僕の煩悩




 


















苦悩

枢木スザクを凝りもせず説得しようとしたゼロではあったが、スザクの持ち前の体力バカや自身のヘタ
レにより、白兜のコクピットに拉致監禁されてしまった。
(ああ・・・・・格好悪いよ、俺。)
思わず黄昏るゼロ。目の前にはちゃっかりシートを確保したスザクの姿。向けられているのは自身がさ
っきまで持っていた銃。ミサイルが飛んできているこの状況、今ゼロは最大のピンチを迎えていた。
(な・・・なんとかして脱出しなければっっ!!)
焦ってコクピットの中を必死で見回したゼロではあったが、天井に目を向けた途端凍りついて動かなく
なった。
「ん?諦めたかい、ゼロ?」
どこかお呑気なスザクの声に、ゼロは己を叱咤激励してあからさまに震える指で天井を指した。
「あの・・・・これは一体・・・・・何?」
天井にあったもの、それはそれこそ天井のスペース一杯に大きく広がる自分の写真だった。まるでポス
ターだ。
「あ、聞きたい?誰だか聞きたい?」
途端ぽっと頬を染めてスザクが嬉しそうに言う。ゼロの頭の中に警戒警報が鳴り響いた。
「い・・いややっぱりいい。」
じゃきん
銃が改めて向けられた。頬を染めた笑顔のまま。
「き・き・た・い?」
「・・・・・はい、是非聞かせて下さい。」
「分かったよ、君は敵だけど特別に教えてあげよう!」
自分自身の写真の正体を聞くことこそバカらしい。そうは思うが、聞かねば既にジ・エンドになりかね
ない。ゼロは自分が生き延びる結果に対して、手段を取りあえず選ばないことにした。するとスザクは
更に嬉しそうな顔をした。
「彼はルルーシュ・ランペルージっていう、僕のスイーーートハニーーー。」
「・・・・・・・すいーと・・・・?」
思わず、反復する。つかこんなに簡単に個人情報を、テロリストに公開して良いものだろうかと思う。
(お前こんなに簡単に俺を売るか・・・!!)
スザクの弱点としてゼロが狙ったらどうするつもりなのだろう、このすかぽんたんは。
「そう!も〜〜〜うラブラブでいきつくとこまでいっちゃった仲v」
「ちょっと待てぇ!!!いきつくとこってドコだよ!!」
反射的に突っ込み体質の為、叫ぶ。つかそんな記憶はないのにいつの間に、ドコにいったというのだ。
スザクが言っている事は分かっているが、自分の心の安定の為に理解したくない。
「・・・・・・お前・・・・・ホモだったの・・・・か・・・。」
スザクに恋してる最愛の妹ナナリーを思い出して、ゼロは悲しくなった。
ああナナリー、お前の恋した男は立派な変態になってしまったよ。
自分の変態さは棚に上げているゼロ。お前も立派な変態と認識されとるぞ。というか、自分の貞操の危
機を認識するべきだ。ゼロの搾り出すような声に、心外とも思われる表情をスザクは浮かべた。
「えーー?違うよ?僕はちゃんと女の子も好きだよ?」
「女の子が好き、ではなく女の子も好きなのか・・・・。」
「うん!」
能天気なスザクを見ていると、とてもミサイルかっ飛び中とは思えない。しかし確実にミサイルは迫っ
ている。さっきからビービー鳴っている警告音がそれを示していた。そんな緊張感溢れているのに、ス
ザクはゼロの右側を指す。
「?」
不思議に思ったものの、ゼロは振り返って・・・・・・・固まった。
(シャ、シャーーリィー!?)
驚愕は凄まじかった。コントローラーの側に、どう見てもセロハンで貼っただろうと言いたくなる様な
感じでシャーリーの笑顔全開な写真が貼り付けてあった。
「そ、僕は彼女のあの明るさを凄く好ましく思っているんだv」
(し、知らなかった。スザクとシャーリーがそんな仲になっていたとは!!)
「・・・・・で、彼女ともいきつくとこまでいったのか・・・?」
「いいや。」
即答だった。
「だって彼女は好きな人が他にいるからね。無理強いは僕のルールに反する。」
「・・・・・ルルーシュという奴には無理強いしたのか?」
「そのうちねv」
(貴様・・・!シャーリーには優しさを見せるくせに、俺は鬼畜ルートなのかっっ)
そういえばルルーシュの名前はあっさり吐いたくせに、シャーリーの事は”彼女”と呼んで名前を言っ
てない。しかし今重要なのは如何にしてスザクから逃れるかだ。少し考えてゼロは上を向いた。そこに
は自分の写真。
「えい。」
ぽく
ゼロはその写真に軽いパンチを当て
「えい。」
拳を回転させた。当然写真にはしわができる。
「ああああーーーーーーー!!!!!」
スザクからこの世のものとは思えないほど悲痛な悲鳴が響く。その事に満足しつつ、ゼロは行動に出た。
思わず、という感じで写真に飛びつくスザクの横をすり抜け、コクピットから飛び降りたのだ。しかし
コクピットから地上までは遠かった。
(しまったーーーー!!動揺のあまり思わず飛び降りてしまった!どうする?このままでは地上に激突
してジ・エンドだ!!)
スザクなら大丈夫なのだろうが、生憎とルルーシュの運動神経は人並みだった。
(ああーーーシャーリーをスザクの魔の手から守ろうと思っているのにーーー!ついでに俺の貞操も!)
落下中にそんな事を思えるゼロは意外と余裕があるかもしれない。
「ゼロッ!!」
声に下を見ると、カレンが両手を差し伸べて走ってくる。
(助かった、カレン!)
しかし女の子に助けられるなんて、悲しいなゼロ。カレンはゼロを受け止めたものの、そのまま前のめ
りに倒れこむ。が、なんとか2人共怪我もなかった。
「大丈夫ですか?ゼロ?」
「ああ・・・・。助かった、カレン。」
心からの言葉に、カレンが頬を染めた。
「いいえ、私はアナタを守るのが役目ですから。」
それを少し好ましいとは思ったが、グズグズしてはいられない。
「走るぞ、カレン!」
「はいっ!」
2人は藤堂さんに助けられ、その場を去った。


「ああーー僕の、僕のルルーシュにしわがっっ!!」
その頃スザクは必死でゼロにこしらえられたしわを伸ばしていた。努力のかいあって、元の状態に戻る。
「よ、良かったーーー。・・・・・ん?」
スザクの目に、落下してくるミサイルが写った。


ミサイルの直撃を受けたはずなのに、ケロッとした顔で登校してきたスザクにルルーシュはげんなりし
てしまう。
(何で無事なんだよお前は。邪神の加護でもあるのか?)
ルルーシュの葛藤も知らず、スザクはにっこりと笑ってみせた。それからというもの、スザクを警戒し
シャーリーをスザクに近づけまいと努力する涙ぐましいルルーシュの姿があったという。	
       

★私のスザクはどうもルルーシュとシャーリーで両手に花が理想のようです。やだもう、素直なんだか  ら私ったらv 戻る