ホワイトデイ!
3月14日。
それはバレンタインの時にチョコレートを貰った人が、あくまで「自主的に」お返しをする日である。
この日、ハーマイオニーはバレンタインの時にチョコレートを上げたほとんどの人からお返しを貰って
しまい、苦笑していた。
「別にねえ〜?こんなお返しを期待して上げたわけじゃないんだけど・・・。」
お返しに埋もれている彼女を見て驚いた、ハリーとロンにそう言って。ちなみにハリーとロンのお返し
はいらないから、と前に釘を刺されていたので彼らは何も上げなかった。
でもハリーは知っている。”例の”ビデオで自分達がハーマイオニーに勝利をもたらしていたことを。
つまりは、そこで勝ったのでもうお返しは貰ったも同然ということなのだろう。


「良いから受け取れ、ウィーズリー。」
ロンは困り果てていた。目の前にはふんぞり返ったドラコ・マルフォイの姿。ずいっと何か小袋を差し
出すその姿は、ロンには異常なまでに奇妙に見えた。
授業が終ってハリーは先生に呼ばれて、ハーマイオニーは先生に質問する為にロンと別行動になった。
取り合えず、部屋に戻ろうかと廊下をのてのて歩いていた時、突然横から腕が伸びてきてロンを引きず
っていった。驚いて固まっている間に、腕の主は人影のない所へ進んでいく。ちょっとした庭らしき場
所に着いた時、やっと腕から開放される。
「な、なにするんだよ!マルフォイ!!」
引っ張られている時に、流石に気が付いたのだが犯人はドラコだった。あの見事なプラチナブロンドの
持ち主はそうそういない。ロンが怒鳴ると、ドラコは振り返り一瞬複雑そうな顔を見せる。
「?」
「受け取れ。」
短く言われて見ると、ドラコの手には小袋があった。当たり前だが、中に何か入っているらしい。だが
日頃のドラコの行動から見て、ロンが警戒するのは自然なことでもある。ロンはどうしたものか、と立
ち尽くした。こんな時、適切なアドバイスをくれる2人の大親友は此処にはいない。
「どうした、受け取れ。」
畳み掛けるようにドラコが言ってくる。それでもロンは躊躇した。
「何、それ?」
警戒心丸出しで尋ねてみる。だがドラコは顔を顰めたまま、答えてこない。はっきりと物事を言ってく
るドラコにしてみれば珍しい現象だ。その行動は、ますますロンの猜疑心を深めてしまう。
何をどう言っても、動こうとしないロンに業を煮やしたのかドラコはむんずとロンの胸倉を掴み、ポケ
ットにその小袋を押し込めてしまう。目を白黒させてロンがドラコを見ると、彼は先程と同じような複
雑そうな顔をして下を向いていた。その顔がほんのり赤いことに、ロンは気が付かなかった。何か言葉
を発しようとして、ロンは気が付いた。遥か向こうから、何故か足音を消してスプリンター走りをして
くるハリーの姿を。その顔には薄気味悪いくらいの、笑顔が全開していた。ハリーは驚く速さでドラコ
の後ろに走ってくる。
「ハ・・・。」
ロンが名前を呼ぼうとした瞬間、ドラコの姿が横にブレて消えてしまった。
「!?」
慌てて横を見ると、ドラコが(どうやらハリーに弾き飛ばされたらしい)地面に万歳をするような格好で
倒れていた。
「マルフォイ!?」
「ロン、此処にいたんだ。探したよ?」
呼びかけるロンの言葉に被さるように、ハリーが言う。
「あ、ああゴメンねハリー。探してくれたんだ?」
「うん、もちろんだよ。部屋に帰っているかと思えば、いないしさ。こんな危ない場所でマルフォイと
 一緒にいたら、また不愉快な思いをするよ?」
「うん、有難うハリー。」
「ささ、僕らのグリフィンドール寮に戻ろうよ。」
「でもマルフォイは?」
「大丈夫、さっき取り巻きが探していたから此処を教えといたよ。心配なのかい?」
「いや、そういうわけじゃないけど・・・。」
「じゃあ、行こう!」
「うん。」
ハリーはちゃっかりとロンの肩に手を回して、歩き出す。振り向くと、ドラコが悔しそうな顔をしてハ
リーを睨みつけていた。そんなドラコに、ハリーはニヤリと真っ黒な笑みを見せて、アッカンベーをし
た。


「ところでさ、マルフォイなんだったの?」
ハリーの問いに、ロンは顔を顰めた。一瞬強引に自分のポケットに小袋を押し込むドラコの姿を思い出
す。あの時、何か妙に必死だったような気がする。それを例えハリーにも言って良いかどうか、迷う。
「ロン?」
呼ばれて顔を上げると、ハリーの翠の瞳が心配そうに自分を見ている。まあいいか、とロンは結論付け
た。
「うん、何だか変な袋を押し付けられたんだ。」
「変な袋?」
「これだよ。」
ロンはポケットから、ドラコに押し付けられた小袋を出してハリーに見せた。それから、おもむろに封
を切った。
「わあ〜〜〜♪」
思わずロンは感嘆の声を上げた。その小袋の中には、おいしそうなお菓子が一杯入っていたからだ。対
するハリーはロンに分からないように、顔を顰めた。”お返し”ではないだろう、何せドラコはロンの
チョコレートを貰い損ねている。何か勘違いをしているに違いない”贈り物”を寄越してきたところを
みると。言いだしっぺのハーマイオニーに訊くことも出来ない立場なわけだし。それにしても変な所で
気を回すドラコにハリーは苦笑した。マグル界にいた頃のハリーでもあるまいに、ドラコは本当に人付
き合いが下手くそだと思う。
「あ、ちょっと待ったロン!」
早速お菓子を出して、食べようとするロンをハリーが慌てて止めた。
「なんで?」
ロンは不服そうに、口を尖らす。
「だって、あのマルフォイがくれたものだよ?何か呪いがかかっていたりしたら、大変だよ。」
「あ、そうか・・・・・。でも・・・・。」
ロンは渋っている。頭では分かっているのだろうが、食べたいのだろう。ここぞとばかりに、ハリーは
ロンにしか向けない優しい笑顔を見せる。
「もったいない、っていうロンの気持ち分かるよ僕も。でもさ、なにかあっても不思議はないよ?僕は
 ロンのことを心配してるんだ。」
ハリーに切々と情に訴えられて、ロンがひるむ。ハリーはドラコの気持ちが分かるだけに、ロンにその
お菓子を食べて欲しくはなかった。ロンはハリーの言葉に納得しかけているのだが、やっぱりまだ諦め
られないらしかった。そこで、ハリーはズバリと言った。
「ロンは僕とマルフォイ、どっちを信じるの?」
「そりゃあ、ハリーだよ。」
ロンの即答に、ハリーは満足する。
「じゃあ、さ?」
畳み掛ける。笑顔のまま、相手を押すのはハリーの得意技である。とうとうロンは折れた。
「分かったよ・・・・。」
「じゃあこれ、僕が始末しとくよ。」
ハリーはひょい、とロンの手から小袋を取り上げた。しょんぼりしたロンに、思わず苦笑する。小袋を
後ろに置いて、やおらごそごそと何か取り出した。
「はい、代わりといっても語弊があるけどコレ上げるよ。」
ハリーが取り出したのは、ドラコからの小袋より一回り小さな袋だった。綺麗にラッピングされている。
「え、良いの?」
「うん。だってこの前さ、僕はロンからチョコレートを貰ったからそのお返し。」
「わあ、有難う。でもあれは僕のせいで、晩御飯を喰いっぱぐれちゃったから上げただけだよ?僕も食
 べたし。」
「うん、でもハーマイオニーに貰った事は事実なんだから、ちゃんとお返ししなさいよって言われてさ。
 僕もそうだな〜って思ったから。」
「本当?じゃあ貰っちゃうね、有難う。開けて良い?」
「うん、もちろん!」
ロンは打って変わって嬉々として袋を開けた。
「わ!凄い綺麗だし、美味しそう!」
「ほんと?良かったよv」
ハリーからのお返し、それはビー球のような綺麗なキャンディーだった。透明なキャンディーの中に、
綺麗な色が踊っている。ロンは大喜びで、1つ口にほおりこんだ。
「あ、美味しい!」
「そう?」
「ハリーもどうぞ、上げるよ。」
「うん、有難う!」
2人して、キャンディーを頬張って笑う。ロンの頭の中から、すっかりとドラコの贈り物は抜け落ちて
しまったらしい。ハリーは思わず、ふふと笑う。
「?どうしたのハリー。いきなり笑ってさ。」
ロンが目をパチクリさせて、訊いてくる。
「いいや、ロンが喜んでくれてよかったなあと思ってさ。」
ロンの顔が照れたように、赤くなった。
「そりゃあ・・・。」
何気にラブラブモードになってしまった2人から、逃げるようにルームメイトが自分のベットに逃げ込ん
でいった。


「有難う御座います、ハリー・ポッター!!ドビーめにこんなに美味しいお菓子を下さるとは!感動で
 ございます!」
「そう、喜んでくれて良かったよ。」
「ああ、ハリー・ポッターはなんと偉大で優しい魔法使いなんでしょうか。ドビーめは心底幸せでござ
 います!」
「いつぞやは世話になったし、いつも美味しい御飯を作ってくれてるから感謝の気持ちだよ。」
ハリーがそう言うと、感激の余りドビーはおんおんと泣き出した。一応、ハリーの言っていることに嘘
はない。いつも甲斐甲斐しく働いているしもべ妖精に、たまには良いだろうと思ったのだ。まあそれに
ドラコの贈り物を使う辺り、凄いと思うが。
後日、ドラコの元へ差出人不明の”お礼状”が届いたことを此処に記しておく。
・・・・・頑張れドラコ・マルフォイ。


★「バレンタインな日〜ハリロン編〜」と対になっている話です。相変わらずドラコが可哀想な役割を  担っているようですけども・・・。今回、ハリーの腹黒さがあんまり出てない気がして私的にはちょ  っぴり不本意です。プロットをたてた時はもっとドラコにばば〜ん、と言ってたんですけどねえ。と  いうか、ハリーを腹黒と決め付けているのは私の過ちですか?でも映画観ても、原作読んでも結構き  つい性格に思えるんですが。ハリーの感情がロンのみに向かっているのは、私がハリロンだから(笑)  それにしても困ってます。いや、屋敷しもべ妖精と打とうとすると、いつも屋敷しもべ妖怪って打ち  そうになってしまって。助けて水木先生!! 戻る