拒絶されている?




 








眠り


          ブラックリベリオンが終焉した。あれだけの優勢を誇っていたのもかかわらず、黒の騎士団は・・・い
          や日本は負けた。ゼロという指導者を失った彼らは、あっけないほど簡単に崩れ去った。主なメンバー
          は逮捕され、更にはゼロが死んだという事態で反抗精神も無くなったようだった。


          カツンカツン

          自分に与えられた部屋に向ってスザクは歩いていた。そこはラウンズでありながら、かなり中心から離
          れた場所にある。いくら強さが全てだといっても、やはりナンバーズ出身者に対してはそれなりの偏見
          は免れない。しかしスザクには有難かった。

          ピピピ

          自分の部屋の暗証番号を打ち、更には網膜センサーによる検査を経てやっとドアは開いた。随分と仰々
          しいものではあったが、これも仕方が無いといえた。すたすたと自分のベットを通り過ぎ、更にまるで
          外部の者から守るかのようにひっそりと存在する奥の部屋に向った。そこには・・・・

          「やあ、今帰ったよ。ライ」
          かつて、ゼロの最も信頼する片腕である作戦参謀の姿がその部屋にはあった。離れた場所にあるのも、
          2重のセキュリティーも全てこのライの為。彼を皇帝以外の者の目に晒す事のないようにと。
          「・・・・・まだ目が覚めないのかい?ライ?」
          ベットで身動き一つしないライに、スザクは語りかける。
          「まだ、そんなにゼロを・・・・ルルーシュを信頼して、僕を拒むのか?」
          ライは答えない。ただただ黙って瞳を閉じたまま。ライの深く青い瞳が早く見たいのに。


          神根島で最後までゼロ・・・ルルーシュを守る為に、スザクの前に立ちはだかったライ。動揺のあまり
          逃げてしまったカレンの分までと言わんばかりに、激しく抵抗した。その姿にスザクは苛立った。
          「何故、そいつを庇う?そいつはユフィを殺し、日本を弄んだんだぞ!?君だって駒だとしか思ってい
           ないのにっ!!」
          感情のまま叫ぶと、ライの瞳が辛そうに歪んだ。
          「君なら・・・・・僕を分かってくれると思ったのに!どうして、そいつを庇うんだ!?」
          「弁解をする気はない。君には分からないし、分かって欲しくない。例えルルーシュが僕の事を駒とし
           てしか見ていなくても、僕は彼を守る!」

          悲しかった。
          どうして分かってくれない?
          ユフィの仇を討たせてよ?
          僕の考えを認めてくれたのは、ライじゃないか!?
          応援してくれるって。
          頑張れって言ってくれたのに!

          激しく揉み合っている間に、ライが守りやすいように移動していたルルーシュが何かに躓いてバランス
          を崩した。それを敏感に察知してライがスザクから意識を離す。その隙を見逃すわけにはいかなかった。
          「ライッ!」
          スザクの攻撃をまともに喰らって、ライが崩れ落ちる。ルルーシュが悲壮な声で、ライの名前を呼んだ。
          怒りの、憎しみの感情のままスザクはルルーシュに襲い掛かる。ルルーシュがスザクに勝てるわけもな
          く。スザクに馬乗りにされてもルルーシュはもがきながら、ライに手を伸ばす。
          「ライ・・・・・ナナリー・・・・!」
          その行動がスザクの癪に障った。思いっきり殴ると、ルルーシュはあっけなく意識を失った。


          皇帝の前に、拘束着を着たルルーシュとライを引きずりだす。そしてこの2人を拘束した褒美を要求。
          そしてルルーシュは皇帝のギアスにかかって、意識を失った。その身体を放り投げ、ライを引き寄せた
          時その瞳は色々な感情で揺れていた。
          「見損なったよ、スザク」
          それが最後に聞いた、ライの声だった。ライは瞳を閉じ、動かなくなる。スザクはライの異変に気がつ
          いた。ただでさえ白い顔がその白さを増していき、呼吸が止まったかのようだ。慌てて額に手をやると
          信じられないくらい冷たかった。
          「ほう・・・・・仮死状態になるとはな。大したものだ」
          皇帝の声にハッとする。これではいくら目を開けさせても、ギアスはかからない。ルルーシュを奪われ
          スザクに裏切られたライの精一杯の抵抗なのだろう。
          「どういたしましょう・・・・陛下」
          「取りあえずは貴様に預けておこう。だが目覚めた時は、ここに連れてくるが良い」
          「はい・・・・・・・」


          あれから半年が過ぎている。スザクはEUとの戦いで「白い死神」といわれるまでになっていた。だが
          ライは目覚めない。ひょっとしたら帰ったら目を覚ましているんじゃないか、という期待はことごとく
          裏切られた。そっとライの頬に素手の手の平を当てる。あの時と同じように、冷たさだけが伝わってく
          るだけだった。
          「どうして・・・・・」
          ライはスザクの信念を、認めてくれた数少ない存在だった。それが君にとって正しいという考えなら、
          それを貫いていけばいいよと背中を押してくれた。自分でもこの信念が矛盾を大いに孕んでいることは
          分かってはいた。だから認めて欲しかったのだ、誰かに。間違っていないよ、と。ルルーシュを始め、
          大部分の人間はやんわりと非難していたから。
          「いつになったら目覚めるの?」
          確かに目が覚めたら、皇帝のギアスをかけることになる。その時はルルーシュやゼロ、黒の騎士団の事
          を忘れさせ、自分の「ナイトオブセブン」の補佐として一緒に仕える事になっている。スザクはそれが
          待ち遠しかった。ユフィを失い、彼女の人生そのものをかけた日本特区も無くなった。ユフィが「虐殺
          皇女」として呼ばれるのを黙って見ていなければならない。こんな辛い時に、ライがいてくれたら。自
          分の力になってくれたら。こんなに力強いことはない。
          「早く目を覚まして・・・・ライ。俺を・・・・・助けてくれ」
          スザクは涙が滲んでくるのを感じて、蹲った。


          ★スザクはライに恋愛感情は持っていません。でもこの現状を支えて欲しいんですよ。本来なら親友で            あり大事な幼馴染であるルルーシュが支えるんでしょうが、生憎とスザクを裏切っていたわけで。            寂しいし、孤独だしと自分的には散々なのでねぇ。   戻る