歩いていかなければならないんだ




 








行動

          予想しない事が起こった。
          ナナリーがこのエリア11の総督になるなんて。
          政治の餌食にならない為に、行動を起こしたというのに。
          日本に着く前に奪還を試みたが、本人に拒否されてしまう。
          自分の存在理由を失って
          ルルーシュは迷走した。


          花火を見ながらルルーシュは思いを馳せた。自暴自棄となりナナリーの映像から逃げ回り、リフレイン
          をバカな貴族から巻き上げて。カレンに最低な絡み方をして、ロロに説得されて。だが生徒会メンバー
          は自分を待ってくれていた。そして記憶を消されたはずのシャーリーが折り紙の鶴を折った事を知って
          ルルーシュは胸にじんわりと暖かい感情が溢れていくのを感じた。想いの力を見せ付けられた気がした。
          ナナリーしか見ていなかった世界に、こんなにも自分を思ってくれる人たちがいる。自分の戦いは、も
          う既にナナリーの為ではないのだ。自分のせいで辛い境遇に陥ったシャーリー、自分達の正体を知って
          もなおアッシュフォード家という枠を超えて接してくれるミレイ、ルルーシュ・ランペルージという存
          在そのものを信じてくれているリヴァル。皆、皆大切な人だ。ナナリーにとっても。だから彼らが知ら
          なくても、敵としてテロリストとして黒の騎士団を見ていなくても、彼らの為にも戦おう。たとえ自己
          満足だと言われても。


          「兄さん、どこへ行くの?」
          「ちょっと用があるんだ」
          「じゃ、僕も行くよ。なにか力になれるかもしれないし」
          そう言ってついて来ようとするロロを制する。
          「いや、大丈夫だ。それよりもお前は此処に残れ」
          「でも・・・・・・」
          「あまりふらふらしない方がいい。それに何かあったら守ってくれ、この学園を」
          「・・・・・わかった、兄さんがそう言うなら」
          「ああ、頼むぞ、ロロ」
          ロロと別れて校門をくぐる。歩くスピードを落とさずに、ルルーシュは口を開いた。
          「状況は?」
          「良くないな、これからは時間との戦いだ」
          門柱にもたれかかっていた人物が即答を返した。そのままルルーシュの後を歩いてくる。その先にはサ
          イドカー付のバイク。
          「はい、これ」
          地図を渡され、ついでにトランクも渡されてサイドカーに乗り込むと、バイクはさっさと走り出した。
          「これリヴァルのか?」
          「まさか、これ以上彼に迷惑はかけられないよ」
          「そうか、そうだな」
          そう答えてルルーシュは地図を見つめ、戦略を練り始めた。
          「そういえば、冷たい奴だなお前は。ライ」
          ふと声を掛けると、心外だと言わんばかりにライがこちらを向いた。
          「そうかい?そんなつもりはなかったんだけどな」
          「冷たいさ、恋人である俺がこんなにも迷走していたというのに、慰めにも来てくれないんだからな」
          「そうさ、その恋人がヘタレて使い物にならなかったから、あちこち奔走していたんだけど?」
          「うっ」
          そういえばカレンが言っていた。ルルーシュが黒の騎士団に戻ってこず、連絡すら取れないからそのと
          ばっちりを喰らって、ライがあちこち走り回っていると。やぶ蛇だったようだ。
          「でも迎えには来ただろ?それで帳消し」
          「うう・・・・・」
          「こういうのはさ、他人にゴタゴタ言われたって結局自分でなんとかしないと意味がないから」
          「・・・・・・まあそれはそうだな。今は良く分かるよ。それはお前の経験談か?」
          「ん、まあ、そんなトコ」
          「そうか」
          そんな会話をしながら、ルルーシュはライに何処に向かっているか聞かない。ライもルルーシュに説明
          をしない。分かっているからだ、ライがルルーシュをベストポジションに連れて行こうとしているのを。
          かくしてバイクは崖に到着した。遠くで水柱が上がっている。黒の騎士団の潜水艦が攻撃を受けている
          のは明白だ。あれだけの戦力だ、たとえ黒の騎士団が戦っても勝ち目はない。彼らに残されているのは
          攻撃が止むのを祈って、逃げるだけだ。これではあぶりだされてしまう。ルルーシュは決意も新たに、
          トランクを開け変声機をセットした。それを見てライがバイクをふかす。
          「月下を取ってくる。あ、それと今回の作戦指揮はスザクだそうだ」
          「!!!」
          驚いて振り向くと、苦笑しているライが映る。
          「急いでくれ、ルルーシュ。じゃ、またあとで」
          ライはそう言ってルルーシュの前から走り去った。ルルーシュは気持ちを落ち着けて、第一声を発した。
          「Q1、聞こえるか、Q1!」


          なんとか一矢報いたところで、ライの月下がルルーシュの元に来た。トランクの中に入っていた「ゼロ」
          の衣装に着替え、コクピットから顔を出したライにトランクを渡す。
          「これから俺がどうするか分かるか、ライ?」
          問いかけると、ライは首を傾げた。
          「ん〜?取りあえず特区日本に関して、何か提案でもするんだろ?」
          「流石だな」
          「そうでもないさ。じゃ早く手に乗ってくれないかな。今のこの混乱を利用しない手は無い。その間に
           でも君の話は聞けるさ」
          コクピットへ再びライが消えると、月下が動いてルルーシュに両手を差し出す。ルルーシュは躊躇いも
          せずにその手の上に乗った。月下がゆっくりと上昇し出した。


          果たして巨大な泡に翻弄されたブリタニア軍が、右往左往しながら助けを求めていた。月下が微妙に速
          度を落として、ルルーシュが演説しやすいようにしていく。その前にはスザクのランスロット。
          「これがお前の答えかっ!!」
          そう叫んで射撃しようとするスザクに、仮面の中で苦笑した。何を言っている、お前も俺に答えを出し
          たじゃないか。最悪の答えを、な。
          「撃つな!」
          そう叫ぶと射撃体勢に入ったランスロットが、ビクンと反応して動きが止まった。さあ、これからミッ
          ション開始だ。
          「私を撃てば、勅命に逆らう事になるぞ!」
          「なに?」
          「私はナナリー総督の提案を受けようと思う」
          「?」
          「特区日本だよ」
          あからさまにスザクが疑っているのが、反対に可笑しかった。多分ライもコクピットで苦笑している事
          だろう。
          「ゼロが命じる!黒の騎士団は特区日本に参加せよ!」
          ルルーシュは叫んだ。

          始めてしまったんだ。
          ここで足を止めてしまえば、今までの犠牲は無になってしまう。
          だから歩き続けよう。
          歩き続けるしか・・・・・・・ないんだ。







          ★ナナリー関係ふっとばして、いきなりお魚さん大迷惑事件をメインにしてみました。ルルーシュとラ            イの絆というものを表現してみたかったんですけどね。ベタベタしなくても通じ合うっていう・・・。            恥ずかしい・・・。 戻る