-花見-




ハラハラと舞う桜の花びらを、ハリーは一人眺めていた。
ロンを誘ったはずなのに、ロンの姿は無い。
もう、桜も終わりを告げるように、風に揺らされ、柔らかく舞い落ちる。
「どうして来ない、ロン」
こんなに綺麗な花をロンにも見せたくて、ハーマイオニーに教えて貰って直ぐ、ハ
リーはロンを花見へと誘ったのだ。
ロンは勿論、来ると言っていた。でも、ロンの姿は無い。恋人になって大分経つ、一
緒の部屋に居て、行動も一緒、離れる事をハリーは恐れていた。
ロンは気付いていないが、ロンの姿を追い掛ける視線は増える事はあっても、減る事
は無い。
一緒に来れば良かった。
ハリーは桜を見上げ思い詰めた顔をする。
「ロン・・・」
来ない恋人をハリーは待ち続けた。


ロンはハリーを探していた。誰に聞いても知らないと答えが返ってくる。
「ハーマイオニー、ハリーが居ないんだ!」
やっと見付けた、ハーマイオニーの服を掴み、ロンは困っているという顔を見せた。
「あら、今晩は、花見をするって言ってたはずだけど、ロン、誘われていたじゃな
い」
ハーマイオニーは眉間に皺を寄せて、ロンが何故ここに居るのか不思議がっている。
「えっ・・・ああ!!忘れてた。・・・ハリー、まだ待っているかな?」
やっとハリーの居る場所を突き止めたロンは、大急ぎでハリーの待つ場所へと走って
いった。
「本当に忘れていたのね。・・・大丈夫かしら?」
ハーマイオニーは黒く笑うハリーの姿を思い出して、ロンの事が心配になってしまっ
た。


「ハリー!」
ロンは手を振りながら、ハリーの元へと走り寄った。
「ごめん、遅くなっちゃった。怒ってる?」
首を傾げて、謝ってくるロンの姿に、ハリーの意地悪な部分がムクムクと表に出て来
た。
「怒ってる!!もう良い、ロンは僕との約束なんてどうでも良かったんだ!どうせ忘れ
ていたんだろ」
ハリーはわざとロンに強く言ってみる。
ギク。
ロンはハリーの言葉に身を竦ませた。本当の所を図星されたロンは、反論する事が出
来ない。
「・・・まさか、本当に忘れていたんだ」
ハリーの瞳が鈍く光る。口は軽く引き攣って引き上がっていた。
「・・・ごめん」
ロンは持ち前の素直さで、ハリーに謝ってしまう。そこで否定してくれれば、ハリー
も仲直りの手を差し伸べられたのだが、ロンは嘘を付く事が出来ない性分で、嘘を
言っても、直ぐにばれてしまう自分の事を良く知っていた、ロンはハリーに謝り倒す
事にした。
「本当にごめんね。折角ハリーが誘ってくれたのに・・・」
ロンはハリーに手を伸ばそうとした。
バシィ!!
ハリーはロンの手を振り払う。
「もう良いよ!」
ハリーは瞳に涙を溜めて、ロンの前から走り去ってしまった。
「・・・ハリー!」
ロンは消え行くハリーの後姿に、名を呼んでみたが、ハリーは振り向く事もせず、
行ってしまった。
自分の不注意で、ハリーに拒絶されてしまったロンは、少し赤くなった手を見つめ
て、青くなっていた。


「ハリー、ロンは?」
ハーマイオニーは一人で歩いているハリーを見付けて、声を掛けて来た。
「んっ、置いて来た」
ハリーは何事も無かったようにハーマイオニーに報告する。
「えっ!どうして、誰かに連れて行かれたらどうするの?」
ハリーに恨みを持つ者にもロンは狙われていた。ハリーの弱みがロンだと、皆、知っ
ている。
「大丈夫、勢力が強いのはこの間、潰したから。ちょっとロンに反省して欲しくて
ね」
ハリーは顔を引き攣らせて笑っている。ハーマイオニーは声を出せずに、悲鳴を口の
中で上げた。
「・・・あっ、あんまり苛めないようにね・・・程々よ、程々・・・」
ハーマイオニーは持っていた本を抱き締めて、後退りしながらハリーに落ち着くよう
に言う。
「大丈夫、僕はロンを愛しているから、そんなに酷いことはしないよ」
ハリーはニッコリと顔だけ笑って見せた。
「・・・・」
ハリーの笑顔に固まってしまったハーマイオニーを置いて、ハリーはスタスタと自室
に戻って行った。


ロンはハリーが怒ってしまった事がショックで走る気力も湧いてこない。
「ハリー・・」
部屋に帰ったロンをハリーは待っていてくれなかった。ベッドの中に居る事は分か
る。でも、いつもなら喧嘩しても、直ぐハリーが仲直りの手を差し伸べてくれていた
のだが、今日に限ってそれも無い。拒絶されているように一枚の布がハリーとロンの
間を隔てていた。
ロンの呼び掛けにも、ハリーの返事は返って来ない。
ロンは肩を落して、自分のベッドの中に潜り込んだ。
「おやすみ、ハリー」
少しでも顔が見たくて、ロンはハリーに言葉を投げかけるが、ハリーからの反応は
返って来なかった。ジワッと目に涙が溢れてくる。ロンはグッと唇を噛み締めて、
ベッドに顔を埋めた。


ハーマイオニーが心配していたように、ハリーとロンは朝から一度も口をきかない。
ロンは話したくてチラチラとハリーを見ているが、ハリーの方がロンの視線を上手く
交わし、視線を合わせない。ロンの見ていない時は、ジッと見つめているのに。
「ハーマイオニー、ちょっと良いかな?」
ロンは切羽詰まった顔をして、ハーマイオニーを教室から連れ出す。
「ロン、大丈夫?顔色悪いわよ」
ハーマイオニーはハリーが本気で怒っていない事を知っていたが、その事をロンに伝
える事は出来ない。どんなにロンが可愛かろうと、自分の身が大事なのだ。ロン以外
の者に容赦無いハリーの性格を良く理解しているハーマイオニーだけに、迂闊な行動
に出られなかった。ハリーがロンにそれ程酷い事をするとは思えないという確信も、
ハーマイオニーの行動に表れている。
「僕、ハリーを怒らせてしまったんだ、どうすれば良いのかな?」
ロンは真剣に尋ねてきている。その姿も愛らしく、ハーマイオニーはつい口を滑らせ
そうになるが、ロンの死角から、ハリーがハーマイオニーに笑い掛けているのに気付
き、本当の事を言えなくなってしまう。
「ロン、ごめんなさい。今回は良いアドバイスが出来ない・・のよ」
ハーマイオニーの言葉に、ロンは悲しそうな顔を見せる。ハーマイオニーはロンを抱
き締めたい衝動に駆られる。いつもは自分と口で戦うほどのロンが、ハリーに突き放
されただけで、これ程弱々しくなってしまうのかと、ハーマイオニーは母性本能がム
クムクと湧いてきて、その衝動を抑えるのに必死になる。
ここでロンを抱き締めれば、本当に自分は身を滅ぼしてしまう。
それが恋愛感情では無くても・・・
「うん、自分でなんとかするよ」
ロンは困った顔をしているハーマイオニーを気遣ってしまう。自分の所為で、ハーマ
イオニーも、今日は居心地の悪い気分を味わっていると分かっていたから。
「ごめんなさい・・・」
ハーマイオニーは自分の服を握り締めて、ロンから視線を外す。服を握り締めなけれ
ば、ロンを攫ってしまいそうなのだ。
「僕の方が、・・ごめん・・」
ロンは一生懸命笑顔を見せて、ハーマイオニーの前から離れた。ハーマイオニーは冷
や汗をかいてしまった。ロンを前にすると、無駄な衝動が溢れてくる。
教室の前に佇んで居たハリーが、冷たい笑顔を浮かべて、ハーマイオニーを見てい
た。


ロンは強引にハリーを捕まえる事にした。ハーマイオニーにこれ以上心配を掛けたく
もなかったし、早くハリーと仲直りしたかったからだ。
今回の事は、自分が悪いと分かっていたから、ロンは何度も、ハリーが許してくれる
まで、謝り通すつもりだった。
「ハリー、待って。僕の話を聞いて」
ロンはハリーの腕を掴み、人が見ているのを気にせずにハリーを自分の方へと向かせ
た。
「何?」
冷たいハリーの声色にロンはビクッと身を竦ませる。
「・・・」
ロンは言葉も出てこなくなる。
「何も用が無いんなら行くよ」
ハリーは弛んだロンの手を離し、スタスタと歩き始める。
「・・・待てよ!・・・確かに僕が悪かったよ。でも、そんなに怒る事無いじゃない
か!ハリーにとって僕はその程度の存在なの、もう要らない?他にも何か怒っているの
?言ってくれないと分かんないよ!!」
ロンはハリーの手を掴み、大声でハリーを引き止める。
ハリーはロンの見ていないところで、しまった、と、いう顔をした。苛めすぎたよう
だ。ロンの真剣な瞳にハリーは魅入られてしまった。
目を見てしまったら、惚れ抜いているハリーには不利になってしまうから、目も見ず
に居たのに。これではロンをこの場で押し倒してしまいそうだ。
「ロン、ここでは言えないよ。僕の話を聞きたい?」
ハリーはそれでも怒った顔を崩さずに、ロンを罠へと導く。
「聞きたい!!」
ロンは即答してくれた。ハリーはロンの手を握り、人の波を掻き分け歩き続ける。
ロンは一日しか経つていないが、ハリーの手の温もりに涙が溢れてしまう。
ハリーはロンを連れて外に出た。そして、桜を目指している事がロンにも分かる。
「ロン。僕らはお互いを想っていると僕は思っていたんだ。でも、僕の存在は君に
取って、忘れても良いだけの存在だって。教えられた。辛かった・・・」
ハリーはあたかも自分は被害者だという顔をして、ロンを困らせる。
「違うよ!ハリーは大切な人なんだ。昨日もハリーを探してた。本当だよ」
顔を逸らしているハリーの胸にロンは顔を埋め、ハリーを抱き締める。
「でも、忘れた」
ハリーは傷付いていると、何度も繰り返す。
「ごめん。ごめん・・・どうすれば信じてくれる?」
ロンは縋るようにハリーに懇願する。
「・・・そう・・だね。僕の言う通りに出来たら、信じても良いよ」
ハリーは心の中だけで笑みを浮かべる。
「うん。僕、何でもするよ」
ロンはハリーの顔を見て、嬉しげに破顔した。
「じゃね・・服、脱いでくれるかな?」
ハリーは従順なロンに本来の性格が出てしまう。
「・・・ここで・・」
ロンは真っ赤になって首を傾げる。まだ陽は高く、辺りも明るい時間だ。その中で服
を脱ぐという事は、誰かに見られてしまう可能性がある。
「うん、ここで。大丈夫だよ。ここは人が来ない場所だから、ハーマイオニーがここ
まで綺麗に花が咲くのは、この桜の木の下に、死体が埋まっていると言っていたか
ら、ここに桜があると知っている者は、そこまで聞いているはずだし、そんな所には
来ないだろ」
ハーマイオニーにその話を聞いたハリーが、その噂も一緒に流すように頼んでいたの
だ。そうすれば誰にも邪魔されず、ロンとの花見を楽しめると思って。
「ヒィ!!しっ・・死体・・・」
ロンはハリーに抱き付いて、自分の足元を見つめ、足を出来るだけ地面から離す。
「埋まっていないよ。そういう話があるというだけだから、噂だよ。ロン、出来ない
?」
ハリーは抱き付いてしまったロンを引き離し悲しそうな顔をして見せた。
「・・・脱ぐよ・・」
ロンは服に手を掛け、ハリーの前で裸になっていく。陽の下で全裸を晒すのは恥ずか
しいが、ハリーがそれで信じてくれるというのなら、少しくらいの恥ずかしさも我慢
しようと思った。
「じゃあね、次は・・・」
ハリーは手に杖を持ち、小声で何か言って魔法を使う。一陣の風が二人の間を駆け抜
けていく。風に囚われた、色とりどりの花びらが木の根を覆うように山積みになっ
た。桜の花びらも混ざっている。ロンは自分の回りに敷き詰められた、花の絨毯に溜
め息を漏らす。
「・・・綺麗・・・」
ロンは花びらを掬おうと手を伸ばした。
「ロン、次はね、この花びらの上に寝てくれる?」
ハリーはロンをトンと押して、花びらの上にロンを倒した。
「えっ、えぇっ」
ロンはふわっと花の上に倒れてしまった。
「ほら、言う事聞くんでしょ?足、広げて。・・・ロン、出来るよね」
ハリーはロンの足元に座り込み、ロンの動きを見つめる。
「・・・足・・・開くの・・・」
いつも愛されている場所だけど、こんな場所でハリーの目に晒すものではないとロン
はわかっている。
「そう、出来るよね。・・・出来ないのなら、手伝って上げるよ」
ハリーはロンの足を掴み思い切り足を広げてロンに恥ずかしい格好をさせた。
ロンは足を閉じようとしたが、ハリーの力は強くて、敵わない。恥ずかしさのあま
り、顔を覆ってしまう。
「・・・ロンのここは、桜の花びらのようだね」
ハリーはロンの敏感な部分を指で触り、微笑んでいる。
「とっても、綺麗だ・・・」
花に埋もれたロンの羞恥心で体を赤くした姿は花の美しさに負けないくらい、綺麗
だった。
「ハッ、ハリー・・・」
息を呑むハリーの呟きに、ロンはやっと落ち着きを取り戻す。いつものハリーの声音
になったからだ。
「んっ、何?」
優しく訪れるハリーの口付けは、ロンの心を軽くする。
「・・好き、だよ。ハリー」
ロンは自分の上に乗って来たハリーをきつく抱き締めた。
「・・・僕も・・」
花びらは二人を包むように風になびき、二人だけの空間を作り出してくれていた。

終わり


★有難う御座います、美緋紗さま!もう、こんな素敵な小説を頂いて感涙しおります。ハリーの腹黒さ  が、本当にツボにはまりました。やっぱりハリーはこうでナイト!私のしょぼい小話のお返しにと頂  いたものなんです。リクエストは「ハリーとロンの痴話喧嘩----ハリーは駆け引きをしつつ、ロンは  真面目に----」だったんです。ああ、イメージ通りです。しかもちょっぴりアダルトな世界が!本当  有難うございました!! 戻る