プライド ACT1=ロンの憂鬱 クィディッチの試合があった。 対戦カードはグリフィンドールVSスリザリン。 勝利したのは、グリフィンドールだった。 グリフィンドール生に、もみくちゃにされるメンバーの中に親友のハリーがいる。 ハーマイオニーは、ロンを促してハリーの元へ駆けていく。そんな彼女の背中をぼんやりと見つめて、 ロンはくるりと踵を返した。そのまま、校舎へと歩き出す。ワーワーという歓声が背中から離れていく のを感じながら、それでも足を止めずに校舎へと向かった。 グリフィンドールが勝ったのは嬉しい、それは当たり前だ。相手がかのスリザリンであることが、余計 に嬉しかった。廊下を歩きながら、ロンは考える。 長男のビルは首席だった。 次男のチャーリーはクィディッチのキャプテンだった。 三男のパーシーは又しても首席だった。 四男・五男の双子のジョージとフレッドはクィディッチのビーターだ。 親友のハリーはクィディッチのシーカーだ。 親友のハーマイオニーは首席は間違いない。 足を止めて、ロンは俯いた。自分の身近にいる存在は、皆凄い連中ばかり。それなのに自分は成績も良 い方ではないし、運動が得意なわけでもない。1番劣る存在、それが自分だと思う。それなら何故、自 分の周りにはそんな連中が引きめしあっているのだろう?何故、兄達は誰もがなれるわけでもない事を 成し遂げられるのだろう? そればかりではない、親友のハリーとハーマイオニーだって同じだ。特にハリーに関しては、喧嘩以来 複雑な感情がある。ハリーのことを好きか嫌いかと尋ねられれば、答えは決まっている。 ”好き” 基本的にロンはハリーのことを、嫌いだと思ったことはない。喧嘩をしたきっかけは、ハリーが自分に まで嘘をついたということだった。本当のことを打ち明けてもらえない、何故かその時はそう思い込ん でハリーから距離を取った。悲しくて、悔しくて。ドラコや他の生徒達から攻撃されているハリーを、 外部から眺めているのは気分の良いものじゃなかった。ハリーがチラチラとこちらを見ていたが、ロン はあえて知らない振りをした。そして、帰ってこないハリーを心配して探し回った挙句、又しても大喧 嘩。バッチはぶつけられるわ、罵声を浴びせられるわと散々な目にあった。なんとなくハリーがいる寝 室に行きたくなくて、その場にへたり込んだ。--------別に傷が欲しかったわけじゃなかった-------- --------別にハリー・ポッターになりたかったわけじゃなかった-------- 分かってる、本当は分かってる。・・・・・と思う。 ハリーの才能はきっと彼の過酷な運命に生き残れるように、授かったものなのだということは。きっと 自分がハリーの立場だったら、もう死んでいるだろう。 ハリーは才能には恵まれたが、愛情に恵まれなかった。 自分は愛情には恵まれたが、才能がない。 お互い、恵まれているものいないものが全く違うパターンになっているのだ。 「・・・・昔は良かったなあ・・・。」 ロンは呟いた。昔はただただ純粋に”凄いや、ハリー”と喜べた。そう心から思っていたし、そう言う とハリーは照れたような、嬉しそうな顔をした。そんな表情が好きだった。今でも”ハリーは凄い”と いう認識は変わってはいない。だが今は、そんなハリーにコンプレックスを持っているのは確かだ。羨 む、嫉むといったどす黒い感情がある。そんな自分を情けないと思いながら、悩む日が続いていた。本 当はさっき、ハーマイオニーと共にハリーの側に行きたかった。だが、足は動いてくれなかった。皆の 賞賛を浴びているハリーを、羨ましいと思ってしまったから。ロンは後ろを振り向いた。もう競技場は 見えなかったが、歓声が聞こえているような気がする。賞賛と嫉妬が入り混じり、ロンは溜息をつく。 今は誰がなんと言おうとも、ロンは1人でいたかった。食事はドビーに頼めば何とかなるだろう、そう 結論付けてロンは再び歩き出した。 ACT2=ハリーの戸惑い 試合に勝って、ハリーはもみくちゃにされた。あわあわと周りを見回すと、ハーマイオニーが人垣をな んとか乗り越えてハリーに近づこうと奮戦していた。ハリーとしても、ハーマイオニーに駆け寄りたか ったが如何せん人が多い。 ハーマイオニーがやっとハリーの元にたどり着く。 「おめでとう、ハリー!やっぱり貴方って凄いわ!」 そう言ってくれた彼女に、礼を言おうとしたところ 「おやハーマイオニー嬢、凄いのはハリーだけかい?」 「僕らも頑張ったんだけどな〜。」 ハリーの後ろから、双子がひょっこり顔を出して茶々を入れた。もちろんハーマイオニーは、彼らにも 祝福の言葉をかけた。と、ハリーはいつも彼女と共にいるはずのもう1人の親友がいないことに気が付 いた。 「あれ、ロンは?」 ハリーの言葉に、ハーマイオニーは初めてロンがいないことに気が付いたらしい。 「あら、おかしいわねえ・・・・。さっきまで一緒にいたのに。」 そう言ってキョロキョロと周りを見回した。ハリーも一緒になってロンを探したが、彼は競技場のどこ にもいなかった。・・・・・といっても人垣に阻まれて、あんまり良く見えなかったのだが。 「どうしたんだろう・・・・・・。なんか身体の調子でも悪いのかな?」 あからさまにガッカリして、ハリーは呟いた。ハーマイオニーも首を傾げている。だが、メンバーに呼 ばれてハリーはハーマイオニーに別れを告げて、更衣室に入っていった。メンバーの興奮した演説を、ハ リーはろくすっぽ聞いていなかった。 長々とした演説がやっと終わり、皆で着替え始める。ハリーの頭の中は、ロンのことで一杯になってい た。確かに試合が終った時には、ハーマイオニーの隣にいた。それなのに、どうしていない?心の中に ロンと喧嘩している最中の、あの鉛のような重苦しい重圧が蘇る。 ロンは友達のいなかったハリーにとっては、初めての友達だ。しかも秘密を共用できる信頼できる友達 でもある。ロンは”有名なハリー・ポッター”と友達になれるなんて、といつか言っていたがとんでも ないとハリーは思ったものだ。ロンと知り合ったことで、ハリーは諦めていたものに触れることが出来 たのだから。 それは家族の愛情。 ウィーズリー家に人々は、皆ハリーを家族同様に接してくれた。そりゃ本当の家族ではないけど、ロン の母モリーはセドリックの死に震えるハリーを暖かく抱き締めてくれた。そのぬくもりに、ハリーは今 まで我慢していた感情がどっと溢れ出して止まらなかったのを覚えている。それは無償に愛情だった。 きっと母リリーが生きていたら、当たり前のように与えられたはずの・・・・。そんな愛情に触れるこ とができたのも、ロンがいてくれたからだ。 「そういやあロニー坊やがいなかったな。」 「ハリー、また喧嘩か?」 ロンの兄である双子が訊いて来る。ハリーは振り返った。 「ううん、してないよ。・・・・・やっぱりロンがいないのに気が付いた?」 反対に問いかけると、双子は揃って頷いた。 「せっかく偉大なるお兄様ズが勝ったというのに。」 「なんて薄情な弟だろう。」 まるでオペラの舞台役者の様に、2人でポーズをとっている。周りは慣れたもので、誰も注目はしてい ない。ハリーもぼんやりとその光景を見つめているだけだった。 ----------ねえ、本当にどうしちゃったの。ロン? ACT3=ハリーの焦り 更衣室を出たハリーは、まっすぐに寮に帰った。談話室にいたハーマイオニーがハリーに気が付き、す すっと近づいた。ハリーが目で問うと、ハーマイオニーは溜息をついて首を横に振った。そこで、寝室 に行ってみる。しかしロンのベットは空っぽだ。帰って来た形跡すらなかった。 「夕食の時には、きっといるわよ。行きましょう、食堂に。」 ハーマイオニーに促され、ハリーは食堂にやってきた。 ・・・・・どこを見てもロンはいなかった。 それならば、とハグリットの家に行ってみた。 ・・・・・ロンはいなかった、ハグリットも会ってないと言った。 ハーマイオニーの提案で、普段行かなそうな場所、図書館も行ってみた。 ・・・・・でもやっぱりロンはいなかった。 図書館に行く途中でドラコに会った。 「やあポッター、あの出来損ないのウィーズリーはどうしたんだ?やっと縁が切れたのか?」 嘲りの言葉に、一気に頭に血が上った。ハリーはドラコに掴み掛かろうとしたその瞬間、ドラコが蛙が 潰されたような声を出して、真っ青になった。 ふと見ると、ハーマイオニーが鬼のような形相をして、蹴りを繰り出している。 ・・・・・・・・・・ドラコのドコかに。 普段の彼女なら絶対にやらないその行為に、ドラコにちょっと同情しながらもハリーは彼女怒りの深さ を知る。蹲るドラコに冷たい一瞥を投げつけて、ハリーとハーマイオニーはそこを離れた。 考えられるだけの場所に行ってみたが、結局ロンは見付からなかった。消灯時間も迫っていたので、ち ょっとだけ期待しつつ、ハーマイオニーと別れハリーは寝室に戻った。 ・・・・・・ロンのベットは空だった。 がっかりして、ハリーは自分のベットに腰掛けた。ふと思い出す。そういえば1回だけロンは帰ってこ ない日があった。あの喧嘩の最中、自分を心配して探しに来てくれたロンと売り言葉に買い言葉状態で 衝動に任せてハリーはロンにバッチを投げつけた。バッチがロンの額にぶつかった時、感じたのは良心 の疼きだったのを覚えている。でも自分の行動をなかったことには出来ず、ハリーはロンに罵声を浴び せてしまった。ロンは何も言わなかった。唯、辛そうに瞳を細めただけ。あの後、ロンは何を考えてい たのだろう?「ロンは貴方に嫉妬しているのよ。」 ハーマイオニーの言葉が蘇る。なんでロンは僕なんかに嫉妬するんだ?別に有名になりたかったわけじ ゃないのに。ロンは僕がどうやっても手に入れられないモノを手にしているのに。 家族、兄弟。 それでロンを羨ましく思うことだって、度々だった。 だがハリーは気が付かない。自分の”才能”というものが、ロンにとってはどうやっても手に入れられ ないものだということに。人は皆、自分の持っているものは置いといて、持っていないものを羨ましが るのだということに。 ”そうだ、ドビーならあるいはロンの居場所を知っているかも” 不意に、そう思いつく。思いついたらもう、グズグズしていられない。ハリーは毎度お馴染みの透明マ ントを引っ被って、寮を飛び出した。 ACT=4ロンの自己嫌悪 ドビーとその他大勢から貰ったサンドイッチとジュースを平らげて、ロンは一息付いた。ハリーやハー マイオニーが心配して、きっと学校中を探し回っているんだろうな。とロンは思う。きっと帰ったら、 2人から激しく叱られてしまうのは想像に優しい。彼らに迷惑を掛けてしまうことは、容易に想像でき たが、今は1人になりたかった。こんなどす黒い感情を持ったまま、ハリーと笑い合える自信はなかっ た。ひょっとしたら、ドビーの事に気が付いてそこに行っているかもしれない。だがロンはしつこくど うしたのかと問うドビーに、何も答えなかった。 此処は偶然見つけた部屋で、長いこと使われていないらしい。喧嘩中に見つけたので、ハリーもハーマ イオニーも知らないはずだ。つまり、見つけられる可能性は全くといっていいほどない。ベットもなに もない場所だったが、毛布を1枚借りてきたので眠れるはずだ。ロンはごろりと横になった。 窓からは青い月がぽっかりと浮かんでいるのが見える。そして、窓から月の青白い光が差し込んでいた。 ハリーといつも一緒にいるが、注目を浴びるのは自分ではない。スネイプあたりに注目を浴びるのは、 勘弁して欲しいことだが。ハリーが変に注目を浴びてしまい、コリン辺りに付きまとわれて困っている のも知っている。だが、学校の皆は”ハリー・ポッターの友人のロン・ウィーズリー”と思っているが 決して”ロン・ウィーズリーの友人のハリー・ポッター”とは見てくれない。まるでハリーのオマケの ように思われているのが、ロンには複雑だった。 ハリー・ポッターには才能と行動力がある。何よりも色んな事柄の中心人物でもある。 ハーマイオニー・グレンジャーには頭の回転の速さと、それを助ける情報がある。 それじゃあ ロナウド・ウィーズリーには? 何もない。それこそハリーのようになんでもソツなくこなせることもなく、ハーマイオニーのように成 績が良いわけでもなく。賞賛されることなんて、全然ない。 なんだか嫉妬丸出しの堂々巡りをしているようで、ロンは顔を歪めた。 ”嫌な奴だな、僕って・・・・。” ドラコの自分への嘲りの言葉の数々を思い出し、ロンは結構当っているかも・・・・と情けなく思う。 自己嫌悪に陥りつつ、ロンは目を閉じた。そして思う。どうしてハリーは僕と友達になったんだろう? ACT=5ハリーの心 ハリー・ポッター、ハリー・ポッターと大騒ぎするドビーにイライラしながらハリーはロンを知らない か?と問いかけた。 「存じております。」 ドビーはあっさりと答えた。 「本当!?ドコにいるの?」 「ドビーが存じているのは、あの方が食事を求められてきたことだけでございます。ドビーはもちろん どうしたのかと尋ねました。でも答えては頂けませんでした。」 ハリーはがっくりと肩を落とした。 「ハリー・ポッターはウィージーを必要となされている。」 「ウィーズリーだよ。」 無駄と知りつつ、ハリーは訂正をした。ドビーは重々しく頷いた。 「ウィージーは何か、元気がなかったように見えました。」 「そう・・・・。」 「ハリー・ポッターも元気がないように見えます。」 「そりゃそうさ、これだけ探してもロンが見付からないんだから・・・。」 「ハリー・ポッターはウィージーを必要となされておられますか?」 ドビーの問いに、ハリーは目を瞬かせた。 「当たり前だろ?ロンは・・・僕の大事な友達なんだから。」 そこまで言ってから、ふとハリーは気が付いた。ロンはハリーにお金では買えないようなものをくれた。 ハリーに精一杯協力してくれた。 ・・・・・でも自分はロンに何をしてあげた? 振り回して、危ない目に合わせてばかりのような気がする。プレゼントとかは上げたが、それ以上のこ とは何もしていないんじゃなかろうか? 賢者の石の事件の時は、チェスの試合で犠牲になった。 秘密の部屋の事件の時は、杖の折れている彼を引っ張りまわした。 アズカバンの囚人の事件の時は、ハリーを咄嗟に庇って足を骨折して、呪いを掛けられた。 炎のゴブレットの時は、命に別状はなかったものの第二の課題の時に巻き込まれている。 自分と友達でなければ、ロンの学校生活は平和そのものであったのでは?ハリーは急に不安に襲われた。 「ハリー・ポッター。」 「うん・・・?」 ドビーは何かを見極めようとするかのように、緑色の大きな瞳でハリーを見つめた。しばしの沈黙のあと ハリーの耳に、何事かを囁いた。 「それ、本当なの?」 「ダンブルドア校長が先ほど来られまして、ドビーにそう言ったのでございます。」 「なんでさっきは教えてくれなかったの?」 「ハリー・ポッターが本当に気にしているようであれば、教えるようにと言われたのでございましたか ら・・・・。」 ハリーはドビーの言葉を、最後まで聞いてはいなかった。 「有難う、ドビー!またね!」 そう叫んで、厨房を飛び出した。
★少し、長くなりそうなので切ります。ロンもハリーも暗いですけど、次は明るくなるはずです・・。 まあ、悩め少年達よ!と開き直ってますが。ハリーみたいな凄い(とゆーか)人が側にいる人は大変で すよね。いや、ハリーが悪いわけではなくって。勉強等は、自分の努力次第でなんとかなるんですが 才能というものは、どーにもならないんですよね。ロンはハリーの才能に嫉妬しているように感じま したが、ハリーって自分の才能に対しては何も感じていないように見えます。だから”ハリー・ポッ ター”に嫉妬するロンやその他大勢に対しては、戸惑い気味。 戻る