ドコの悪魔ですか




 


















平穏

「待ってよ、ルルーシュ〜」
「喧しい!!呼ぶな、来るなあああ!!」
今日も今日とて呑気にルルーシュを呼んで追いかけるスザクと、全力疾走で逃げていくルルーシュの姿
がアッシュフォード学園の廊下であった。
「ルルーシュ〜、廊下は走っちゃダメなんだよ!?」
「お前が追いかけてこなきゃ、走らん!」
「ボクは走ってないよ!」
「ええい、俺の全力疾走に早歩きで追いかけてくるお前が気に入らん!!」
誰がどう見てもルルーシュは必死で走っているのだが、それを追いかけるスザクはいつものごとくの笑
顔に早足だ。しかしえらく高速回転する早足ではあるが。そろそろルルーシュの体力が尽きてスザクに
とっ捕まるかと思った時、完全に運の悪い人物が通りかかった。

その名はリヴァルという。

「あれ、ルルーシュ?」
「悪い、許せリヴァル!!喰らえい!」
「ぎゃああああああ〜〜!?」
ルルーシュはリヴァルを思いっきりスザクの方に突き飛ばしたのだった。成す術もなくスザクに飛んで
いくリヴァルを尻目に、ルルーシュは更に速度を上げて走って行った。スザクは取り合えずリヴァルを
受け止める。当たり前だがその間にルルーシュは逃げ去っている。リヴァルは青くなった。
「わ・・・・悪いスザク。邪魔したな・・・・」
謝るリヴァルの声は可哀想なほど、震えている。スザクのルルーシュへの執着を知っているが故に、邪
魔した(ルルーシュのせいだが)事が恐ろしい。しかしリヴァルの思考に反してスザクはニッコリと笑っ
た。
「いいよ、ルルーシュを捕まえるのはいつでもできるからね・・・。ふふふ、そう、いつでも・・・・
 ・・ね。」
ひぃ、とリヴァルは声に出せずに固まった。そんなリヴァルをテキパキと立たせて、スザクは笑う。
「じゃ、生徒会室に行こうか?」
コクコクとリヴァルは頷く。ここで逆らえば天国のドアが開かれるに違いない。


「あ〜あ、なんでルルーシュはボクの愛から逃げようとするんだろうねぇ?」
リヴァルには恐ろしくてコメントができない。
「あ、照れてるのかな?」
アレが照れてるなら、ルルーシュの愛情表現は変態的だ。というコメントも出せなかった。しかし、と
リヴァルは思った。毎日スザクに強襲されて、ルルーシュはげっそりとやつれて見える。ここは1つ頑
張ってルルーシュを擁護しなければならないだろう。
だって友達なんだから!
「あのさあ、スザク。」
「ん〜?」
「たとえば、たとえばだよ?俺が今日みたいにスザクに『スザク〜ちゅ〜しよ〜』と踊りかかったら、
 お前どうするよ?」
「殴る。」
うわ、即答だよ。
「空中で殴れるだけ殴って、落っこちたら気が済むまで踏みつける。それから簀巻きにして、どこかの
 川に流す。」
「・・・・・君は一体ドコの悪魔デスカ。」
微笑みとまったくそり合わない物騒な事をケロリというスザクに、リヴァルは思わず呻いた。
「だってボクは男に襲い掛かられる趣味はないんだし。」
「や、趣味ってお前。ルルーシュは男なわけなんだけど、男に襲い掛かるのは良いのか?」
「そんな変態的趣味は持ち合わせてはいないよ?」
嘘付け、とリヴァルは心の中で毒づいた。流石に声には出せない。面と向かって殴って踏んで川に簀巻
きにすると言われれば怖くって。
「よくどっかの文献にあるだろ?男が好きなわけじゃない、お前だから好きなんだってやつ。」
「全く、思い当たる事がないんですが。ドコの文献ですか。」
「ええと、ボクも昔一緒に住んでたお姉さんに見せてもらっただけなんだけどな。源氏物語だったか。」
違うだろ。
「あ、三国志!」
違う。
「ええと〜〜〜〜。」
首を折れるんじゃないかと思うくらい首を捻るスザク。
「いいよ、スザク。俺、なんだか知りたくないし。」
「あ、そう?」
ガタ、とスザクは唐突に立ち上がった。
「ドコ行くんだ?」
「ん、ルルーシュんとこ。自室に引きこもっているだろうから、行って来るよ。」
「いや、それは止めた方が良いんじゃないか?」
「行ってくるよ。」
スザクはリヴァルのか細い制止を軽やかに無視して、さっさと出て行ってしまう。
やばい、これではルルーシュの絶叫がクラブハウスに響き渡るのは時間の問題だ。リヴァルは慌てて携
帯電話を取り出し、ルルーシュに電話する。
『ルルーシュだ、今は出られないので・・・』
「バカ、なに留守電モードにしてるんだ!こうなったら救いの女神にお願いしよう!」
プルルルルルル・・・・
「は〜い。」
良かった、対スザクで絶大なる力を持つ女神は素直に出てくれた。リヴァルは彼女に大事なところは包
み隠して、ルルーシュの部屋に行ってもらうよう懇願した。彼女があっさりと承諾してくれたのが、嬉
しかった。

少しした後、絶叫の代わりにドアの開く音を響かせてルルーシュ、スザクそして彼女が姿を現したのだ
った。
後で真相を知ったルルーシュがリヴァルに感謝し、賭けチェスに出かけたのであった。


       

★貧乏くじリヴァル君のお話。第二期ではリヴァルはどうなってしまうんだろう。救いの女神さまが誰  だかなんて、バレバレですね。スザルルベースでも彼女を絡ませないと、気がすまないらしいです。  私。 戻る