〜 土台無き安心感 〜

今月(04年2月)のニュースや報道に関して国内的な大きな話題は間違いなく『牛丼販売休止』であろう。
テレビや新聞でも今月に入ってから「いつ牛丼は売り切れるのか」と言った調子のやや面白おかしくデフォルメした報道がされていた。
 
そして牛丼大手の上位4社のうち最大の吉野家が販売を休止すると、主にテレビメディアが各地の吉野家のチェーン店で「最後の一杯」を食べた人の感想を聞いていた。曰く『牛丼が食べられなくなって寂しい・残念・これからの昼食に苦労する』等々の感想が放送された。何とお気楽で脳天気で素直な感想であろうか。事は牛丼の販売休止という一現象に矮小されてしまったがこれは日本の大問題なのではあるまいか。言い換えれば日本の食糧問題の象徴的な出来事なのではないだろうか。
 
牛丼販売休止と同時に一部のメディアでは紹介されていたのが日本の食糧自給率の余りの低さである。
報道によると日本国内でほぼ100%の自給率にあるのは米と卵くらいしかないそうだ。
あとは一部の野菜を除いては各国からの輸入に頼っている。穀類も同じく輸入に頼っているから気軽な和食の蕎麦まで多くは輸入である。これは一にも二にも政府の食糧政策の失態であるのは明らかである。
 
それにしても不思議なのは我が日本人の反応である。知識レベルが高いと言われている我が民族が何よりも大事な食糧事情に目を向けようとしない。何を根拠にした安心感なのだろうか。
お金さえ出せば食べ物は自然と手に入ると本当に思っているのだろうか。
米の大凶作が起こり外米を緊急輸入したり、古米を放出したりと大騒ぎしたのはそれほど昔の事ではない。
あの時の教訓を多くの日本人は忘れてしまったのだろうか。今回の牛丼騒ぎはその時の再来なのではないだろうか。
 
牛のBSE、鳥インフルエンザ、ブタインフルエンザなど日本の食糧事情を脅かす原因は国内のみならず全世界的に広がっている。政府は農業政策を見直し、国民は牛丼に象徴される食糧の国内自給率の低さにもっと関心を払うべきである。
 
何等かの世界恐慌で日本への食糧輸入が止まった時に太平楽に『ざんねんです』では済まない事を思い起こそうではないか。
牛丼は無くなりましたがカレー丼があります、では余りにも近視眼的でありすぎるのではないだろうか。
 

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