パンチ・パンチ・パンチ
 






















      


スザクがアッシュフォード学園に転入してきた。その前に「ゼロ」としてスザクにこっぴどく振られた
ルルーシュは複雑だが、それでも喜ばしいことではあった。屋根裏ならぬ屋上でのほほんとして会話し
た後、ナナリーを驚かせてみようという話になった。
「お前の事、本当に心配していたよ。だからきっと喜ぶさ。」
「そうかな・・・?そうだったら嬉しいよ。うん、その話のった!」
久しぶりに平和な空間で会った少年は、そう言って笑いあった。


そしていよいよその時がやってきた。ルルーシュに合図されたスザクはそっと、ナナリーの手を包み込
んだ。はっ、としたような顔をしてナナリーは顔を上げる。
「この手・・・・・。良かった、無事だったんですね・・・・。」
自分の為に素直に泣いてくれる少女に、スザクは嬉しくなった。
「久しぶりだね、ナナリー?」
そこまでは良かったのだが。
「ああ、この手。私を守ろうとしたお兄様をボッコボコにした手。」
「へ!?」
可愛らしい表情から、想像できないような言葉が飛び出た。スザクが振り向くと、ルルーシュも呆然と
した表情でつっ立っている。
「私には良く分からないけど、ヤクザパンチ(どんなパンチだ)でお兄様をボッコボコにしたこの手。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・ナナリー?」
黙り込んだスザクと震える声で最愛の妹の名を呼ぶ、ルルーシュ。
「ええ、異郷に来て心細かった私達に明るく難癖つけた挙句、お兄様をボッコボコにしたこの手。」
「・・・・・・ナナリー、ひょっとしてすっごく根にもってる?」
震える声でナナリーに問いかけるスザクに、彼女はニッコリと笑った。
「嘘だあ!お兄ちゃんはそんな古傷抉るよーな子に育てた覚えはありません!!」
突然ルルーシュが叫んで、がっくりと座り込んでしまった。唯一の救いの手を無くして、スザクは青ざ
める。しかもナナリーがしっかり手を握っている為、逃れる事すらできない。大変のっぴきならない状
態であった。スザクはここに来た事を、凄まじく後悔した。既にルルーシュはショックのあまりか、床
に伸びている。完全に当てにはならない。
と。
ふいにナナリーは手を離し
「今日は泊まっていかれるんですか?スザクさん?」
と大変邪気のない可愛らしい笑顔を見せたのだった。


人生で1番気まずいお茶の時間をギクシャクと過ごし、スザクは帰ることにした。ルルーシュが玄関ま
で送りに来てくれる。
「ルルーシュ、僕ら学校では他人でいよう?」
「なんで?」
「出会い頭に君をボッコボコにしたなんてこと、言ったら君の男としてのプライドもあるだろうし。」
「うっ。」
またしても思い出したのか、ルルーシュは胸を押さえた。
「あ・・・でもオレの事なら大丈夫・・・・・だと思う・・・うん。」
言いながら悲しい想い出に涙ぐむルルーシュであった。
「いや、僕の方だって・・・。」
「?」
「ナナリーに、お兄様をボッコボコにしたスザクさんですvなんて紹介されたら今以上に、想像したく
 ない悲惨な状況です。」
スザクも半泣き状態であった。そして両者半泣きのまま、お別れをする。

「ふうん、奴の妹もなかなかやるじゃないか。」
2階の窓からCCが面白そうに、呟いた。



★出会い編にひっかけたお話。あんなに仲悪い出会いだったとは思いませんでしたよ。ええ、ルルーシ  ュ達への対応も。        戻る