この上ない喜び




 


















交際

シャーリーの死で絶望したルルーシュは、腹いせに利用するはずだった教団とロロを取りあえず亡き者
にしようと思った。教主VVを追い詰めたものの、なにやら変な場所にワープしてしまった。そして目
の前にいるのは、父親にして宿敵のブリタニア皇帝その人。
「我が息子ルルーシュよ。よくぞ此処まで参ったぁぁぁ」
ぶるあぁぁぁ節は相変らずらしい。
「いや、別に此処に来ようなんて思ってなかったけど」
そんな息子の困惑を、皇帝は聞いていなかった。
「ご褒美として、ワシから素敵なプレゼントをやろう!」
「いらんわ!」
反射的にルルーシュは叫んだ。昔から皇帝からのプレゼントは碌な物がなかったからだ。可愛いペット
としてコブラを与えられたり、特別プレゼントとして用意されたナイトメア操縦訓練で死に掛けたり。
しかし皇帝は動じなかった。顎に手をやり、ニヤニヤしている。
「本当に良いのか・・・?後悔するぞ?」
ルルーシュは混乱した。そう言われてしまえば人間、弱いものだ。
「取りあえず、プレゼントとやらを見せてみろ!話はそれからだ」
「宜しい、なら目を見開いて凝視するが良い!」
皇帝が手を天に差し伸べて叫ぶ。
「オォォォル・ハイル・ブリタァァァニィアアアァァァァ!!」
・・・・・・取りあえず言葉の意味は良く分からない。と、空から呼応するように光が舞い降りてきた。
その光は段々人の姿に変わっていき、最後には・・・・。
「?あれ?此処は何処?」
「しゃ・・・・シャーーーーーーリィィィーーーーーー!!!!!!」
シャーリーはきょとんとした様子で、皇帝の横にすとんと舞い降りた。服装はEDのアレね。
「どうだ、我が息子よ!欲しいか?」
「うん」
自分の心に素直なルルーシュだった。反面、シャーリーは混乱している。
「え?ここ池袋・・・じゃないわよね」
きょろきょろと周りを見回して、皇帝と目が合い固まった。
「ひっ・・・こ、皇帝陛下」
ルルーシュは皇帝がシャーリーに危害を加えるかもしれないと判断して、走り出そうとした。しかし反
対に皇帝はシャーリーをルルーシュの方へ促す。シャーリーがルルーシュの腕の中に収まった。
「ルル?」
死んだと思った彼女が実際にこの手の中にいるのだ、嬉しくないわけがない。八つ当たりされて滅ぼさ
れた教団は、大変に気の毒ではあったが。
「シャーリー、シャーリー」
思わずぎゅうぎゅうと抱きしめる。そこへ無粋な声が割って入った。
「どうだ、満足であろう。貴様にはワシの出す条件を飲んでもらおう」
「なんでだ、プレゼントって言ってなかったか?」
「どっちかっていうと、賄賂じゃな」
「詐欺だ!だがシャーリーは渡さん、渡さんぞう!」
ルルーシュは咄嗟にシャーリーを後ろに移動させる。せっかく再び手が届いたのだ。奪われるわけには
いかない。
「これからは月一で、ワシにその娘との甘酸っぱい話を聞かせてくれればよい」
「はい?」
いきなりな上、思いもよらないその条件にルルーシュはポカンと口を開けた。しかし皇帝は気にしない。
「ワシは・・・・ワシは憧れておったのじゃ。いつか我が子たちが『お父さん、お母さん、実は紹介し
 たい人がいるんだ』とか『お父さん、彼が私の結婚相手です』と言って来てくれるのを」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ところが第一は両方共に未だ恋人の一人もおらん!第二に至っては特定の相手は作らんやつと、下手
 をしたら妹と添い遂げるかもしれんシスコンになってしもうた。第三は全滅じゃしな」
なんといえばいいのか、皇帝の言っている事は確かに事実だ。だが次の継承者が決まらない事には、お
いそれと相手を決めるわけにもいかない(第一はそういう理由だろう)
「あんなにブイブイいわせて、ハッスルして子供を作ったというのにひどいとは思わんか!?」
「思わん」
思わず本音が出てしまった。ところがシャーリーの心の琴線になにか触れてしまったらしい。
「皇帝陛下、可哀想・・・・」
などと言い出す始末。
「え?俺の意見はマイノリティ・リポート?」
この場においてはどうもそうらしい。軽く混乱しながら皇帝を仰ぎ見る。
「だがここに光明が射した!枢木から流れてきた、正に運命の情報!それは未だにちゅーの一つもでき
 ん、まさに甲斐性なしの貴様だルルーシュ」
「・・・・・・・・ちゅーはした」
「なんと!いつに?」
「ちょっと、ルル?」
「一年前にした。誰にも言ってないからスザクが知るわけない。くそ、あいつ自分が経験済みだからっ
 て、なんつーこと報告してやがるんだ!?」
ルルーシュの頭の中でスザクが笑顔で「ドンマイ★」と言って通り過ぎていった。相変らずの腹黒さだ。
「ならば、今年の夏でひと夏のアバンチュールをすればよい!」
108人という煩悩と同じ数の妻を持つ皇帝は、すでになにやらアダルト方向へ向かっている。人の話
を聞かないことでは天下一品だった。息子も似たようなもんだがな。
「というわけで、ワシの用事は終わった。さらばじゃ!」
いきなりのさよならときた。ルルーシュは慌てたが、シャーリーを腕に抱きこむことは忘れない。
「お、俺の方は終わっていない!お前を倒すんだってばーーーっ!」
「甘酸っぱい話をドキドキしながら待っとるぞ!マリアンヌよ、我が願いはそなたによって成就された!」
「母さんも共犯!?」
「無論じゃ。ワシのこの夢を叶えてさしあげましょうといった言葉は嘘ではなかった!」
なんという事態だ。ルルーシュは頭を抱えそうになったが、取りあえず蜃気楼に駆け込むことにした。
主の帰還に、蜃気楼が稼動しだす。場所がないから、と己に言い訳をしてルルーシュはシャーリーを膝
に横抱き状態で座らせる。俗に言うお姫様抱っこ状態である。と、ガックンと蜃気楼が揺れた。
「きゃあっ!」
驚いたシャーリーがしがみついてくる。思わず目尻が下がるのを押し留め、周りの状況を見る。すると
さっきの光景は既になく、皇帝の姿も見えない。
「ここは・・・・」
さっきまで大いに八つ当たりをしていた教団の場所だった。
「兄さん、無事だったんだね!」
ロロの声がコクピットに響く。咄嗟にルルーシュは画像が出ないように操作した。ここでシャーリーを
見せれば、また殺しに来るかもしれないからだ。
「あれ?カメラ故障しているの?」
「ああ、そのようだな。ロロ、悪いがRポイントの状況をヴィンセントで見てきてくれるか?」
「わかったよ!」
ルルーシュには素直なロロの乗るヴィンセントが、くるりと向きを変え去っていく。
「・・・・・私、此処に居ていいのかな?」
生粋のブリタニア人であるシャーリーが、少し慄きながら呟いている。やはりシャーリーにとっては「黒
騎士団」はテロリストなのだ、怖がっても仕方がない。
「大丈夫だ、俺も生粋のブリタニア人だからな。それにまた失いたくはないから、傍にいてもらってい
 る方が俺にとっても安心だし」
ルルーシュはそう言ってシャーリーに笑った。


「というわけで、奴らの甘酸っぱい話をパワーアップするにはどうしたらいいと思う?枢木よ」
「はい、それはやはり障害の存在でしょう」
「そうであろうな、ならばこれから貴様は中華へ行き盛り上げてくるのじゃ!」
「イエス!」
「ナナリー、そなたも異議はなかろうな?」
「はい。お兄様が幸せになるなら反対する理由はありません。スザクさん、お願いしますね」
最早話もへったくれもなく、大事なものを忘れてしまったようなブリタニア皇帝と他2人であった。



★シャーリー復活劇(笑)私だけが楽しいのかもしれませんね。私は破廉恥だな(富野節)なんというか、  やはり好きなキャラの死は堪えますね、特にシャーリーみたいな立場の子は。  戻る