騎士になりたいよ〜




 


















騎士

意図せず、いきなりユーフィミアの騎士に指名されたスザク君は、いそいそと学校に向かっていた。皆
は騎士指名されたことを祝福していたが、彼はそれどころではなかった。

「ルルーシュ!!」
漸く意中の人を見つけて駆け寄る。そんなスザク君を胡散臭そうに見るルルーシュであった。
「ああ、おめで・・・。」
「で、大事な大事な話ってなに?」
人の台詞がぶった切って、スザク君は期待に満ちた瞳をキラキラと輝かせた。勢い込んで手を祈るよう
に組む。
「いやあの・・・。」
「大丈夫、告白してくれんだよね?僕に!」

沈黙は文字通り長かった。

ルルーシュは頭痛と疲労感を、存分に味わう。かなり長い間沈黙は続いているのだが、スザク君はさっ
きと同じポーズを崩してはいなかった。昔から人の話を満足に聞くタイプではなかったのは確かだが、
再会してからのスザク君はねじが吹っ飛んでいるとしか思えないよーな気がする。
「で、まだ?告白。」
「一体なんの告白だよ。この前俺がうっかり食ったひよこまんじゅうをまだ根に持っているのか?」
「ううん、あれもショックだったけどね。で、告白告白v」
「だから何を吐けば良いっつーんだ、お前は。」
「告白、告白v」
もはや何を言っても壊れた機械のよーに”告白”という言葉を繰り返すスザク君に、とうとうルルーシ
ュが折れた。
「分かった、話すよ。」
「うん。」
どうにでもなれ、そんな気持ちでルルーシュは口を開く。
「お前にな、ナナリーの騎士になって欲しかったんだよ。」
「えっ?ルルーシュじゃないの?」
即答してくるスザク君に、ルルーシュの額に怒りマークが浮き出る。
「何故残念そうに言う。」
しかしスザク君はう〜ん、と唸って何か考え事をしていたが、やがてきっぱりと言ってくる。
「ルルーシュ単独の騎士じゃないのは残念だけど、ナナリーは可愛いし両手に花で結構美味しいかも。」
「確かにナナリーは可愛い。」
断言するシスコン、ルルーシュ。
「だがなんで両手なんだよ。」
「え、そんなの決まってんじゃん!ルルーシュとナナリーだよ。」
「はっはっは、音高くもの凄くぶん殴りたい。」
「やだなあ、物騒なんだから。でもルルーシュが僕を殴れるわけないでしょ。」
ピキピキと怒りマークが順調に増加していくのだが、目の前のスザク君はめでたく気がつかない。
「だがそれも、無理な話だ。」
「えっ、なんで?」
またしても即答。
「お前はユフィの騎士になるんだろ?だったら無理な話だ。それに代りの人材がいたしな。」
「え?誰?」
「さっきから訊ねることばっかりするな、お前は。・・・・・咲代子さんだよ。」
「え、そう?あの人が・・・?」
スザク君はメイドの咲代子さんを思い浮かべる。いつも優しく微笑んで、ナナリーやルルーシュの世話
をしているイメージしかない。
「何言ってんだ、俺うっかりこの前咲代子さんの背後通ってしまって、死に掛けたんだからな。」
豪快なそして容赦のない見事な一本背負いだった、とルルーシュは思い出して憂鬱になる。女性の咲代
子さんに負けるなんて、年頃の男の子としてはなかなか耐え難い出来事ではある。しかし事実なのだか
らしょうがない。目の前のスザク君は目を丸くしている。が、いきなりポンと手を打って再度瞳を輝か
せた。これはなにか自分にとって恐るべき事態が起こる、ルルーシュは本能的にそう感じて逃げようと
したのだが・・・・・。
「分かった、良い案があるよ!副総督の騎士には咲代子さんになってもらおう。そしてルルーシュとナ
 ナリーの騎士に僕がなるよ!」
「そんなことが許されると思うか、バカたれ〜〜!!いいかっ!ユフィの指名を断ってみろ、小姑つー
 か大姑が怒りのぶどう背負って、襲いに来るぞ!」
そう、ユフィ馬鹿のコーネリアはスザクを指名した事は怒っているかもしれないが、騎士を断ってユフ
ィの顔がつぶれるよーなことがあれば、生身の人間に対してでもナイトメアで突進してくるだろう。そ
れに巻き込まれるのがスザク君だけであれば別に良いが、こちらに飛び火しても大いに困る。
「ええ〜〜〜なりたいなりたい、ルルーシュとナナリーの騎士になりたいよ〜〜。」
スザク君、駄々っ子モード発動。
「ダメと言ったら、ダメだ!!つかどさくさにまぎれて俺を入れるな!俺は騎士なんかいらないんだよ!」
ルルーシュ、地団駄モード発動。
端から見ると、ぶりぶりと体を左右に揺らしているスザク君とヤクザキックを地面にお見舞いしている
ように見えるルルーシュはかなりの違和感を醸し出していた。

「なりたいなりたい公文式。ルルの騎士になりたいよ〜。」
「ええい、ナナリーを外すな!人を風邪薬のよーに呼ぶな!お前の名前だってくるるぎで、ルルってあ
 るだろ!」
「シャーリーはそう呼んでたじゃん!」
「良いんだよ、シャーリーは!」
根負けしたともいう。

遠巻きに2人を見ていた生徒会メンバーで、ぽつんとナナリーが微笑んで呟く。
「本当に、お兄様とスザクさんは仲が良いですわね。」
(本気で言ってるのか、ナナリー!!)
生徒会メンバー全員の、心の叫びであった。

後日
「酷いよルルーシュ、僕という者がありながら・・・!!」
せっかくのゼロの素顔お披露目会場となった戦場は、スザク君の号泣によってどエライ修羅場になって
しまっていた。
「ええい、泣くな喚くな見苦しい!」
「だってあんなに僕以外の騎士を抱えてるんなら、僕一人ぐらい入れてくれたって良いじゃないか!」
「それこそバカか、お前は!ブリタニアのバリバリ現役軍人を入れる、テロリストがどこにいる!?」
「カレン!」
突然スザク君は目ざとくカレン嬢を見つけた。ダダーーっと走り寄る。
「カレン、僕のランスロットと君のその赤いナイトメアを交換しよう!」
「え?え??なんでよ!」
「僕がそのナイトメアに乗って、ルルーシュの騎士になるから。君はランスロットに乗って、僕らと戦
 って。」
「なんで私がブリタニア軍にならなきゃいけないのよ!嫌よ、断固拒否!!」
「え〜〜〜お願い、カレン!」
「しつこいわ!!」
「ええ加減にせんか、スザク!!お前は俺の、俺たちの敵なの!諦めろ!!」
3人の口論にブリタニア軍・黒の騎士団両方が困ってしまっていたが、当の本人たちは気がつかない。
原因はスザク君に集中しているのだが。面白そうに見ていたラクシャータがある方向を向いて、ぽそと
一言言った。
「あ、ゼロのぱんつ。」
「ええ!?なんだって!!」
ゴイン
思わずそっちの方向を向いて隙だらけになったスザク君の後頭部に、ルルーシュの渾身の攻撃がヒット
しスザク君はばったり倒れた。
「た・・・・助かったよ。しかしなんつー話題を出すんだ。」
思わず半眼になるルルーシュ。
「万事解決、細かいことは気にするな。さ、彼が目覚める前にとっとと帰ろう。」
あっさりとラクシャータはそう進言し、それに同意の黒の騎士団はさっさと退散した。
       

★はい、ギャグバージョンになると攻めが凄い性格になってしまうのが、困りものです。いやスザクは  もっと格好良いんですよ、うん。 戻る