〜 主権と言った言わないと 〜

少し前に当時の田中真紀子外相と外務省官僚との間で“言った言わない”論争があった。
その話題が既に過去の話になりつつあるこの頃になって今度は日中間での“言った言わない”論争である。
ご承知の“北朝鮮住民の日本領事館突入”事件である。この突入は結果として中国武装警官のウィーン条約を無視した日本の主権領土(領事館敷地内)への侵入という暴挙により北朝鮮住民が中国側に拘束、連行されてしまった。
そしていち早く中国は『日本側の同意により敷地内に立ち入り“不審者”を排除した』旨のコメントを発表した。
日本側の『武装警官の敷地内立ち入りは同意しておらず、住民の連行も認めていない』旨のコメントが出されたのはその数時間後である。
悠久4000年の国と言えどもこのような時の中国の反応は誠に素早い。それに比べて我が国の外務省、在外公館の反応の鈍さといったら悠長なものである。
しかし、事は国家主権に関わる重要事件である。日中共に自国の主張を訂正できない状態に置いているが当然であろう。本音は兎も角もここでは『同意した・同意していない』の建前を崩す事は絶対に出来ない相談である。
日中がお互いに退路を断っての主張のぶつかり合うなか最も重要なのは中国側に連行、拘束されている北朝鮮住民の処遇である。中国側としても鮮明なビデオが世界中のメディアに流れてしまった以上は北朝鮮への強制送還は選択肢から外さざるを得なくなってしまった。我が国とて引き渡し要求を引っ込める事はできない。
結局は識者が新聞やテレビで言っているように中国が『身元不明の不審者を国外へ退去させる』しか解決方法はないだろう。例えそうなったとしても中国側の日本への主権侵害問題は残ったままになるが。
それにしても日本は中国の早い時期のコメントの発表を見習うべきであろう。今回のような事件では一旦コメントを出してしまえば結局は“水掛け論”になるのは火を見るより明らかで、中国もそれは折り込み済みの筈で、日本側を見透かした常套手段である。やはり悠久の歴史の中で幾多の戦乱をくぐり抜けてきた中国外交の強かさと厚顔さを少しは日本も手本とすべきだと思うのだか・・・。
それにしてもビデオに映った日本領事館職員の緊迫感、緊張感、危機感の無さには呆れるばかりである。
高い給料と手当はどのような職責に対して国民から支給されているのか本気で考え直して貰いたいものである。
そして中国内の在外公館のトップに位置する大使が『亡命を求める人々は不審者だから追い出せ』と本当に言ったとしたら噴飯ものであり外交官の初歩の初歩が分かっていない言動ではないだろうか。
大使は何処を見てものを言ったのだろうか。自分の出世、上への諂い、煩わしさの忌避・・・?
少なくとも外交官である以上は出世、諂い、面倒の忌避などは忘れて国民、避難民、世界の人々のために働け!



 

戻る