〜 朝令暮改と名誉と恥と 〜

朝令暮改とは「命令、規則が頻繁に変って一定しないこと」、名誉とは「社会的に認められた人格の価値」、恥とは「恥ずかしい思いをすること・世間に対して面目を失うこと」とある。(いずれも新潮社現代国語辞典)
先月の自民党加藤派の政変未遂劇は一体なんだったのだろうか。
幕開けは加藤氏の突然の決起(問題提起)であった。
それに続く派内の同調と不和、野中党幹事長(当時)ら主流派と言われている輩からの恫喝と締め付け。
不信任案提出の朝、加藤氏の意気は極めて高く、同調する議員と共に不信任案に賛成票を投ずる事を国民に約した。
国会本会議の開催前、又も突然に『名誉ある撤退』とやらで議会を欠席し不信任案は否決、そしてドタバタ劇は幕を閉じた。
このへんの顛末は既にテレビ、新聞等で詳しいので敢えて述べないが、ここでこの一文の最初に戻る。
朝令暮改のこれほど分かり易い例は滅多にあるものではない。本当に朝の一事が夕にはひっくり返ったのだから。
そして名誉。
森首相は物事や言葉の重みが全く分かっていない人物であることは世界中に知れ渡っているが、加藤氏も言葉の重みが分かっていなかったようだ。
不信任案に賛成票を投じて破れ、それにより引き下がるなら確かに『名誉ある撤退』かも知れぬが不信任案に賛成票を投ずる筈の本会議を欠席しては“敵前逃亡”という『恥』である。そして加藤氏は恥知らずに堕した。
自民党一党の内部での悶着なら兎も角も、国民に向かって不信任賛成を公約し自ら退路を断った人物のすることではない。
森氏より少しはまともと一時は思われた加藤氏だが所詮は自民党人の自民党人たる茶番劇だったのであろうか。
それにしても森、加藤の両人に限らず、この国の政治家の多くは何故に、こんなにも言葉の重みが分からないのだろうか。



 

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