邪魔者はいない!




 


















再会

スザクの変装したゼロの剣に貫かれた瞬間、あまりの痛さに止めときゃ良かったと後悔した。ただ仕方
ないと割り切ったのだが、ナナリーの前に一回転して転がり落ちた時も痛かった。ここまで痛いとは誤
算だ。そう思いながらルルーシュは目を閉じ、その短い生涯を終える。


ふと目を開けて見れば、そこはCの世界だった。
「ルル」
優しい声に振り向くと、そこにはアッシュフォード学園の制服に身を包んだシャーリーが立っていた。
「シャーリー!」
あまりの嬉しさに、ルルーシュはシャーリーに駆け寄り思わず抱きしめた。
「シャーリー、会いたかったよ」
「私はこんなに早く、ルルに会いたくなかったな・・・」
嫌われた!?と身体を固くしたルルーシュに、上目遣いでシャーリーは呟く。
「私、辛かった。ルルが世界から嫌われていって。ルルにはナナちゃんと一緒に幸せに生きて欲しかっ
 たの」
「良いんだ、俺の意思だったんだから。シャーリーが心を痛める事はないんだよ」
愛しさが増して更にギュッと抱きしめた時、ルルーシュは視線を感じて横を見た。そこには・・・
「何をしている、そこなご両親共」
シャルル皇帝とマリアンヌ皇妃が、しゃがんで両手の平を頬に当ててジーッと熱心に見ていた。
「え、ルルのご両親なの?」
「はあいvシャーリーちゃんv」
マリアンヌがいやに機嫌よく、シャーリーに手を振ってくる。
「あ、こんにちわ」
「え、父親を知っているのは分かるけど、何故母さんをシャーリーが知っているんだ?」
腕に込める力を抜かないまま、ルルーシュは問う。シャーリーは少し困った顔をして、笑った。
「この前、息子をよろしくねvって菓子折り持ってこられたの」
「・・・・・・Cの世界で菓子折り?」
「うん、私も驚いたわ。でも息子が誰なのかは教えてもらえなかったの」
「因みに菓子折りの中身は?」
「紅白饅頭」
ぷっつん
ルルーシュの低い沸点に、火がついた。怒鳴りつけようとしたのだが、突然皇帝がほろりと涙を零した。
「見るがいい、我が愛するマリアンヌよ。性的な意味で不甲斐なかった、我が息子の勇姿を」
いきなり直球で来た。皇帝は息子にも容赦なかった。
「本当ね、シャルル」
「長生きはしてみるもんだのう」
「いや、あんた達もう死んでるだろうが」
思わず突っ込むルルーシュ。しかし皇帝は聞いていない。その妻もまた然り。そこら辺は似ている家族
であった。
「つか失礼じゃないのか、その言い方」
「せっかく雨の中でちゅーしたんだから、そのまま押し倒せばよかったのにv」
笑顔でとんでもない事を言い出す母、マリアンヌ。
「そんな事できるか!?」
思わず叫ぶと、立ち上がって腰に手を当て、やれやれとばかりに首を振る。
「そこを押してこその、男の子よ」
奔放な母の姿に、ルルーシュは眩暈がした。
「頼むから、俺の美しい母親像を壊さんでくれ・・・・」
「あら心外!紅白饅頭を持っていった母の気持ちが分からないなんて!」
「分かりたくない」
「ホント、甲斐性無しね。その点シャルルは凄かったわよ?」
「それはな。わしは夜の帝王だからな」
「ああ・・・・素敵シャルル・・・・」
「マリアンヌ・・・・・」
ルルーシュのご両親は手を握り合って、お互いを熱く見つめている。
「シャーリー」
ルルーシュは小声でシャーリーに話しかけた。ルルーシュの腕の中で固まっていたシャーリーが、ルル
ーシュを見る。
「今の内だ、見るに耐えん両親はほっといてあちらに行こう」
「え、うん。分かったわ」
勝手に盛り上がっている二人に気づかれないよう、忍び足で抜け出した。そんな彼らを口にハンカチを
咥えて、ロロとシャーリーパパンが涙を流しながら見送ったのを、誰も知らなかった。


「ルルって皇子様だったんだよね」
一息ついてから、シャーリがそう言った。
「私、凄い身の程知らずだったんだって思ったら、恥ずかしいよ・・・・」
ルルーシュは驚いてシャーリーを見る。
「もうそんなの関係ないな。俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアではなく、ルルーシュ・ランペルージ
 なんだから」
「でも・・・・・」
ブリタニアは身分が大きくものを言う国だった。だからこそルルーシュはシャーリーやリヴァルには自
分が皇族であると知られたくなかった。こうやって距離を置かれるのが辛かったから。
「それにそういう身分階級は、俺が破壊したから」
「・・・・・・・・」
「頼むよ、俺から離れないでくれ。シャーリーは俺にとって大切な人なんだ」
死んでしまったからか、それともご両親共の熱気に当てられてしまったのか、ルルーシュはいつになく
直球だった。シャーリーが真っ赤になる。と、そこまできてルルーシュはキョロキョロと周囲を見回し
た。
「?どうしたの、ルル?」
声を掛けられたルルーシュはシャーリーをじーっと見つめた後、変なポーズを取って笑い始めた。
「はーーーーっはっは、勝った、勝ったぞ!!」
「?」
「そうだ、いくらあいつが這い寄る混沌だったとしてもCの世界までは来れまい!ご両親共が気になる
 ところだが、邪魔者はもういない!」
目を丸くするシャーリーを置いてけぼりにして、ルルーシュは力一杯笑った。
(ざまーみろ、スザク!)


「?どうしました、ゼロ?」
「いえ、なんだか急にムカッと来ただけです」
ゼロの変態コスプレに一生を捧げるハメに陥ったスザクは、なんだかCの世界でルルーシュにバカにさ
れている気がしてむっとした。
(きっと今頃、Cの世界でシャーリーと・・・・・)
スザクのむかむかは続く。


後日談
スザクは天寿を全うして、やっとCの世界にやってきたが、既にルルーシュもシャーリーもちゃっかり
転生していてCの世界におらず、スザキックで周囲を恐怖のどん底に陥れた。




★珍しく、ルルーシュの勝った話ですね。スザクに対しては完全勝利。ちなみに転生はルルーシュが言  いだし、2人仲良くこの世に戻っていきました。  戻る