お疲れ様、ルルーシュ




 








再会

          ふと、気配を感じてライは顔を上げた。ここはCの世界。魂の還る場所。ライと談笑していた2人が目
          を丸くする。ライはその2人に微笑みかけ、口を開く。
          「すみません、母上達。待ち人が来たようなので、暫く失礼致します」
          その言葉を聞いて、2人は笑って頷いた。
          「分かりました、またね・・・・ライ?」
          「じゃあ、また後でね、お兄様?」
          そう言って自分の前から彼女達は姿を消した。


          ライは立ち上がり、歩き出す。その先には亜麻色の長い髪を持つ少女が眠っていた。その細い肩を手で
          揺すり、覚醒を促す。
          「さあシャーリー起きてくれ。彼が来たよ」
          その言葉に少女は目をゆっくりと開けた。オリーブの色をした瞳が悲しげに揺れる。そんな彼女を慰め
          るようにライは微笑んだ。
          「そんな顔をしないでくれ、シャーリー。笑って?」
          「でも・・・・・」
          「僕も彼も君の笑顔が大好きなんだ。だから彼に笑って欲しい。君の笑顔が彼に安息をもたらすのだか
           ら。自信を持って良いよ」
          そう言われて、シャーリーはふわり・・・と笑った。その笑顔にライは心が暖まっていく。この笑顔を
          彼は愛し、失われた時には悲嘆に暮れた。だから笑っていて欲しかった。手を差し伸べると、おずおず
          という感じでシャーリーはその手を掴む。ライは立ち上がったシャーリーを促して、また歩き出す。


          「アナタが教えてくれなくても、僕はもう兄さんが来た事を知ってるよ」
          挑戦的な目で淡い栗色の髪をもつ少年はライを睨みつけた。苦笑するライの後ろで、シャーリーは少年
          を見つめている。その視線に少年は居心地が悪そうに、視線を逸らせた。
          「そうだね、でも君は僕らを待っていてくれた。それが有難いよ。きっと彼も喜ぶだろう」
          そう言うと一応何か反論したいことはあったようで、少年は口をもごもごさせたが開く事はなかった。
          「急ごう、きっと彼が待っているよ」
          ロロは仕方が無い、という態度でライの隣に並んで歩き出した。シャーリーは反対の隣で歩いている。


          最後に訪れた第三皇女はライの同行を断った。シャーリーもロロも説得をしたが、彼女は頷かなかった。
          「貴女は・・・・彼を憎んでいるのですね・・?」
          ライのその言葉に、第三皇女は首を横に振った。
          「私は虐殺をして、彼に私を殺させるという罪を被らせてしまったのです。そんな私が今、彼に会える
           資格がありません」
          「そんな、資格なんてないでしょう?元はといえば、彼のギアスの暴走が優しい貴女に虐殺をさせてい
           たのです。きっと彼も貴女に会いたいはずですよ?」
          「いいえ、きっと私に会ったら辛い思いをするでしょう。なので・・・もう少ししてから、会いたいと
           思います。この時は、貴方達で彼を迎えてあげて下さい」
          彼女の決心は固く、説得を諦めてライ達は彼の元にむかう。寂しそうに微笑むユフィが、その背中を見
          つめていた。

          そして彼はそこに立っていた。白い皇帝となった時の衣装のままで。そしてライ・シャーリー・ロロを
          見つけた時、彼の顔がぱっと明るくなった。ライは両腕で2人の背中を軽く押した。促された事により
          ロロとシャーリーが彼に走っていく。思わず、といった感じで飛びつく2人を彼は両手で思い切り抱き
          しめた。
          「ルル!」
          「兄さん!」
          2人もルルーシュを抱きしめる。
          「2人共、迎えに来てくれたのか・・・嬉しいよ有難う」
          腕を解いて、3人はお互いの顔を見て微笑んだ。と、シャーリーが悪戯っぽい顔で口を開く。
          「でもルル。その服装、似合わないわよ?」
          「え、・・・・そ、そうか?」
          「ねぇ、そう思わない?ロロ?」
          突然振られてロロは目をパチクリさせたが、ルルーシュの縋るような瞳とシャーリーの同意を求める目
          を見ておずおずと口を開いた。
          「うん・・・・似合わないと思う」
          「でしょー!」
          同意を得たシャーリーは勝ち誇ったかのように笑い、ルルーシュはしょんぼりと項垂れた。が、顔を上
          げて右手を前に出し横に振った。するとルルーシュの着ているものはアッシュフォード学園の制服に変
          わっていた。
          「これで良いか?」
          「うん!」
          「やっぱりその服装が1番似合うよ、兄さん」
          そう答える2人もやはり制服姿だった。
          「だが・・・随分とロロと仲が良いなシャーリー?」
          ルルーシュがそう問えば、シャーリーは微笑む。
          「スザク君にも言ったんだけどね・・・許せない事なんて無いんだよ?」
          「・・・そうか、そうだったな。だから許したのか、ロロを」
          「うん」
          人にはそれぞれに許せる事と許せない事がある。1つの事に対し、許せる人もいれば許せない人もいる
          という事だ。その境界線は各人違う。シャーリーの言葉はそれを指している。だからこそ、許せない事
          なんか無いのだ。その人の境界線次第なのだから。そしてシャーリーは父親を殺したルルーシュを許し
          自分を殺したロロを許した。
          「そうか・・相変らず優しいな」
          そう言ってルルーシュに微笑まれたシャーリーは顔を真っ赤にして、腕を無意味に振り回す。
          「え?え?え?そ、そんなことないよ??」
          そしてその腕はしっかりと、ロロを掴む。余りの事にロロがよろめいた。
          「じゃ、ロロ行こうよ。ルル、また後でね!」
          シャーリーはロロを引きずって、ライのところまで走ってきて笑った。
          「じゃ、真打登場ね!」
          ばん、と勢い良く背中を叩かれてライはルルーシュの方へふらついた。
          「っと」
          距離があったはずなのに、ライはルルーシュの腕の中にいた。
          「ル、ルルーシュ?」
          「お前は変なトコ抜けてるな。シャーリーに気を取られている間に移動したのに、気づきもしない」
          くすくすと耳元で囁かれて、ライは顔を赤に染めた。離れようとしても、がっちり抱き込まれている為
          逃げることも出来ない。
          「は・・・離してくれ、ルルーシュ」
          「全力で拒否する」
          「や、話もできないし・・」
          「できる」
          「え〜と」
          ついにライは言葉に詰まった。するとルルーシュは腕の力を抜いて、右手でライの鼻をピンと弾いた。
          「痛っ」
          「当たり前だ、痛いようにしたんだから」
          そう言ってルルーシュは口を尖らせる。ライとしては迎えに来たというのに、口を尖らせられる筋はな
          い。ので素直にそう言うとルルーシュがニヤリと笑った。そりゃもう悪い方向で。
          「ゼロレクイエムの時、俺が忙殺されていたからといって散々我侭した事を忘れたとは言わせないぞ?」
          それについてはライにだって言い分がある。
          「君だってゼロレクイエムっていう最大の我侭押し通しただろ?だから僕も我侭しただけだ。思い切り
           嫌味で」
          「それが分かっているから怒ってるんだろ?しかも最期の言葉がば〜かときたもんだ」
          「だって本当にそう思ったから、今際の際に出たんだろ?」
          「そうかそうか、ライお前はそのば〜かに惚れてたわけだよな。それは今も継続中・・・と」
          「え、あの・・・」
          なんだか嫌な予感がする。
          「じゃ、たっぷり可愛がってあげるよ。此処じゃ時間とか色々面倒くさいトコロもないしな」
          「え!?だってここはそれこそ意識体だから・・・」
          「感覚がある以上、可能だな」
          真っ青になって口をぱくぱくさせるライに、ルルーシュが吹き出した。からかわれた、そう気づいて今
          度はライが口を尖らす。そんなライをルルーシュはまあまあと、宥めてライの額に自分の額をコツンと
          合わせる。
          「ま、今は色々と話したいことがあるからな。付き合ってもらえるか、ライ?」
          「うん、それはモチロン。そんなに時間が空いていたとも思えないけど、色々と僕も話したい事がある」
          2人は笑いあった。
          「ああ、そうそうルルーシュ、言い忘れていたよ」
          「ん?なにをだ?」
          ライはルルーシュの腕の中で微笑んだ。
          「お疲れ様、ルルーシュ」
          そう言うと、ルルーシュは目を丸くしてそれから微笑む。
          「ああ、有難う、ライ」
          そして2人は連れ立って歩き出す。Cの世界の中へ。



         


          ★というわけで、EDです。なんだか甘くなってしまったけれど、まあ良いか。ライの最期の辺りの我            侭はルルーシュに対する当てつけではあるけれど、実はスザクと比べてもまだ僕は役に立つよってい            うアピールだったりします。意外と此処のライは負けず嫌いなのです。ここまで読んで下さって有難            うございます。ありふれた話ではありますが、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです。 戻る