ぶかぶかのロマン




 


















逆転祭

「そういえば、前に男女逆転祭っていうのしたんですか?」
嵐はカレンの何気ない質問から始まった。
「ええ、したわよ〜?女の子は男装するのを戸惑わなかったけど、男子はね〜散々抵抗されたわ。ルル
 −シュとかルルーシュとかルルーシュとか。」
それはたったひとりの反乱か?という感想は生徒会メンバー各々の胸の中にそっとしまわれた。
「羨ましいか、スザク?」
いきなりリヴァルに振られて、スザクは目をぱちくりとさせた。
「え、なんで?」
「まったまた〜、見たかったろ?ルルーシュの女装♪」
スザクがルルーシュにオールレンジでちょっかいかけていることは、ルルーシュ以外全員知っている。
ルルーシュは単に迫りくる混沌(スザクのこと)を避けるのに必死で、そこまで頭が回らない。ま、そん
なスザクがルルーシュの女装を一番喜ぶのだろうという単純な意見。しかしスザクはにっこり笑って、
こう言った。
「いや?僕は別にルルーシュの女装は見なくても良いよ。」
「あ、そうなんすか?」
「うん。だって・・・・。」
「?」
「ルルーシュは女装した姿を見るよりも、一糸纏わぬ姿の方が好みだからね。」
ククククク・・・とスザクは地獄から響くがごとくの声で、生徒会室を満たした。思わずメンバーの体
が硬直する。恐怖の大魔王、黒スザク推参。
「あ、分かりやすく言えば、全裸って事だから。」
一糸纏わぬ・・・という表現で十二分に分かっているので、念を押されない方がメンバーにとっては幸
せな事だったに違いない。コクコクコクと呪いの人形のような不自然さで、メンバーは頷いた。その姿
は学園の中であろうと外であろうと、わいせつ罪でしょっぴかれる事態ではないか?と思う。ただ一人
を除いて。
「やだ、スザク君ったら。そんなことしたらルルが風邪ひいちゃう。」
いつもは結構場を読むのに、こういう時に抜群の天然を誇るシャーリーである。
「あ、そっか〜。」
シャーリーに振り向いたスザクの顔は、わざとらしいぐらいに爽やかだ。いきなり白の騎士、白スザク
がご降臨である。
「そうだよね、ルルーシュって体力ないからすぐ風邪ひきそうだ。」
「でしょ?それにルルが風邪ひいたら、ナナちゃんが悲しむもの。だめよ、スザク君。」
「ん、分かった。」
なにか妙なオーラで守られているとしか思えない2人の会話に、やっと他のメンバーの時が動き出す。
1番回復が早かったのは、生徒会長ミレイである。ひょこ、とシャーリーとスザクの間に顔を出す。
「でも、逆転祭の時に良い思いしたのよね〜シャーリー?」
「え、え、え?なんですか会長。私、別に良い思いなんて・・・。」
「どういうことなんですか、ミレイさん。」
スザクが興味津々という顔で、ミレイに訊く。
「男女祭りの為に、私は生徒会全員の制服を新着したの。」
この生徒会はどんだけ豊かなのですか、という珍しいスザクのもっともな意見は華麗にスルーされた。
制服は意外と高いものなのだ。
「それなのにね、シャーリーったらルルーシュの制服着てたのよ!」
ええ〜〜〜というメンバーの悲鳴に近い声が響く。当のシャーリーは顔を真っ赤にして、口をパクパク
させていた。
「な・・・なんで会長がそれを知ってるんですか!?」
「だ〜って私見たのよ。こ・の・場所でルルーシュがシャーリーに自分の制服渡してたトコ。ちゃんと
 クリーニングしてあるっていうルルーシュの言葉も聞こえちゃったv」
「あ・・・・あうううう〜〜〜〜〜。」
とうとう顔を更に真っ赤にさせて、シャーリーはへたり込んだ。その側で、意外とやるじゃんルルーシ
ュとリヴァルが呟いている。その時スザクははた、と気がついた。
「あれ?でもよくサイズが合ったね、シャーリー?」
いくら細身とはいえ、ルルーシュは男である。当然肩幅などは、シャーリーよりも大分あるはず。シャ
ーリーは観念したように、スザクに答えた。
「ううん、ぶかぶかだったの。」
「え、ぶかぶか?」
何故か動揺するスザク。
「そうそう、あれ着てるってよりは覆いかぶされているって感じだったわね。懸命にあちこち折ってた
 みただけど。」
楽しそうにミレイが答える。と、突然スザクはミレイに迫った。
「会長!」
「え?」
「是非、第二回目しましょう!逆転祭!」
「え、どうして?」
「や〜〜っぱりルルーシュの女装がみたいだけじゃないのか?」
「違うよ、リヴァル。僕が見たいのは・・・。」
いきなり言葉を切ったスザクに、緊張が走る。
「ぶかぶかの制服着ている、シャーリーだよ!!」
「・・・・・・・そっち?」
「何を言うんだい!ぶかぶかの制服を着て、よたよたと歩いているシャーリーなんて・・・可愛いじゃ
 ないか!!男のロマンだよ!!」
握りこぶしで力説することもなかろう、スザクよ。そして固まったシャーリーに向かって、スザクはや
っぱり爽やかな笑顔を向ける。
「今度は僕の制服着てね、シャーリーv」
「え・・・それはルルーシュの制服以上にぶかぶかになるんじゃないのかしら。」
どうにか立ち直ったカレンが呟く。
「それが良いんだよ!!」
スザクの力説は続く。



大騒ぎの放課後、生徒会のドアの向こうに立ちすくむ一人の少年の姿があった。
「ふふふふ・・・・スザクめ。シャーリーに貴様の制服など着せるものか。今度があれば、また俺のを
 着てもらうんだからな・・・・。」
スザクに負けず劣らず、黒いオーラを惜しみなく放出させながらルルーシュは呟く。
「・・・・全裸にもならんからな。」





       

★すみません、私だけが全力で楽しい話になってしまいました。始めに思いついたのは、ぶかぶかのル  ルーシュの制服着てよたよた歩いているシャーリーの姿でした。 戻る