなかった。
つまりそれは・・・嫉妬。今までは刹那と自分のツーショットが多かった為に、それが当たり前だと思
っていたのだ。自分の図々しさに眩暈がした。

と、いきなりドアが開いて驚く間もなくとある人物が飛びこんできた。
「ライルっ!」
「刹那・・・・・?」
目を丸くするライルの前で、刹那はいきなり拳を振り上げてなにやら力説を始めた。
「安心しろ、ライル!あの新キャラがお前に手や足や腰を出さないよう、俺が守ってやる!」
刹那がやってきて新キャラの話を始めた処をみると、スメラギから話がいったのは言うまでもない。し
かしそれにしては刹那の様子がおかしい。盛んに腰々と連発する。スメラギは戦術予報士だ。行動や作
戦といったものはその後ろに必ず感情が伴う。それを見抜く力があるからこそ、相手の裏をかけるのだ。
スメラギは正確にライルの心情を見抜いて刹那に連絡したはず。なのに何故あの新キャラが自分に手を
出させない為に奮戦しているという話になっているのだろう?
「いや待て刹那。俺、別にあの新キャラに手を出されるわけでもねーし」
「甘いな」
「・・・・・・そう?」
「あのいやらしい笑顔。奴はきっとお前を知ったら手や足や(以下略)」
「決めつけんの良くないとは思うが・・・・」
でも悪い気はしない。あの刹那が自分にこんなにも感情を丸出しにしてくるなんて、嬉しい。末期だな
ーと自分でも思う。
「だが安心しろ。俺が00がアニメ業界に誇る随一の変態にある事無い事吹きこんで、けしかけておい
 た」
真顔で恐ろしい事を言う刹那。割とライル絡みだと容赦しないのだ。
「そ・・・・そっか・・・・・無い事もか・・・・」
ライルはちょっとだけ、新キャラに同情した。


「なんなんです、貴方は!?」
「貴殿が(ここら辺がまだブシドーが残っている)ガンダムをこますなど、おこがましい!ガンダムを
 こます・・・もとい倒すのはこの私だーーーーっ!!!」
「誰かーーーーーっ!助けてぇぇぇ!」



主人公として 「これだよ、兄さん!これこそが正しい主人公の姿だよ!」 がゆん漫画の刹マリを読んだライルの第一声がこれで、始まりだった。 「俺みたいな三十路過ぎのおっさんよりも、刹那にふさわしいわな!」 「いやライル。マリナ姫は俺らと同い年なんだから、その理屈で言うと彼女三十路過ぎのおばさんにな  っちまうぞ?」 ニールの指摘にライルは爽やかな笑顔で答えた。 「なに言ってんのさ。年なんて美人には関係ないだろ。というわけで、俺は刹那とさりげなく距離を取  ろうと思う」 わざわざ宣言してくる弟に兄は嫌な予感がした。そしてそんな予感は必ず当たるのである。 「勿論、協力してくれるよな?に・い・さ・ん?」 にっこり笑いかけられる。元よりライルのお願いは基本的にきいてしまうニールであった。 その後のブリーフィングルームでニールは顎が外れるかと思うほどの光景が展開されていた。どう優し く見たって、刹那とライルの間には10M程の距離ができていたからだ。 (それさりげないって言いません!弟よ!) 刹那も怪訝な顔をしてライルの方を見ている。いたたまれない。だがスメラギは勇者なので、そのまま ミーティングを始めた。 どのくらい経っただろうか、刹那がさりげなくライルとの距離を詰めた。が、ライルもすぐ距離を取る。 あっという間に蟹の大運動会の始まりである(壁伝いに横向きに移動するから)最後にはスメラギの鉄 拳が落ちて、その場はお開きとなった。 目に見えてイライラを募らせる刹那を見ているのは忍びないが、ニールはライルと刹那の間に入って頑 張った。どのくらい頑張ったかというと、平九郎をヒヨちゃんやミケの暴力から守るチョビくらい。流 石に刹那はヒヨちゃんのように蹴る事はしなかったが、機嫌はどんどん悪くなっていく。流石に刹那を 気の毒に思って、真相を話そうかと思った矢先に、刹那がニールの部屋にやってきた。 「原因はこれだ」 ほい、と渡してやると刹那は怪訝な顔をした。 「これはがゆん漫画?」 「ああ、そこのお前とマリナ姫とのシーンを見て、ライルがこれこそが主人公の正しい姿だーと言いだ  して・・・」 「その後の展開は言われなくても分かった」 そう言ってくるりと背を向け部屋を出て行こうとする。 「あいつなりにお前の事考えての行動なんだ。乱暴はやめてくれよ」 心外そうに振り向く刹那。 「するわけがない。あいつに乱暴しようとする輩は切って捨てる」 時代劇な台詞を吐いて、刹那は部屋を出て行った。 その次のミーティングの時、刹那は今までのいらいらが嘘のように晴れやかな表情とツヤツヤしたお肌 で現れた。ライルは体調を崩して来られない、という事でクルーはこの奇妙な出来事の終焉を知ったの だった。そんな中、ライルの様子を見に行ってやらないとな・・・とニールは一人ごちたのだった
青ハロ 「昨日同じく、何故ライルが青ハロを選んだのか騒動を開始したいと思います」 「アレルヤ、誰に向かって何喋ってんだお前」 アレルヤに噛みつくライルを後ろから刹那が愛の羽交い締め。 「だから俺への愛だと言っているだろう、アレルヤ」 「はーなーせー!」 「俺からの愛の抱擁だ、遠慮するな」 刹那は怖いもの知らずなのかもしれない。淡々とライルが失神しそうなくらいの臭い台詞を連発した。 しかし他のマイスターからはどう優しく見積もっても、後ろから絞め殺しているとしか思えない光景だ った。怖いから言わないけど。 「刹那の言い分だと、ずっと相棒のオレンジハロは僕への愛にならないかい?」 恐ろしい超兵だった。おまい、彼女いるだろが。 「それは違うな。単に性能が良かっただけだ」 刹那はにべもない。ライルは最初から『相棒』として手渡されていただけなので、深い意味等分からな い。 「それを言うなら『HARO』を搭載して兄弟仲良くしてやった方が良かったんじゃないか?」 やっぱり突然現れたティエリアが突然発言をして、刹那以外を心底驚かした。しかしティエリアの言う 事も一理ある。なんたって『HARO』はすべてのハロの『お兄ちゃん』なのである。性能的にも申し 分なく、トリニティがいない今、彼は暇なはずだ。が、しかし此処でその疑問は晴れる事となった。 「いけません!あんな言葉遣いの悪い奴を一緒に乗せて、ライルの言葉遣いが悪くなったらどうすんだ!」 それまで刹那の自称抱擁に眉間に皺を寄せて耐えていたらしいニールが、あっさりと種明かしをしたの だ。それにしても30越えてまで言葉遣いを心配されるとは・・・。 「兄さん、アンタ本当に明後日の方向に過保護だな・・・・」 呻くようなライルの声を、ニールはすっぱりと流した。 「大体俺は緑ハロを推したのに、なんで青になってますか。日本の信号の青の反対パターンですか」 日本の信号は確かに進めは緑色なのに、何故か青と言うミステリー不思議発見。 「ニール、緑ハロは許可できないと何度も言ったはずですが?」 ティエリアが映像なのに眼鏡をクイと押し上げて言う。 「なんで?」 ライルは初耳だったので、目を丸くした。青ハロと緑ハロは色しか違わない。 「初代に喧嘩売ってると思われても困るからだ。ただでさえ0ガンをエクシアが倒して原理主義者に不  快な思いをさせたらしいからな」 思いっきり、リアルの話だったーーーーっ! 「Vガンは使ってたのに・・・・」 凹むニールに再びティエリアが説得するように言う。 「あれは監督が同じだからこそ許された所業だ。今回やったらきっと原理主義者がボールのガンプラ片  手に劇場を襲いに来ますよ?」 「・・・・・・・・分かったよ。残念だけど青ハロにライル守ってもらうか。な、ライ・・・っていね  ぇ!なぜぇ!?」 「ああ、さっき刹那にかけられた愛の抱擁で意識落としたみたいなので、連れて行かれましたよ」 「何故止めなかったんだよ、アレルヤの意地悪!」 「だっていつもの事ですしね」 にっこり。 アレルヤは悪意のない笑顔を向けたのだった。
生き延びる順番 刹那の横で、モスグリーンの機体から爆発が起こった。失速して刹那の視界からは見えなくなる。 「     」 叫んでその機体を追う。そのコクピットが開き、鮮やかなオレンジ色と少々見にくい青色が外に出てく るのが見えた。出てきたのではない、外に放り投げられたのだ。そしてコクピットは閉められ、更に背 後の星の引力に引かれるかのように落ちていく。パイロットは脱出している気配がない。 「     」 機体がぐるりと回って刹那に後ろを向けたと思えば、そこから排出されるのは純正の太陽炉。そしてそ の機体は力尽きたかのように、ぐったりと動かなくなった。 「   !!」 目の前で、モスグリーンの機体が爆発した。そのMSに手を伸ばした刹那のクアンタ等、見向きもしな いで。 「           !!!!!」 刹那は絶叫した。 「!」 目を覚ますと見慣れた個室の天井が目に入る。 「夢・・・・・か」 刹那はのそりと起き上がる。心臓が激しく鼓動を打っていた。縁起でもない、仲間が・・・彼が死ぬ夢 など。だがじっとしておられずに、刹那はアンダーに上着だけを羽織った姿で部屋から飛び出した。 彼は部屋にはいなかった。あんな夢の後だ、生きて動いている彼を見て安堵したかったのに・・・。 「あれ?刹那、お前今睡眠時間だろ?なにしてんだ?」 「・・・・ライル」 気落ちして部屋へ帰る途中に、その彼・・・ライルと出会った。夢の残像が蘇り、刹那はライルの顔を 見つめた。意識したわけではなかったが安堵のため息と「生きてた・・」という呟きがでてしまう。ラ イルは目を丸くしていたが、何事かを察したのだろう。困った顔をして頭を掻く。 「あのな、俺はどうあってもお前より先に死ぬんだぞ」 今度は真剣な顔をして言う。刹那は頭をハンマーで殴られたような衝撃を覚えた。 「何故、そんな事を言う?戦闘があれば分からないだろう」 「いいや、お前が回避できるものを俺は回避できない。被弾の確立は面白くもないが俺の方が高いだろ。  それに、お前はイオリア計画の中心だ。死なすわけにはいかない。お前が死ぬのは最後だよ、刹那」 「そんな事・・・・」 「それにそこを生き延びても俺は普通の人間だ。お前とは生きる時間が違う。これは俺だけじゃなくて  トレミークルーにも言える事だけどな。お前と共に生きていけるのはティエリアぐらいだ。自分の人  生を受け入れろ、選ばれたんだからな」 確かにイノベイターになった今、刹那は細胞の老化を押さえられている。普通の人間より遥かに長い時 を生きる存在なのだ。頭では知識では分かっていたが、目の前の現実を突きつけられて改めて『長く生 きる』ということのデメリットを思い知らされる。失いたくない存在が『時』という魔物によって奪い 去られていく。これから・・・・ずっと。固まった刹那に、ライルは苦笑した。 「俺もきっとアレルヤもクルーも、お前を全力で守るだろうな」 「お前はそれでいいのか?」 愛しい女の仇を守るというのか?刹那の言葉にできない問いかけを察したのだろうか。 「良いんだ。それに俺にとって大事な人はほぼあっちの世界にいるから、気にスンな。じゃ、辛気臭い  話はこれまでだ。ちゃんと睡眠とれよ、刹那」 そうやって去っていく彼を刹那は見つめ続けた。残酷な男だと思う。少しも気休めを言ってはくれない。 俺は生き残るよぐらい言ってもらいたかった。刹那は首を横に振った。彼は『出来ない約束はしない主 義』だという事を思い出したからだ。生き残る気はないのかもしれない。亡くし続けた彼の人生を思う と。そして擦り抜けていく自分の腕から。 だが 「それでも俺と共に生きて欲しいと願うのは、お前にとっては迷惑なのか・・・?」 刹那の呟きは誰にも聞かれる事もないまま、空しく消えていった。ライルの・・・心が見えなくなった。
鈍さ 「挨拶しなくていいのかい?」 ライルの問いかけは 「その必要を感じない」 とばっさりと切られた。 「まったく、鈍いんだよイノベイターのくせに」 ライルがそう呟いた次の瞬間、コクピットが開きあっという間にその中に放りこまれる。一瞬の出来事 だった故に、受け身も取れずにライルはコクピットへ文字通り転がり込んだ。 「な・・・・」 気がつけば刹那の膝に横向きで座っている自分。至近距離からジロリと刹那が睨んでくる。フラッグの 操縦を自動に変えてから、刹那はバイザーを上げる。そしてさっさとライルのバイザーも上げてしまう。 更に顔を近づけてライルを凝視した。ライルの頬が面白いように赤くなっていくのを確認してから、囁 いた。戦略家だな、おまい。 「俺にはお前がいる。それで十分だ」 ライルは目を丸くした後、ふにゃんと表情が嬉しそうに崩れた。この2年でライルは刹那との色々な確 執を乗り越え、トレミーでも白い目で見られるぐらいラブラブバカップルになっていたのだ。こんな事 を言いながら、実際刹那がマリナに会えば落ち込むに決まっている。刹那にとってマリナは恋人だのと いうより、同志という意味合いの方が強い。それはライルも知っているだろうに。そんな事を思ってい るとするり、とライルの腕が刹那の背に回る。刹那はライルの腰と肩に腕を回して抱きしめた後、静か に口づけた。
再会 「刹那が君に会いたがっている。良ければ来てもらえないか?」 ヴェーダを通してティエリアからそんな申し出があり、ライルは1にも2にも無くYESと即答した。 もう会えないと思っていた恋人に会えるならば、誰だって会いたいだろう。 そんなこんなでELSの星に来たライル。空気はどうなの?とか細かい事は気にしてはいけません。刹 那を待って立ちつくすライルの周りを、おそらくは歓迎しているのだろう。ELS達がくるくると回っ ている。ハロみたいで可愛いとは思ったが、なんせ身体のサイズがハロとは大違い。うっかり風圧で跳 ね飛ばされそうになった。 シャリーン その音の方に跳ね飛ばされそうになって顔面蒼白となり、荒い息を吐いたライルが顔を向けると、懐か しい姿がこちらに歩いて来た。 「せつな!」 思わず走り寄って抱きつこうとして、ライルはぴたりと動きを止めた。 「?どうした、ライル」 「な・・・・・」 「?」 「なんというはぐれメタル色」 久し振りに会った恋人は、メタリックになっていた。 「なーる程、あいつらと分かり合う為に同化した・・・という事か」 「ああ、その方が手っ取り早かったからな」 再会の場で座り込んだまま、話をする。ELSには「家」という概念が無い。なのでどこで話しても同 じという事らしい。ELS達は気を利かせてくれたのか、もう傍にはいなかった。 「目は金、身体は銀か。真珠があればプレゼントに最適だな、おまえ」 「俺に金銭的価値はないぞ」 「なんだかひのきの棒振り回して経験値よこせーっ!って追いかけたい気分だ」 「経験値はよこせないが、お前に追いかけられるのも良い刺激かもしれないな」 相変わらず本気なのかわからない顔で、淡々と言う刹那にライルは安堵する。誰だって恋人がぎんぎら ぎんになってたら驚くだろう。ふとライルの頬を刹那の両手が包み込む。そのまま顔を近づけられ刹那 の意思は分かったから、ライルは静かに目を閉じた。刹那の唇はやはりメタリックになってしまったせ いか、ライルの覚えている感触とは少し違って寂しくなる。大人しくちゅーを受けていたライルがふと 視線を感じて目を開けると、いつの間にかELSの群れが周りを取り囲んでいた。 「っ!ぎゃあああああ!」 思わず刹那を突き飛ばす。 「あ、悪い刹那!大丈夫か?」 「どうした、いきなり」 「どうしたもこうしたも!ELS達がどこ部分で見てんのか分かんないけど、見てるじゃねーか!」 「ああ・・・彼らは俺達みたいにまぐわる必要がないから、こういう行為に興味があるらしい」 「まぐわる言うな!・・・・・って事はこれ以上する場合もこんな状況下で?」 身を隠す処がまるで無いのだ。久し振りの逢瀬にライルだって刹那といたしたいのだが、こうもギャラ リーがいるのでは・・・・・。しかし何年か此処で過ごして来た刹那には些細なものだったらしい。 「安心しろ。お前の中の感覚は共有する事は出来ない、と話し合って彼らも納得済みだ」 「な・・・・・・なか・・・・・」 あまりにもあけすけな言葉に、ライルの方は言葉を失う。硬直したライルをどう解釈したのか知らない が、刹那はあっさりと押し倒した。 「嫌だあ!こんな変態プレイ、したくねーっ!」 「なら彼らには遠くに待機してもらって、そこから生温かく見つめてもらおう」 「変わんねーよ!馬鹿野郎!!ぎゃお!」 じたじたするライルに刹那は強硬な手段に出た。ELS達が遠くから生温かく見ているのが分かる。 「で、でもお前パイスーごとメタリックじゃないか!できんのか?」 出さなきゃいけない場所もある。すると敵も然る者、にやりと笑うと器用にパイスーだけ掻き消した。 万事休す。 「ぎゃわあああああああ!!!」
「私に良い考えがあるわ」 CBの頼もしい(色んな意味で)スメラギがなにか思いついたらしい。 「だから一旦、ライルとの尻尾の絡みを解いてちょーだい、刹那」 「嫌だ」 即答か。しかしスメラギはめげない。 「この決戦が済んだら思う存分絡めて良いから」 「・・・・・良いだろう」 「良くねーだろうが」 納得した刹那と半眼になるライルだった。 「で、考えって?」 犬耳のまま、ニールが尋ねる。ライルはやっと解放されて尻尾の付け根を擦っている。刹那がその動き をみて色々感じるのか耳がぴくぴく動いたりしていた。狐の尻尾をピンと立ててスメラギは力強く叫ん だ。 「萌えは宇宙を救うのよ!」 「カティ、これから私達でELSへのミッションを開始するわ」 「何か策があるというのか、クジョー」 「大ありよvまかせて」 「わかった、頼む」 「ハイハイ」 トレミーから何かの画像を放射しているのが分かった。その画像には茶色のねこ耳とねこ尻尾、ミニス カの男が魂抜けたような表情で映っていた。ざわ、と友軍にどよめきが起こる。何か言われたのだろう、 そのミニスカ男が半べそ状態で笑顔を浮かべ招き猫のようなポーズをとり「にゃあぁん」と鳴く。その 男の後ろでどさっという誰かが倒れた音が聞こえた(倒れたのはニールだ) (クジョー!なんだ、これは!?) 唖然とした後、苦情を言おうとしたカティはELSが群れを成してトレミーに特攻していくという報告 に固まった。怒らせてしまったのか!? しかしELSはミニスカ男の画像の周りに円を描き、くるくると回りだした。心持ち、はしゃいでいる ように感じる。・・・・・喜んでいるのだろうか? 「刹那、分かり合えた!?」 「ああ・・・・萌え〜と叫んでいる」 「ほーら見なさい!萌えは宇宙共通なのよ!」 スメラギは胸を張った。地球は守られたのだ!ビバ萌え! そうして・・・リーサ・クジョーは萌えにより地球を守った英雄として、ライル・ディランディは萌え を演じて和解させた萌え人として、長く語り継がれていくのであった。 「つがれたくねーーーーっ!」
最期の言葉 遠い意識の中で刹那はある人物が自分を静かに見ている事に気がついた。くせ毛の茶髪に緑色の瞳。穏 やかな微笑みを湛えるその顔を持つのは2人いる。だがその彼らを刹那が間違うはずはない。1人は自 分の信念を支え続けた大事な兄貴分。1人は自分が本当に愛した愛しい存在。 「ライル」 呼びかけるとふわり、とその笑みが深くなった。その存在をこの腕の中に抱きしめたくて踏み出そうと した足が止まった。ライルの後ろに人影を認めたからだ。ライルが振り返る。 「アニュー・リターナー」 ライルが心底愛したただ1人の女性。そしてもう1人。 「ニール・ディランディ」 ライルを誰よりも愛したたった1人の兄。動けない刹那の前でアニューがライルの腕の中へと飛び込ん だ。彼女の身体をライルが抱きしめる。その肩に腕をまわしたニールがアニューごとライルの身体を引 き寄せる。3人共嬉しそうに笑っていた。 そして そのまま2人に促されてライルは刹那に背を向け、振り返る事もせずに去って行く。 「ライル!」 叫ぶと細い声が届いた。 「刹那に会えてよかった」 と。 50年の時を経て刹那は地球に戻ってきた。マリナ・イスマイールは昔の優しさのまま、刹那を迎えて くれた。そのマリナと共に住みながら刹那はかつての仲間たちの歩んだ軌跡を探した。そして・・・大 戦になりそうだった戦火に身を投じて、ライルが戦死したのを知った。あの時のライルは死にゆく一瞬 で、刹那に会いに来たのだろう。奪ってばかりの刹那に「会えてよかった」とただ1言言う為だけに。 「すまない・・・すまない、ライル」 共にいると誓った。 絶対に手放さないとも誓った。 その誓いを破り、無情にも置いて行った自分に。 優しい一言を残す為に。 刹那が自分を責めないように。 「俺はまだお前の事を愛しているよ、ライル」 花に囲まれた優しい場所で、刹那はライルに届いて欲しいと願いながら呟いた。
兄のぼやき みなさん、こんばんは。ニール・ディランディです。 俺が天国に来て早数年。色々ありましたが、1番言いたい事。それは 刹那、なに俺の愛する弟に性的な意味で手を出してますか。まさか俺の代わりとかそういう意味で手を 出したのなら、遠慮なく狙い撃ちますよ。大丈夫高々度狙撃で地球から成層圏を狙い撃てますから、天 国からでも現世に狙い撃ちできます。 つか現世TVでこういう展開になってしまった時に固まってましたら、弟と同じくらい愛している妹の エイミーさんが「刹・ライOK」とか言って腐女子になられました。責任取って下さい。 ライルの嫁のアニューさんに失礼だろう!と説教しましたら義理の妹の当の本人アニューさんに 「気にしてません。私も刹・ライOKですから」 と言われて立場を無くしました。ライル、お前の嫁さんは理解力があり過ぎです。今も実と義理の妹さ んズは俺の後ろで今度のイベントに出す本の原稿をしてます。俺の顔をモデルにしてライルの顔描いて いるのは間違いありません。妹ズは刹那とライルのうっふんシーンを観たがるので、俺が現世TV視聴 禁止にしてしまったからと思われます。兄として男としてライルのうっふん顔観せるわけには参りません。 後、刹那さん勝手に自分の妄想に俺を出して語らせるの止めて下さい。リヒティとクリスも知らない内 に出されて驚いてましたが、モレノさんがショックを受けてダンボール箱に引き籠ってから1週間過ぎ てます。これも責任取って下さい。 しーかーもーライルを置いて行きましたね?確かにあの状況ではしゃーないとは思いますが、少しぐら いライルやトレミークルーにお礼の言葉でも言ってから、旅に出やがりなさい。この恩知らず。 ライル!お前が天寿を全うしてから(此処が最重要ポイントです)こっちに来た時に、俺がうんとお前 を可愛がってやるからな! 「ニール兄、それってニル・ライ?」 嬉しそうに言わないで下さい、実妹よ。お前は自分のお兄ちゃんズが性的な意味でいちゃこらしても平 気なのですか?・・・・・・平気なのですか、そうですか。 せぇつなぁ!お前、寿命切れてこっちに来た時は、覚えてやがりなさい!
変態強襲 それはグラハム・エーカー率いるソルブレイド隊と接触した時の事。隊長であるグラハムとトレミーク ルー(フェルト除く)は邂逅を果たした。 「アンタのおかげで刹那も俺も助かったよ」 そう言ってライルは右手を差し出す。 「それはなによりだ」 グラハムも一応右手を出して握手をする。 「トレミーを代表して私からもお礼を言わせていただきます」 スメラギとも握手を交わした後、グラハムは刹那に会いたいと言い出した。しかしその申し出は刹那が 意識不明だという事で断られる。少しがっかりしたようだったが、グラハムは口を開いた。 「どうだろう、私に考えがある。上手くいけば少年の意識を戻せるかもしれない」 「え、本当ですか?」 「ああ・・・。その為には少年の大事な人間が必要になる」 「・・・・・それは生贄?」 「ある意味では」 そんな会話を聞きながらライルは考え込んだ。 (刹那の大事な人か。困ったな、兄さんあの世だしなぁ。なんとか降臨できんものか) ふと気がつけば自分以外のトレミークルー全員の人差し指がライルに向けられていた。 「え?なにごと?」 キョトンとするライルをさっさとほったらかして(いい加減このノリにクルーは慣れているのだ)道を 開ける。 「なら行こうか」 「え?どこへ?」 「無論、少年の処へだ」 ????というマークを飛ばしまくりながら、ライルはグラハムに腕を取られて引きずられて行った。 「あ・・・ロックオン?と・・・?」 刹那の寝ている部屋にいたフェルトが意外な組み合わせに目を丸くする。そんなフェルトに恭しくグラ ハムはご挨拶をした。 「実はこの少年を起こす為に、私に考えがあってだね。それには彼の協力が必要なので借りて来たのだ」 「俺はレンタル物かい」 「なので心配しなくて良い。だが集中したいので、少々席を外してはもらえまいか?」 そう言われてフェルトはどう反応して良いか分からない、という表情でライルを見つめた。なにがどう なっているのかさっぱり分からないが、ライルはおざなりに頷いて見せた。するとフェルトの方でも納 得がいったようだ。彼女は少しばかり心配そうに刹那を見た後、出て行った。 やっぱり引きずられて刹那のいる部屋に入る。目を覚ます事も無く、昏々と眠り続けている刹那の姿。 「刹那・・・・・・」 ライルが呟く。すると腕を放したグラハムがライルに向き直った。 「最初に詫びておこう。だがこれは必要な事だから、許容してくれたまえ」 「?なにを・・・・?」 言うが早いかグラハムはいきなりライルをぎゅむ、と抱きしめた。 「あぎゃぁ!?」 「ふむ、なかなか抱き心地は良いな」 ライルの動揺もなんのその、グラハムの手の平はつつつつ〜と背中を下がり、むにんとライルの尻を掴 んだ! 「ぎゃあおぅえ!?」 動転したライルは先程のグラハムの言葉を忘れ去って、バタバタと暴れだした。そしてこともあろうに グラハムの左手さんとライルの息子さんが遭遇した。 一方その頃、あの世では・・・・ 「あの野郎!ライルと刹那を助けたから良い奴かと思ってたら、ライルの息子さんにタッチ☆など、不  埒なおまえのその命が欲しすぎるわっ!狙い撃つだけじゃ飽き足らん!狙って乱れ撃ってやるーーー  ーっ!」 「大変だー!ニールが暴れだしたぞ!」 「誰かアニュー呼んで来い!」 てな感じで、阿鼻叫喚に陥っていた。因みにアニューは弟の嫁と認識しているので、彼女の前では格好 付けたがる為、大人しくなるのだった。 さてこの世ではまだライルとグラハムの不毛な攻防戦が繰り広げられていたのだが、突然グラハムがラ イルを押し倒した事で、新たな戦いが起ころうとしていた。しかしグラハムの様子がおかしい。なんだ か恨みがましい顔で自分の背中をさすっている。そのグラハムの後ろには、いつの間に目覚めたのか憤 怒の炎を背負ったすんごい表情の刹那がいた。どうも起きぬけに右足で思いっきりグラハムを蹴っ飛ば したらしい。 「せっかく君の覚醒に協力したというのに・・・・」 「やかましい、ライルの息子さんに触って良いのは男では俺だけだ」 「ほぅ」 「なに言ってんだよ、刹那!」 ライルは慌てるがグラハムはひょこり、と立ちあがって刹那に向き直る。 「一応、詫びは言おう。だが私は君に是非とも覚醒してもらいたかったのでな」 「覚醒はした。どうも脳細胞も怒りパワーによって治ったようだ。それには礼を言おう」 「ええ!?イノベイターってそんな事もできるの!?」 刹那が異常なだけだ、というティエリアのぼやきは誰にも届かなかった。
イノベイターの会話 刹那以外に認定されたイノベイター、デカルト・シャーマンが何故かCBにやって来た。取りあえず歓 迎会と称して酒盛りをするクルー達。そんな中、ミルクを啜りながら刹那がデカルトに話しかけた。 「そういえば、アンタは終始監視されてオ○ニーすら出来なかったらしいな」 「そうだな」 ぶーっと良識あるクルーが酒を噴き出したが、ふぁーすといのべいたぁ様は歯牙にもかけなかった。 「気の毒だ。一方その頃、俺は突っ込みまくりだったが」 「何言ってんだ、刹那ぁ!」 悲鳴のような声を聞いて、刹那は会話を脳量子波に切り替えた。 『で、俺は相手に関して1言も言ってないのにそれは自分だと、壮絶に地雷を踏んでいるのが俺の妻だ』 「へっ!?」 デカルトが刹那に振り向き、妻ことライルを凝視した。 「刹那っ!お前またロクでもない事、脳量子波で言ってんな!?」 『だが変な処でカンが良い』 「ああ・・・・・なるほど」 納得したように返事を返す彼に、刹那は目を文字通り爛々と輝かせる。 「だがアレは俺のものなので、手出しするな。したらELSの渦に叩きこむ」 その脅しにデカルトの頬がヒクリと引き攣った。加減というものが分からなかったらしいELSの「ね ぇねぇ聞いて聞いて」攻撃に晒された彼にとってそれは恐怖以外なにものでもなかった。コクコクと頷 くデカルトを満足して見た後、刹那はまだ喚いている妻とやらに寄って行く。そっとその手を取った。 「そんなにヤキモチを焼かなくても良い。俺は浮気はしないから、安心しろ」 「そんな事、言ってんじゃねーよ!」 わーわー騒いでいるのを呆然と見ているデカルトに、ラッセがぽそ、と囁いた。 「なんかロックオンに関して危険人物と思われたようだから、ロックオンとの接触は気をつけろ。ホン  キでELS玉ねぎにでも叩きこまれるぞ」 そう言われてなんとなく此処に来てしまった事を後悔している、デカルトだった。
★日記にしょぼしょぼと書いていた劇場版関係の小話。 戻る