〜 銀行の横暴と怠慢 〜

いま社会を震撼させている事件に『キャッシュカードのスキミング詐欺』がある。
これはキャッシュカードをカードリーダー(或いはスキマー)という、キャッシュカードなどのメモリー情報を読み取る機械に通して情報を搾取し、暗証番号も何等かの方法で盗み、それを元に偽造カードを作製しATM等などから多額の現金を騙し取る犯罪である。
 
先ず不思議なのはカードリーダーが一般に市販されていて、それが法律に抵触しないという事実である。しかし、カードリーダーを犯罪目的以外で使用するということはあるのだろうか。ごく当たり前の考え方をすれば“普通の人”には必要の無い物である。法律に抵触しないのは、法律がこのような機械の出現を想定していないだけのことで、大きい被害が出ている現在は何等かの取り締まりが必要なのは論を待つまでもないだろう。
 
 カードリーダーの販売もだが、もっと不思議なのはキャッシュカードの提供元、銀行の被害者に対する態度である。いくら高額の被害であろうとも銀行が被害者に対して被害金額を補償する義務は無いのである。被害者に対して『お気の毒』とは言っても、決して『申し訳ありません』とは言わない。これは預金者と銀行との間でキャッシュカードを発行する時の約款に『たとえ偽造カードでも相当の注意を払っての取引においては銀行側に弁済の義務は生じない』等の意味の文言が書かれているからだそうである。だから銀行は謝らないのである。謝ってしまえば銀行側のミスを認めることになり、弁済義務が生じてしまうからだ。しかし、これは相当におかしな事である。
 
 そもそもキャッシュカードの発行元は銀行である。当然ながらカードに記されている情報の管理については銀行が全面的に責任を負うべきであろう。犯罪者に簡単に読み取られてしまうようなカードを発行しておいて、そして偽造カードで簡単に現金が引き出せるようなシステムにしておいて、銀行(ATM等)がカード所有者以外に現金を支払うのが間違いである。
 
いま問題になっているスキミング詐欺は言ってみれば銀行が自ら種をまいた犯罪である。それなのに犯罪被害者であるカード所有者に、銀行に落ち度が有ったことが証明できない限り弁済の義務は無いと突っぱねるのは銀行の横暴以外の何ものでもない。そして、この種の犯罪が防げないカードやシステムが構築できないのはこれまた銀行の怠慢以外の何ものでもない。
 
銀行というところは昔から内に甘く外に厳しい。銀行の各種の不祥事が発覚してからは一見すると利用者に対してソフトムードでサービス最優先を言うが内実は少しも変わっていないのかも知れない。
 
銀行の最大のサービスは『預金者のお金を守る』ことである。それが犯罪者に対して易々と預金者の大事なお金を渡してしまう。明らかに銀行のミスなのに責任は頬被りして知らん顔。こんな事を銀行はいつまで続ける気なのだろうか。欧米の銀行では被害者の救済に一定の負担はあるものの積極的に応じていると言う。預金者至上主義のサービスを言う我が国の銀行が欧米並の、それも預金者の為のサービスをしたがらないのは全く不可思議である。
 
欧米並の預金者保護には当然の事ながらコストが掛かる。しかし、きちんとしたサービスを提供するなら預金者は或る程度のコストには首肯する筈である。銀行が自分たちの営利のみを追求し、犯罪被害者である預金者を蔑ろにする現状では銀行に対する不信感は募る一方である。
犯罪者の手から財産を守る為に銀行預金をしていたら、その預金が知らぬ間に銀行のミスで犯罪者の手に渡っていたのでは泣くに泣けない。
 
銀行よ、目覚めよ!本当の預金者サービスは粗品を沢山出すことではない。預金者のお金を守ることが最善のサービスなのだ。だからこそ預金者は雀の涙にもならない利率でも我慢しているのだ。『家に置いておくより安心』の預金者の気持ちをもっと汲み取れ!
 
 

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